世界が変わる
1週間の時間を使って完全に気配を消す事に成功させた。イーナスとミルクであった。
「今日で3か月と1日目だ。で! どうする。
このままダンジョンに潜るか、ロダンスウォール国に戻るか、イーナスが決めてくれ」
「今更、国の事など考えたくも無いし、仕事もしたくないわ。カイトさえよければ、国を出て世界を回ってみたいとも思っている位よ。
どうかしら」
「次の街で素材を売って金を作るか。それでいいか」
「えぇ~」
イーナスの腰に手を回すとカイトが1歩、足を出しただけで目の前に街が目前にやってきた。イーナスとミルクには、ここまでの景色が頭の中に入って来るも混乱するのであった。
「カイト、何をしたの 今?」
「瞬歩の一種だ。その内に馴れる」
「わかったわ。それで ここは、何て町なの」
「知らん。大きい街を選んだに過ぎない。その辺りは、俺よりもイーナスの方が詳しいだろう。
サーチ魔法を展開させてみろ 色々と見えてくる」
イーナスがサーチ魔法を展開させると 既に国境を超えており、ウィストリア教国に入っていた。カイトの1歩が数百キロ道則を一瞬で行ってしまったのだ。本来なら3か月もかかる道則を転移よりも正確に移動してしまうのであった。
カイトがイーナスの腰に回している腕も放そうとすると
「どうして 手を腰から放そうとするの このままでいいでしょう」
「そうか」
『ママ、強くなっている』
「ここは、既にウィストリア教国内にいるわ。そして 目の前の街が最近、発見されたダンジョンに近い街でもあるみたい。
左の森の中に多くの人の気配を感じ取れるし、山の麓にも感じられるわね。それでどうする。このまま潜るの」
「街に入って情報収集と食材を買い占めてからでもいいだろう。それとミントとミルクが泊まれる場所があれば、1泊したいな!
たまには、他人の料理も食べておきたい。味覚の変化も大事だ」
『パパ、街に行くの』
『この世界の街ですか』
カイト達が街に入るのに列に並ぶと それだけで注目を浴びてしまう。時折、ミントがグルルルルと喉を鳴らしただけでもカイト達の前後が離れだす。
カイト達の番になって門番達もまた カイト達を睨むも体調2メートルを超えた。ゼブラタイガーがいて 首長のホワイトドラゴンを従えている。どちらも冒険者ギルドでSランク以上に認定されているほどに 人々から恐れられているし、1個小隊でも全滅するほどにも凶暴でもあった。
そんな中、震えた声でカイト達に聞いて来る。
「お前達は、何者だ。冒険者か」
カイトとイーナスが冒険者カードを取り出して見せる。イーナスのギルドカードを見た時点で固まる。カイトの肩の上にホワイトドラゴンが乗かっている時点で 蒼白になり、震えあがるのである。隣で見ていた。もう1人も2人のカードを見て驚くのである。
ロダンスウォール国の賢者が目の前にいて お忍びで現れてしまった為に対応に困るし、簡単に街を消し飛ばすほどの魔法を放てるのであった。
そんな中、イーナスが
「街に入ってもいいのかしら それとも追い出すとでも言うのかしら 私を」
イーナスの声を聞いた途端に震えあがっていると カイト達の横を貴族の馬車が通り過ぎる。ロダンスウォール国のフロイス伯爵領の貴族であった。イーナスの姿を見て馬車を止めて降りてくる。カイト達に近づいてくる。
「これは、これは、イーナスさまが 何を揉めているのですかな
私でよければ、お力添えを致しますが どうですか」
「私に恩を売っても国を潰す事は、変わらなくて」
冗談で言った積りが 賢者 イーナスの言葉を聞いて平伏しはじめる始末であった。少し前に魔狼の件もあってか、多くの視察団がウィストリア教国に間者として送り込まれていた。3か月前にイーナスの姿が消えた事も頷けて お忍びで姿を露わにしたものだから ロダンスウォール国の貴族であり、ウィストリア教国の間者としても優秀で守ろうとしていた。戦争を治める為に
戦乙女のパトリットと賢者 イーナスを前にしたら どの様な敵が目の前に現れた時点で全滅する事は、見る前に分かっていた。それでなくてもミルクが暴走して領民の目の前でワイバーンを一口で食べてしまう事を多くの者達が目にしており、絶対に逆らう事も許されない人物でもあった。
「どうか、どうか、イーナスさまのお力添えで ウィストリア教国をお守りしていただけませんか。あなた様が口添えしてくだされば、この国の潔白が明白します。
御力を貸してください。賢者 イーナスさま」
「私は、街に入りたいのだけどいいかしら それとも入れないのであれば、それだけよ」
イーナスが心を許す者など この世で弟のカイトのみだと貴族連中なら誰でも知っており、パトリットの話の中でも時折、出て来るのであった。イーナスよりも頭が切れて戦略家で武力も魔法を扱えると そんなカイトを見て更に驚いている。顔付きまで変わって体格まで大きくなっていたからである。
「イーナス、出て行こう。ミルクのブレス1発で街が灰に変わるぐらいの街だし」
ミルクが透き通る声でしゃべりだした。魔獣で人の言葉をしゃべる事が出来る生き物は、多くの者達も知っている。神話の物語で語り継がれている。“ 神獣 ” で ある事は明白であった。
『いいの パパ。残念、街に入れないのか』
「ミルク、街では念話でしょう。街を1つ、消滅させるしかなくなるじゃない」
『ごめんなさい。ママ』
「イーナスさま! もしかして ミルク様は、“ 神獣様 ” だったのですか」
「だから 何」
「俺達のカードを返してもらえる」
カイトの声を聞いただけでも震えあがるのであった。門番の衛兵が