魔道具
学園のホームルームが終わるとカイトがクララに今回の行動予定を告げるのであった。
「お嬢様、僕はこれから 海に行ってきますので夕方には戻ります」
「その件ですが 私も同行しても構いませんか」
「それは構いませんが学園の方は、如何いたします。お嬢様の場合は早退になってしまって学園の偏差値にも響きますが」
「問題が無いわ。私もたまには、海に出て潮風に当たりたいと思っておりましたの」
カイトを挟んでテレスティーナの方を見ると3人も頷くのであった。カイトもクララの目線が後ろの3人を捉えている事を確認するも何も言い出さない。
「それで テレスティーナ達の同行も認めて貰えないかしら」
「計画的な事みたいですね。分かりました、学園の方には 僕の方で手配しておきます。
30分後に校門の前で待ち合わせを致しましょう。それで よろしいですか」
カイトが消えると何処かに行ってしまわれた。それを確認するとクララが
「いいわね。カイトさんの言いつけを守ってよ。特にレオニカが1番心配なのだから」
「大体、あんなにも軟弱男の言う事を守らなければいけないのだ。自分の身ぐらい自分で守れるわ。私は」
「分かっていないわ。あなたが向かう方向は、陸地で無くて海の上なのよ。どうやって自分を守ると言うのかしら それとも置いて行った方がいいのかしら 私はそれでも構わなくてよ。
問題が起きてからでは、私達の生存にも関わって来る処なのカイトさんの相手とは」
「あの軟弱男が相手する程度の相手などたかが魚なのだろう。一応、クララの意見を聞いておく、場合によっては私も戦うからな
それでもいいだろう」
クララの意見を聞かない。レオニカだったが校門の前に行って見れば、既にカイトがおり、白い板が浮遊していた。
「クララお嬢様、今回は これで移動をします。さすがに錬成空間での移動ともなると4人分の錬成空間だと魔力量がとんでもない事にもなりかねません。
その後の戦闘まで考えますと4人を守りながらの戦闘はさすがに疲れます。それと 僕からは、この板の上から出ないでください。それが守られるのであれば、連れて行きますが如何いたします」
「私は、それで構わないけど レオニカ! 守れるの、無理なら学園に戻りなさい」
テレスティーナとパレスが レオニカを見ると
「わ~かったわよ。守ればいいのだろう。ただし、戦闘に成ったら 私も戦うからな」
「それは凄い。レオニカさまは、空も飛ぶ事ができるのですか。獣人には珍しいですね。2本足で歩いているのに羽も生えていないのに 努力しているのですね。
感心です。その時は、ご自由に戦ってください。場合によっては、敵を与えますので」
ふぇ? 何を言っている。人型が空を飛べる訳が無いだろう。鳥族ならまだしも何を分けが分からない事を言っている。
彼女達が白い板の上に乗るとクララが
「そう言えば、言って無かったわね。この白い板、空を飛ぶから カイトさんの魔力で移動も可能なの レオニカが空を飛べるなんて私にも出来ない事を言っているものだから 信じられなかったけど
好きに暴れて構わないわ。カイトさんの許しも出たし、好きにして」
クララに見捨てられた言い方をされてしまい。本当の事を言い出せなくなってしまった。それでも4人が乗ると周りの景色が変わり浮遊して高くなる事を確認した直後、周りの景色が止まって見えるような状態に陥ると王都の街中が見えて来るものの屋根の上を移動するのであった。それも高速で
真横を走っているカイトを見ると涼しい顔で 全身で風を受けている事を理解する中、自分達には風が当たらない事を理解できないのであった。獣人なだけに魔法の知識が少なすぎるのである。
「クララ、これって もしかして魔道具なの」
「そうよ。カイトさんが揺れる馬車を見て開発したものよ。カイトさんに言わせると これも馬車と言うわね。馬に引かせるものであれば、何でも馬車の名がつくからと言っていたわ」
カイトが空を掛けている事に疑問を思って聞いてみるも
「あなた方は、何か、色々と勘違いされていないかしら そもそも、カイトさんもイーナス様も転移魔法が扱えるのだから空を飛ぶ事など当たり前の事なのよ。私達には無理でも あの2人にとっては、私達が地面の上を歩くのと同じように 彼等は普通に空も飛ぶし、転移もしてしまうわ。
その挙句にお姉さまなどは、毎度の事の様に勝手に転移するなとおっしゃっているわ。それにイーナス様は、魔法だけだけど カイトさんは、剣も武器も扱うわ。
レオニカが思っている以上に危険かもしれないわよ。カイトさんは」
レオニカを見れば、既に青白い顔でブルブルと震えあがっていた。自分が空に浮いていること自体が不思議だったのだ。空を飛ぶ事に魅力を持っていた時期もあったが 直に空を飛んでみるとこれほどにも恐ろしいとは思いもしなかったのである。
周りの景色に移動が無くても下を見ると色々な色が混ざって見えてしまって 意識だけが取り残される感覚に陥っていた。そして 気持ちが悪くなり、吐き出したい気分にまで陥るのであった。
陸地と海の境界線上の空の上で止まると結界を拡げて カイトが中に入ってきた。
「下で烏合の衆が何かを言っておりますが気にする必要もありません。
この先の予定を言います。目の前に見えている。水平戦場まで行き、その場での戦闘に成ります。
何か、ご質問がありますか」
テレスティーナが質問をしてくる。
「この高さから落ちれば、私達はどのようになりますか。生きていられますか」
「確実な死です。レオニカさまは、空を飛んでの戦闘も可能だと先程も言っておられましたので 大きい奴を残しておきます。存分に戦闘を楽しんでください。
因みに パトリットお嬢様は、いつも見ているだけです」
「私は、食べる方に専念しますから お姉さま同様に」
クララの意見に頭を傾けながらもテレスティーナとパレスも同意見であった。未だに震えが止まらない。レオニカは、カイトの話も聞いていないのであった。
その頃、パトリットが戦闘を楽しんでいるとイーナスが気が付き、
「あら カイト君が海に向かうみたいね。どうします。今回も辞めておきますか」
「イーナス、今の私の魔力量なら浮遊程度なら問題なく、戦闘が可能だよな」
「半日程度なら問題が無いかと思います。行くのですか」
「勿論だ。私の得物も取って置けよ。カイト!
私を浮遊させろ。イーナス」
魔物の死体の上で食事を堪能しているとパトリットが走り始める。イーナスの魔法で空に上がり、結界を用いて走り始めるのであった。取り残されてしまった。イーナスであったが この場に取り残された死体とそれに群がる。魔物や魔獣を根こそぎ洗いざらい死体へと変えるのであった。それを全てアイテムバックにしまい込むと転移でパトリットの側まで行く。何食わぬ顔で付いて行くのであった。