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十八話 砂沼サンビーチ

第十八話です。

壊せないんです。いろんな意味で砂沼サンビーチは下妻市民の夢の跡なんです。

かつて、この一帯は下妻市内で最も発展するはずだった地域で、この幻の『新下妻駅』東口の真正面に砂沼サンビーチある予定でした。

昭和51年 元々あった流鉄流山線の延長計画が実行され、岩井、猿島、八千代、そして終点下妻に新駅が建設されました。しかも、野田から利根川を越えた先の茨城県内は地下鉄になる予定で、岩井ー下妻間は日本一長い地下鉄区間となる予定でした。

サンビーチの前に広がる砂沼広域公園内にコンクリート製のプレハブみたいな変な建物が点在しているのを見た事があるでしょうか?中途半端な広さで、壁の両サイドがタイルガラスになっている『子ども図書館』や、野球の用具小屋。あれらは元々、地下鉄出口です。

令和の今でも、それらの建物の床の鉄扉を開ければ新下妻駅の地下鉄構内に行く事が出来ます。

平成27年だったと思いますが、私がまだ音楽をやっていた頃にMVを録るために市役所に許可をとって新下妻駅に入った事があります。

構内は天井の配線が落ちてきていて不気味でしたが相当広く、さらに各出口に続く通路の長さは恐怖しか覚えないほど果てしない長さでした。

当時、路線が繋がってこの新下妻駅が運営されていたら、下妻市の姿は今と全く違った姿になっていた事でしょう。昭和53年の新下妻駅完成後には路線もまだ来ていないのに駅前開発の起爆剤として砂沼広域公園と砂沼サンビーチが建設され、一帯は大盛り上がり。それまで下妻の西の果ての何も無い僻地だった地域に4階建てのビルが建ったり小さいながらにニュータウンが出来たりして、一気に西側が発展した時期でした。

しかし、この流鉄流山線延長計画は当時の運輸大臣だか何だかの江崎なんたらという一人の政治家と猿島出身の中村喜四郎との喧嘩によって全てが白紙に戻ってしまい、まるで延長実行の話など元から無かったかのように全て風に消えてしまいました。

同時に、新下妻駅周辺で起業した人も、周辺のニュータウンに住み始めていた人も、それはそれは怒り心頭というか茫然自失というか、東側の人たちはそれを嘲笑うどころかもう目も当てられないというか無視するしか術がなく、ただ、出来てしまった一大観光地の砂沼サンビーチに行って知らん顔して楽しんで金を落としてやるしかない状況となっていました。

これによって昭和54年以降、下妻市には欲によって全てを失った西側の人たちと、細々ながらも堅実に生きている東側の人たちという線引きされたイメージが定着してしまいました。

夢を諦めきれない西側の人たちにとっても、堅実さを大いにアピール出来た東側の人たちにとっても、その象徴とも云える砂沼サンビーチまでも消えてほしくないというのが市民の総意なんです。

解体を始めたら、恐らく毎日、現場に右翼やら暴走族やらが詰めかけて解体業者は怯えて作業にならないでしょう。

どこの業者も手を上げない。壊せないんです。

第十八話でした。

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