パニック
イーナスが壁を作り出して取り囲んでしまったのである。被害を最小限にするために
新人冒険者達は、何が起きているのかも聞かされない内に自分達が中に入る事も許されないし、目の前の森狼との戦闘をする羽目になってしまい。パニックに陥るのであった。その中でも半数以上の新人冒険者が森狼に立ち向かうのであった。が被害が出始めると狼狽え始めるのである。
夜の帳に影が動き始めると新人冒険者達には、何が起きているのかも分からないし 高ランク冒険者達にもカイトの姿が見えなかった。多くの森狼が襲ってくる最中、後ろの森狼の首が切断されている事に気が付いた頃には、爆炎魔法で炎の柱が立ち上がり、多くの森狼にバトルウルフを焼き始めるのであった。
その影を蠢くが如く、次々に至らしめていき 血の匂いと焼けあがる炎の匂いがそこかしこからしはじめると生徒達も気が付く、外の様子が変わっている事と色々な死臭が漂ってくる。
東の空が少し明るくなると森の奥深くから1匹の大きな魔狼が襲い掛かって来るものの パトリットに喰らいつくす寸前でエアーボムが破裂して 下顎が空を向いたと同時に その隙にパトリットの縦一文字に斬撃を繰り出されて 簡単に絶滅してしまうのであった。
親玉が死んだ事を確認すると縦横無尽に逃げ出してきた処をカイトがマーキングを済ませており、何かが回る音と共に森狼達の悲鳴が聞こえてくる。そこかしこで森狼達に バトルウルフの死体が転がり始めると何が起きているのか分からないのであった。
カイトがパトリットの側までやって来ると
「あっ~あ~! 魔石核まで 切ってしまっているよ。
せっかく、下顎を上に持ち上げて切りやすくしたのに 何も縦一文字で無くて ここは、横一文字でしょうに またしても研究機関から文句が来ますよ。パトリットお嬢様」
カイトの指摘に 素に戻ると現状を見ると頭を抱えだすのであった。他の冒険者達には、理解できなくてもパトリットには、カイトの言っている意味を理解できるのであった。ここが冒険者でもAランク止まりの冒険者とそれ以上に上る事ができる冒険者に違いであった。
「カイト、魔物を討伐できれば いいのでないのか」
「そんな考え方が出来るのは、普通の冒険者ってだけで それ以上に上りたいのであれば、その魔物や魔獣の素材まで大事に扱いながらの戦闘が要求されるのです。
この人みたいに一々、頭に血が上っての戦闘など 色々とお膳立てしてやっても壊してしまう人ですからね。これまでに何度も始末書を代わりに書いて来ている。僕の身に成って貰いたいものです」
「本当に済まん。今回も頼むよ。カイト」
まぁ~ 今回は、聖剣の力も加わったのか。聖剣が全てを吸収してしまった訳だ。魔石の中の魔力を理解できる。
「Sランクに昇格したから 問題がありません。これからは、研究機関の人が説明追及しに来ますので説明してやってください」
「ちょっとまて どうして カイトは、そんな事を知っている」
「僕が ちょっく ちょっく、手伝っている。からです。パトリットお嬢様は、文章を見ると眠くなるのです」
「私は、本を読んでいる時間があったら身体を動かしていた方が性に合っているだけだ。お前達みたいに本ばかりを読んでいられない。だけだ」
「僕は回収してきます」
「何を」
「わかった。行って来い。
ガランダ、お前達が倒した数何て 20ぐらいか」
「そんな処です。パトリットさまのお陰です。我々に死人が出なかったのは」
「やはり、お前は Aランク止まりだな! カイトの戦闘など見る余裕も無かっただろう」
「えっ? カイトが戦闘に参加していたのですか」
「因みに 今回の襲撃は500弱だ。私でも100ぐらい、か」
イーナスとカイトを敵に回すととんでもない事にもなりかねないな。カイトが学園に通っている間なら問題が無いが その先だよな! カイトがこの国を出て行くとき、きっと イーナスも付いて行くだろうな
回収を終えて帰ってきた。と同時に冒険者達の治療を行っている。仕草を見て イーナスが思うのであった。
治療を終えて 朝食の準備に取り掛かるとイーナスがカイトの処にやって来るのであった。いつもの甘えた雰囲気で無く、真剣な眼差しで
「カイト君って やっぱり、回復師で薬師でもあるのだね」
「どうしたのですか。姉さん」
「私の案件を手伝ってもらえないかしら 大抵の回復であれば問題が無いのだけど さすがに病気の回復となると魔法だけでは無理な部分があるのよ。薬師を連れて行っても中には、病名も分からない人まで現れて使い物にならなくて困り果てていた不始末で どう!」
さすがに これ以上の不祥事も不味いのよね。薬師ギルドの連中など更に最悪な連中だし、
「今回の野外訓練が終わり、新人研修が終われば 構いませんよ。学園など休んでも構いません」
寧ろ、姉さんの仕事風景も見てみたい。
「分かったわ。その時は、一緒に出勤しましょう。
それで朝食は何を食べさせてくれるのかしら」
相変らず、食べる事が優先される人だ。そんな事を思っているとクララ達が目覚めてテントから出て来るのであった。昨日の出来事が何も知らない状態で
テントの周りを見渡すと冒険者達の着ている服とかに血が付いている事に気が付き、他の生徒達が震えている事にも気が付くのであった。
「カイトさん、昨晩は 何か、あったのですか」
「魔物達の襲撃があった程度です。お嬢様方が心配する事もありませんよ。
パトリットお嬢様が掃除してくれました」
カイトの言葉を聞いて 安心したのか。その後、身支度をして席に着くのであった。周りが謙遜していても関係なく。