激怒
「お待たせいたしました。何をするのですか」
カイトが聞いて来るも 未だに無言であった。顔も蒼白で そんな中、
「君は、Sランクに成らなくて良かったのか。十分に素質があると思うのだが」
「僕は、薬草採取を生業にする予定です。討伐系は、御遠慮します」
少し、話が出来る状態にまでなって来ると
「武器を見せてもらえるか」
と 言われて “ クナイ ” を1本、取り出した。
「これです」
ミスリルで作られた。切れ味抜群のナイフを出されても理解ができないのであった。
「今現在、自分の武器を作成中なので これしか、持ち合わせがありません。不要在庫なら持っておりますが見ます」
「見せてもらえるなら 見せてくれ」
空中に魔法陣が展開されると無造作に武器が落ちてきた。段々と彼等の顔が青から白へと変わるのが分かる。最後の1本が落ちた時点で 彼等の腰が抜けた。
口をバクバクさせて カイトを見て来る。
「色々な鉱石を複合させた。武器です。失敗作なので処分に困っている処です。
僕が教わっている工房でも売られておりますので 暇な時にでも見に来て買ってください」
さりげなく宣伝もして置く。
「付与も可能です。僕しか出来ませんが武器にも防具にも付与する事も可能です。リストも店にありますので奥様に聞いてください」
見せる事くらいなら可能だと思うけど 売るとなると女将さんが怒りそうだな 辞めて置こう。売るのは、
地面に魔法陣を展開させると吸い込まれるように消えて無くなるのであった。
「今、さっきまで ここに在った武器は、何処に行った」
「魔法陣経由で僕のアイテムバックに移動させましたが それが何か」
根本的に次元が違いすぎる事に理解ができるのであった。普通の冒険者では太刀打ち出来ない事まで理解するのであった。
「それだけ何でもできてしまうと 怖い物など存在しないだろう」
「ありますよ。何と言っても姉が1番、怖いです。怒らすと魔法の雨が降り注ぐのですよ。しまいに夜空に見える星まで落としてくるのです。よ! 生きた心地がしません」
その気持ちを思い、彼等にも十分に伝わるのであった。パトリットよりも 怒らせると恐ろしい事は理解していた。どんな時でも にこやかに笑っているがその笑顔の中に殺気が見えるとパトリットの顔が蒼白になるのである。滅多にある事で無いのだが そんな彼等もパトリットから聞いており、絶対に怒らせてはいけない人物の1人であると思っていた。
「賢者様の事なら パトリットから十分に聞いている」
「どんな事を聞いているのですか。僕にも教えててもらえませんか。後で姉にも教えておきます」
カイトが悪い顔になると それだけで震えあがってしまい。全てを話すのであった。パトリットからの話に 冒険者達が話している事まで全てを包み隠さず話すのである。そこに小さな魔法陣があるとも知れないで 彼等の話を聞いていた。イーナスが
王城で仕事をしている。イーナスの下に魔法陣が展開されてカイト達の話が聞こえてくると内容を聞いた途端に黒いオーラが立ち上る。部屋全体で収まらず、天井を突き抜けて上空まで黒いオーラが立ち上がった瞬間に 王城内で働く、職員や貴族連中までもが全て イーナスの殺気で気を失い。カイトが作ったとされる。威圧や殺気をも壊してしまい。彼等諸共、パトリットまでもが気を失う羽目になるのであった。
この日は、カイトがSランク昇格の儀式も行われる予定でもあった為に多くの貴族まで集まっていたのだが カイトの話を聞いて逆上してしまった。イーナスがここで聞いていた為に大変な事態まで陥るのであった。各国のお偉い貴族まで来日している最中に こんな事態になってしまったのだ。
イーナスが転移してきて 襟を掴んだだけでその殺気を浴びてしまい。それだけで気を失うのであった。その後、周りにいる連中までイーナスの目を見ただけで気を失うのであった。
そんな中、カイトがイーナスの胸を触り、首筋にキスをすると落ち着いたのか。甘えだす有り様だ。
「もう、姉さん。殺気が駄々洩れだよ」
「だって 頭にくるでしょう。私の事を何だと思っているのよ」
カイトが王城の真上に魔法陣を展開させると 状態異常回復魔法を発動させて 意識を失っている者達を回復させるのであった。それは、パトリット達にも同じ事なのだが 彼等は、それ処で無かった。パトリットの威圧でも殺気でも壊れなかった、ブレスレットが粉々に砕け散っている事に
それを見た。パトリット自身が青い顔になって震えあがるのである。誰の仕業か、見当がつくからである。
そして カイトの前にいる。冒険者達にも状態異常回復魔法を掛けてやり、意識を取り戻すのであった。
「安心してください。僕達の会話は、姉さんに伝えてあります」
カイトが小さな魔法陣を彼等にも見える様に展開させると 気を失う寸前で状態異常回復魔法を掛けられて意識を保つ事ができたのだが
「もしかして その魔法陣で賢者様が聞いていたのか」
「そういう事です。僕達の話を姉さんに音声だけ飛ばさせてもらいました。先程まで 王城内の人々も気を失っておりましたが 回復も済ませてあります。
今後の冒険者達の扱いも変わる事でしょう。楽しくなりそうです」
「助ける意味が無くなっただけよ。今後一切、自分達で何としなさい。勝手に死んで」
威圧も殺気も飛んでいなくても 冷たい言い方だけでも十分に伝わり、伝承の様に他の冒険者達も今回の出来事を知るのであった。
そんな事態に陥っている事など知らされていない。王城の貴族に王族までもが震えあがってしまうのである。イーナスが暴走したものなら 誰1人として止められる者など存在していなかったからである。カイトを覗いて
国としてもカイトに王宮内に入って貰い、イーナスの暴走を止めて貰いたい意思が感じ取れるのである。パトリットの場合なら暴力だけで済むが イーナスの場合は、知恵と無駄な魔力が在るが為に誰1人として 相手になる者もいないからである。それを取り押さえる事が出来ないのも事実である。
だからと言って イーナスを手放す事など言語道断である。国が簡単に他国に飲み込まれる事も可能になってしまうからである。