巨大化
翌日、朝日が昇ると同時にパトリットとクララ達4人が最前列に並ぶのであった。お腹が減り過ぎて眠りが少なかったみたいだ。だが この日は、カイトの休みの日でシーナが朝食の準備をしており、質素な食事へと変わっていた。
「シーナさん、カイトは! カイトはどうした」
「カイト君なら今日は休みよ。私にカイト君みたいな料理を作る事など無理だからね。期待しないで」
何を思ったか、パトリットが走り始めて カイトの部屋の扉を開くと2人仲良く、朝食を食べていた。部屋の空間が拡がっており、ラボの扉も開いていた。
「何か、御用ですか。フレイアお嬢様」
「カイト、私にもお前の料理を食べさせろ」
「今日は休みの日です。お姉さまと2人で静かな食事の時間にしておりますので お帰り下さい。パトリットお嬢様」
「ちょっとまて ミルクが大きくなっていないか」
「ミルク、元の姿に戻って」
イーナスの言葉に従い、元の小さな姿へと変貌する。
「問題ない大きさでしょう。フレイアお嬢様」
50センチほどの体長が 1メートルを超えた体長だった為にパトリットが突っ込んだのだが目の前で小さくなってしまうと かえって怪しむのであった。
「何かを隠しているだろう。お前達2人は、私に」
「フレイアお嬢様も何か勘違いしておりませんか。ドラゴン種族が いつまでも この大きさのままでいられる訳が無いではないですか。
私がミルクに小さくなるように従わせているのです。街中で大きいままだと色々と不便ですからね」
「食事の量も増えましたから それなりに大きく育っていると思います」
「もし、街の住人を襲ったりでもしたら どうする積もりだ」
「普通に狩り取って 僕達の食事になるだけです」
「カイト君がそんな事を言っているけど 問題がありませんわ。私がしっかりと仕付けしております。逆らうようなら 本人の身体でお仕置きします」
イーナスの威圧に怯えて カイトの後ろに逃げ出した。それを見た途端にパトリットも寒気が走る。
「お姉さま、今日の予定は 午前中が武器の調整で 午後からは、ミルクの餌の調達と武器の試し撃ちです」
「やっと試作段階が出来上がったの 大丈夫よ、私も付いて行くから」
「キュ~イ~ィ~ン キュ~イ~ィ~ン」
「ミルクも付いて来るみたいね」
カイトが武器だと また とんでもない物でも作ったのかと聞いてきた。
「カイトが武器だと何を作っている」
カイトがアイテムバックから 1本のクナイを取り出すと浮遊状態で現れた。それと1本の普通の剣を
「飛び道具がこれですね。武器も普通の剣です。色々と細工もしておりますので時間だけが馬鹿みたいに掛かってしまっております。
まだ 調整段階なので試し切りも兼ねて森に行ってきます」
「だったら 私も付いて行くぞ」
「それも遠慮しておきます。お姉さまと2人で行いますので あっ! ミルクもです」
何故か、ミルクの顔から安心感が見て取れるのであった。置いて行かれないとでも思ったのか、
「それに フレイアお嬢様が一緒だと 森の魔物達が逃げ出してしまって カイト君の調整に不備が出てしまうわ。今回は、私たち家族だけにして
お願いします。フレイアお嬢様」
「まぁ~僕達の場合、パトリットお嬢様と街中で擦れ違っても見つかる事も無いと思いますし、それが森の中だったら尚更、探し出す事など無理だと思いますよ。
隠蔽と気配感知無効状態で森の中を移動しますから」
ふと、気が付く。
「カイトは、今でも冒険者に成る積りか」
「その予定です。まだ知らない薬草を求めたいと思っておりますが」
「だったら 私も ・・・ 」
「そろそろ、時間です。鍜治場に行ってきます」
カイトが転移で消える。話をしている最中にテーブルの上の料理も消えており、暖かいお茶がいつの間にか、イーナスの前に出されており、優雅に口の中で堪能しはじめていた。
「フレイアお嬢様もシーナさんの食事を取らなくていいのですか。食事の量が余り多く作りませんよ。
カイト君の量からすると少ないですから 今頃は、もしかして無くなっているかもしれませんね。ここの女子寮の彼女達の食事の量を考えると まぁ~フレイアお嬢様は、お金持ちだから気にしませんか。街に出て食事をすれば済む事です」
気が付く事がカイトで無くて 食事だったら パトリットが食堂に戻った時には既に片付けられており、何も食べる物が無くなっていたのだ。仕方が無く、カイトの部屋の扉を開いてみると既にイーナスとミルクの姿も無く、いつもの狭い空間に変わっており、ベットが1つと小さな机があるだけの部屋に変わるのであった。
カイトが使っている。炉の部屋が温まると段々と高熱を帯びてくる。結界を施してあっても熱が外に漏れだしてくるのであった。外のテーブルと椅子に腰かけるとイーナスが本を取り出して読書をしている最中、ミルクがイーナスの肩に乗って静かな眠りに付くのであった。お腹も膨らみ、満足そうな鼻息を漏らしながら
そんなイーナスの側に身体の小さな男性か近付いて来た。
「おはよう。イーナスさま、カイトは 炉に籠りましたか。相変わらず、コイツの部屋だけが高熱を帯びております」
息子や弟子達も見習ってもらいたいものだ、ワシでも無理だけどな これほどの高熱の中での作業など いったい何を作っているのやら見当もつかん。
イーナスが木のジョッキに龍泉酒を入れて この鍛冶屋の親父さんに酒を進めると酒に目が無いドワーフは、イーナスの勧めに断れなくなってしまった。それでなくても このロダンスウォール国の賢者様に酒を進められれば、断る事も出来な存在でもあった。
カイトの作り置きの料理までテーブルの上に並べる。
「カイト君の作り置きでごめんなさいねぇ~ 私は、料理を作れないもので」
「とんでもねぇ~事です。あなた様は、このロダンスウォール国の賢者様に酒を勧められるだけで無く、料理まで振舞ってもらって 感激で飲み過ぎてしまいますよ。
それにあなた様と酒が飲めるのもカイトのお陰だし」
酒で顔が赤いのでなくて イーナスの美貌とスタイルに見とれて全身が赤く染まるのであった。そんな最中、着ている衣装が変わった事に気が付くと
「イーナスさま、ローブに刺繍を入れたのですか。何かの模様の様に見えるのですが」
「あっ! これね。杖に宝珠を嵌め込んだら 勝手に私のローブに色が付いたのよ。気にしないで」
気に成ったので イーナスに杖を見せてもらえるようにお願いすると
「いいわよ。カイト君の師匠なら」
簡単に承諾されて イーナスのアイテムバックから杖を出されると ここでも浮遊状態で杖が宙に浮いているのであった。それを 酒を飲みながら 宝石類の位置や場所を確認しながら 模様まで確認しはじめると1つの答えが導びだされた。