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光のペンダント  作者: 内谷真蹴
1/4

一部

簡単に読める童話に近い小説です。

 

【民の心を善に導く力を与えよう】

 何者かの言葉がかすかに記憶に残る。


 ◇


 これはある王国の一人の王子の物語です。



「まあ本日も素敵なお衣装ですねポポロ王子」

 城内に仕える侍女マリアは王家が集う朝の食卓で

 男の子に言いました。


「今日は母君が選んだんだ」

 まだ小さく幼い男の子は答えました

 ポポロ・ルーステンはここロレンス王国の王子様です。



「ルビーがちりばめられた鮮やかなお衣装ですわ」

 マリアはそう続けました。


「へえーこの赤いのルビーっていうんだ、なんかチカチカして落ち着かないや」


「王子!落ち着かないとは何ですか!こんなにもきれいなお衣装に向かって!」

 そう口をはさむのはルーステン家の親戚ロビンソン家のクリム、ポポロ王子のお世話を任されています。


「日頃の感謝を忘れてはなりませんぞ、朝食を頂いたらすぐにお稽古ですぞ」


 お稽古とは武道全般のことであり、とくに剣術はポポロ王子にとって

 苦手な分野。技術が必要な剣術は練習嫌いの王子には億劫です。

 ポポロ王子はそう言われると不満げな顔で朝食を食べ始めました。


 今日の朝食は野菜のポトフです。

 王子は人参が大の苦手でいつも残すので、クリムにいつも怒られてしまうのは日常でした。


「それはそうとそのペンダントいつまで御付けに?」

 クリムは怪しげな表情で言います。



「これはお守りだよ」


 透き通ったイエローの宝石をはめこまれたペンダント。

 衣装のルビーより強く輝くペンダント。

 いつ、誰に貰ったのかも分からないペンダント。


 物心つく前から王子は肌身離さず身に着けていました。


 ◇


 王族の子供たちは将来に向けて幼いころから勉学、稽古を行います。

 毎日毎日稽古や勉学でポポロ王子は疲弊していました。

 そんな王子の拠り所。


 それはロレンス王国の国民でした。


 王子は稽古が終わるといつもお風呂に入らされます。


 しかし王子はいつもクリムの目を盗んで

 民に会うため、こっそり抜け出し城下町にでるのです。


「あ!ポポロ王子だ!」 


 女の子がポポロ王子に気づき叫ぶと、群衆が一挙に押し寄せます。

 王子の周りを取り囲むようにして皆話したがります。


 王子を見ると人々には笑顔が溢れます。

 王子と関わった全ての人間は王子が次代の国王になることを

 疑わないのです。


 お話を楽しんだポポロ王子が意気揚々と歩いていると

 ある暗い路地に人の気配がしました。

 ちらりとそこを見ると

 三人の男が小さい男の子を囲んでいます。

 小さい男の子は王子を震えた表情で見つめます。


 まだ幼い王子、城で悠々自適に生活する王子には

 何が行われているのかわかりませんでした。

 人が人の物を脅し奪う、そんな恐ろしい事など

 王子には想像がつくはずもありませんでした。



 ◇



 城に帰った王子は自分の部屋におりました。

 キラキラとたくさんの星の形をした装飾品で囲まれた部屋です。

 王子は中央に位置するベッドに飛び込みました。


「今日も楽しかったなー」

 王子にとって人と触れ合うのはこの上ない喜びでした。



 すると王子に昔の記憶が蘇ります。


 【民の心を善に導く力を与えよう】


 いつもふとした時に蘇るその言葉。

 まるで忘れるなと、王子に呪いをかけるように。



 

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