関係
2人のカードを受け取ると1枚をイーナスに渡す。
「ありがとう。カイト」
確信する。貴族が我が屋敷をお使い下さいと言い出すも切り捨てるのであった。
「せっかくのお忍びで この国を高評価しようと思っていたのに 残念」
イーナスの捨てセリフを聞いた。貴族が更に青い顔になる。見捨てられると国も人々も それは、この場にいる連中にも十分に理解ができる。膨大な魔力を維持できていて 神獣まで従わせている。賢者に見捨てられれば、国も人々もその先が無くなるからである。
どれだけの軍力を用いても1人の魔法で戦況など簡単に変わるし、それが2体もいるのであれば、完膚なきまでに全滅しか目に浮かばない。
「仕方が無い。イーナス、ダンジョンに潜ろう」
カイト達が街から離れると街全体に結界が張られると人々も理解ができる。空に魔法陣が展開されて一瞬、光ったと思ったらそれだけで終わるのであった。光の洪水が街全体を覆うのであった。
「次は無いよ。ダンジョンから出てきた際には、泊まれるようにしておいてね」
カイトの声を聞いた。彼等は思った。次元が違いすぎる。結界を張るだけでもとんでもない程の魔力が必要で それを街全体に行いながらも 今回は、単純な光魔法だったが それでも1万人分の魔力を使わないと行えないし、使った後も平然と歩いている事から 魔力の底が見えないのであった。
少し、街から離れる。
「やりすぎでしょう。カイト」
「脅かすには十分でしょう。ダンジョンから出てきたら のんびりしたいと思って」
イーナスも言いたい事が沢山あったが抑えて
「それもそうね。それで どちらのダンジョンに入るの」
カイトとイーナスが話しながら歩いていると目の前から冒険者の集団が来るのであった。ガラが悪かったが ミントとミルクを見た途端に震えあがってしまい。森の方を見てカイト達と目を合わさないようにしている。
そんな中、カイトが
「お尋ねしたいのですが」
振り向かないで 答えだした。
「何でしょう」
「どうして こちらを向いてもらえないのでしょう」
無言が返ってくるとミルクのくしゃみで一斉に振り返った。カイト達を凶暴な連中だと判断していた。それでも震えて目を合わさないように下を向く。
「新しいダンジョンが見つかったと聞いたのですが 何処ですか」
「や・山の麓です。森の中の方は、下層が浅いために何度も到着されております」
「ありがとう。助かったよ」
「今から潜るのですか。夜になると森と同様で魔物が凶暴になります」
「ゴメン、凶暴な魔物など見た事が無いから知らないな それは、楽しみだ」
「美味しいものが現れるといいわね。カイト」
意味不明が聞こえてくる。
「そうだな! 食材も取れるといいな」
『カイト様』
地面から振動が伝わると冒険者達にも理解ができた。何か、巨体が此方に向かっている事を それでもカイト達を恐れて身動きもできないでいる。カイトがイーナスの腰に回している左手をイーナスの左側に手を差し出した途端に ギガントボアが突進を止めた。腹の部分で爆発音が聞こえた途端に 冒険者の後ろで痛みから大きな声で騒ぎ出した。
と 同時に首が切り落とされてしまい。何が起きたのか、理解が追い付かないのであった。冒険者の彼等には
「あら 自分から私達の為に肉が舞い込んできたわね」
ミントの喉が鳴り、ミルクも涎を垂らすと それだけでも震えあがるのであった。カイトが消えて肉を錬成空間の中で皮を剥ぎ取り、内蔵を取り出して 肉のみと骨に分ける。そのまま、アイテムバックに放り込むと頭を持って 彼等の前までやってくる。
「ダンジョンを教えてくれた。お礼って これでいいかな」
彼等の目の前には、ギガントボアの生首が置かれていた。置いた時にドスンと音を立てながら 彼等が後ろを振り向いた時には、既に血の海に成っており 本体がその場から消えていた。
彼等の首が上下に動き出す。カイト達が離れ際に言っている言葉が
「凶暴な魔物が出るのか。この森は、それも楽しそうだね。イーナス」
彼等にとっては、今現在が凶暴な魔物に遭遇して襲われた事でもあったのだが 彼等にとっては、気にするほどの魔物でも無かったみたいだ。何者なのだろうと思うのであった。街に戻ると彼等の存在が分かるのであった。
この日の内にロダンスウォール国とウィストリア教国に知らせが行くのであった。イーナスが見つかった事とミルクが神獣様だと判明した事が 3か国が一同に震えあがる。
ロダンスウォール国としては、帰って来てもらいたい。
ウィストリア教国にブルガリア獣王国としても彼女を取り入れたいと願うのである。ウィストリア教国に取っては、イーナスの言葉添えがあれば、潔白も張れると踏んでいた。この小さな町に3か国の間者達が集まるのであった。ロダンスウォール国の賢者 イーナスを取り入れる為に動き出した。
そんな事になっているなどと思いもしないでダンジョンを目指すのであった。ダンジョンに来てみれば、多くの屋台があり、色々な物が売られていた。食材と言っても野菜関連と調味料を買い占めて 屋台で食べ歩きをしてダンジョンに入ろうとすると ここでも止められた。
「貴様等は、見ない顔だな! 冒険者か」
カイトがギルドカードを見せると納得した。
「今から入ると魔物どもが凶暴化するぞ。それでもいいのか」
「凶暴な魔物など 見た事も無いから楽しみ」
「それと魔石は、全て引き取るからな」
カイトがダンジョン脇にいる。彼等の事を聞いてみた。
「彼等は何ですか」
「アイツ等は、荷物持ちと食事を在り付けたいと思っている。孤児だ」
イーナスを見る。
「いいわよ。お腹一杯、食事を与えてあげましょう」
子供達を引き連れて屋台に来ると食べたい物をお腹一杯になるまで食べさせてやり、干し肉も売っていたのでそれまで面倒を見てやり、当分の食事にも困らないようにまでしてやる。近くにケガをしている仲間や病気に掛かっている者までいる事を教えて来ると彼等の下に行き、ケガも病気も治してやり、食事を与えて 保存食まで与えるのであった。
そんな中、彼等のリーダーらしき女性が名乗りを上げてきた。
「どうして 我々にこれほどまでしてくれるのですか。大抵の冒険者など我々に最低限度の恵みしか与えてくれません。どうして」
「タダの気まぐれよ。気にしなくていいわ」
「それでも貴重な薬まで使わせてしまいました。何か、私達に恩を返せないですか」
「薬は、気にしなくていい。俺が薬師だ。調合すれば、幾らでも作り出せる。俺もイーナスもお前達と変わらない生活を送ってきている。
気にするのであれば、お前達が大人になった時に目の前の君達みたいな者たちに手を差し出せばいい。それで彼等の命が少しは伸びるのでないのか。そんな処だ」
「私もそれでいいわ。そんな大層な事もしていないし」
「それでも 我々の為に大事なお金を使わせてしまって もうしわけが無くて」
「だったら この中の1人が荷物持ちをしてくれればいい。いいよな イーナス」
「キリが無いから それでいいわ」