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光のペンダント  作者: 内谷真蹴
2/4

二部

 ある日の朝、ポポロ王子は豪華な寝室でいつものように目を覚ましました。


 ただ一つ違うこと、それはペンダントにはめこまれた宝石がただの石ころになっていたこと。

 まばゆく輝いていたイエローの宝石が灰色のただの石になっていたのです。

 朝目覚めると、王子はその事にすぐに気付きました。

 王子はなぜか不安でしたが、朝食や稽古の時間は待ってはくれません。

 

 すぐにいつもの日常へ戻るのでした。


 ◇


「王子!この前教えたでしょう!まずは相手の剣の振りの軌道を覚えるのです!

 相手は機械じゃない!人間なのです!いつも同じようなやり方では対応できませんぞ!」

 いつものようにクリムの声が飛ぶ。


 クリムは王子を立派な王にするべく必死で剣術の稽古には特に強く当たります。


 ポポロ王子はそんなクリムに対していつも言い返します。

「うるさいよ!別に剣術なんて出来なくていいじゃないか!そんなことしなくてもこの王国は平和だよ!強くなくても頭が悪くても大丈夫だよ!」


 クリムは呆れてなにも言えません。

 自分の教えは耳には入らない、そう思うのです。


 王子はいつもより早く稽古を切り上げ

 いつものように街へくり出すのです。


 ◇


「あらあら王子、今日は早いですね」

 店の立ち並ぶ街路でふくよかな女性は

 王子に話しかけました。


「クリムがうるさいんだ!剣術がどうとか勉学が出来てないだとか!」

 王子は民に駄々をこねた。


 いつものように自分に優しい声をかけてくれるはず、そう期待して。



 すると女性は王子に言います。

「王子が真剣に頑張らないからでしょ?」


 王子は目を丸くしました。

 思っていた反応と違ったので何か不思議な感じがしました。


 いつもなら「あらあら王子、大変ねえ」

と言われてお菓子だったりをもらえる。


 それが王子にとっての当たり前でした。




 王子がトボトボ街路を歩いていると、

 男の子がこちらを見ております。


「あ!ポポロ王子だ!」

 男の子は叫びます。


 ポポロ王子はウキウキしました。

 たくさん話したいことがあるのです。

 稽古やごはん、日常の些細な事を

 たくさんたくさん喋りたいのです。


 すると男の子は続けてこう言います。

『ポポロ王子は僕がいじめられているのを見て見ぬふりをした!

 お母さんがくれたお小遣いを盗まれるのを見て見ぬふりをしたんだ!』



 王子はなにを言われているのかわからず、その場で立ちすくみました。

 よく見ると、こないだ三人の男に囲まれながら悲しい表情をして、王子を見ていた男の子でした。



 訳も分からず、周りを見渡すとたくさんの民がこちらを見ています。


 それはいつもの王子への視線ではありません。

 どこか冷たい表情でこちらを見ています。

 王子にとってそれは初めて感じるものでした。


「そういえばあのポポロ王子って剣術もろくにできないらしいわよ」


「そうよね。おまけに勉学もダメダメだって、まだうちの子のほうが

 王に相応しいわ。」



「しかも毎日許可もなしにお城から抜け出してるそうよ」


 民が全て敵になったようなそんな衝動が

王子の体を駆け巡ります。


 王子はたまらずその場を逃げ出しました。


(聞きたくない聞きたくない聞きたくない)

 心に渦巻く邪悪な感情が王子を支配します。


 王子はとにかく遠くへ、誰も自分を知らないようなずっと遠くへ行きたくなって走り続けました。


 ◇ 


 涙で顔が覆われながらも走る道中、輝きを失い石ころになったペンダントを思い出します。


 いつも首にぶら下げているそのペンダントを見て王子は思うのです。


 (こんなのもうお守りなんかじゃない!)

 王子はペンダントを投げ捨てました。

 

 王子は無我夢中で行く宛もなしに走り続けました。










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