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十九話 鬼血骸村

第十九話です。

誰でも知ってるありきたりな話ですが、数十年後のためにこういうのも何処かに残しておいたほうが良いかと。

いきなり黄金伝説だったり、最近ではジョーブロなんかも撮影に来ていた鬼血骸村が近所にあります。

まぁ、全盛期の90年代にはこんな当て字も無く、みんな直でキ○ガイ村って呼んでいましたが。

この地域は昔から『はかり』を作っている某メーカーの大きな工場があり、そこで働く工員のための社宅が建ち並ぶ『秤団地』と言われていた新興工業住宅地で、昔からの住民というのはいない地域です。さらに昔は、この秤工場は以前に書いた『屠殺場』の跡地なので、昔からこの周辺に住んでいた人というのは『いない事になっています』。

私が中学の頃には既にこの辺り一帯のガードレールにはスプレーで謎の紋様が書かれ、道沿いの木々にはカラスの死骸がヒモでぶら下げられているような状態でした。

さらにこの鬼血骸村の村長が健在だった頃、村長は毎日スプレーで模様だらけになったビニール傘をさして下妻ジャスコまで歩いて行って、ジャスコの駐車場でUFOを呼ぶ儀式をやって、午後には村に帰ってくるという日々を繰り返していたため、市内でもかなり話題になっていました。

そんな中、私と一番親しかった友人が秤団地出身だというので、ある夜に鬼血骸村の家まで行ってみた事があります。

その友人は元々は東北の生まれだったのですが、親が秤工場で働き始めた事で秤団地の社宅に引っ越してきて、数年前に近所に家を建てた事で今は社宅も借りたまま近所の新築の家に住んでいるという『家二つ持ち』状態で、ほぼ空き家状態になっている社宅は毎晩悪友たちの溜まり場となっていたのでした。

ただ、その溜まり場の家のすぐ斜め向かいは鬼血骸村でした。

この鬼血骸村は、『村』と言っても一軒の家でしかなく、その家があまりに異様だったために周囲4区画くらいの買い手が付かず、広い区画の中にポツンと一軒だけ家が建っていたため、周囲の人たちがその区画を『村』と呼んでいただけの事。そのうちに、家の周りに何も無い事を好いことにその一軒だけの家の家主(村長)が家の周囲の区画一杯に独自のオブジェを置き始めた事で鬼血骸村なんて呼ばれるようになっていったという経緯があります。

まぁ、実際にそのオブジェは凄まじかったです。便座が置いてあって、その中に山盛りの鳥の足が入っていたり、顔に黒いスプレーを塗られたマネキンの体に何体ものカラスの死骸が吊されて黒いドレスを着たようになっているオブジェが何体も並んでいたり、スプレーで模様の書かれたヘルメットが乗せられたカラーコーンが幾つも置かれていたり。

まあまあ異常でしたよ。

ただ当時、秤団地に住んでいた人たちはその村長の事を嫌がっていませんでした。

というのも、この村長というのは当時ここに越してきた当時はまだ現役の筑波宇宙開発研究機構(今のJAXA)の主任研究員で、自著の本も出している有名な人でしたから。秤団地で働いていた理数系の人たちにとっては一種の憧れの対象だったのかもしれません。当初の村長への呼び名、通称は『先生』でしたし、鬼血骸村の呼び名もパナ何とか研究所と呼んでいる人も半数以上だったと思います。そんな事を何も知らなかった私たち10代20代の若い世代が、見たまんま『キ○ガイ村』と呼び始めたのが鬼血骸村の始まりだったのではないかと思います。

ただ、村長のそんな内情を知ったところで、当時の村長の行動は明らかに常軌を逸してたと思います。ゴールデンタイムのテレビ番組が取材に来る程に。

そんな騒動の後も結構長く鬼血骸村は存在していました。

職業柄、私は村長のその後も知っています。まぁ当然、詳しくは書けませんが、2009年に娘に連れられ牛久にある心療内科に行った後、つくば市内に住む娘の家で暮らすようになり、2011年の震災以降一度も鬼血骸村の自宅には行っておらず、今でもつくば市内の特養で存命です。

第十九話でした。

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