崩れ落ちる
王都の住民が イーナスの肩に白いドラゴンが乗っているだけで伝説の賢者様の出現だと思い。皆が立ち止まり、馬車に乗っている貴族まで馬車を止めて両膝を地面につけて拝みだす始末であった。当然、冒険者ギルドに入っても多くの冒険者達がイーナスを見ただけでも 今迄も賢者様と言っていた者までもが両膝を地面に付けて拝みだしてしまった。
受付で買い取りの件を話すにしても目線が合う事も無く、訓練場に山積みにされた魔物の死体や魔獣の死体を見て更に驚いていた。
ここでイーナスのギルドカードを確認した処、特に反応も無かったのだが パトリットのギルドカードを拝見した時には、多くの魔物や魔獣の名前が載っており、その中に魔王の名もあってか、イーナス以上に驚きを隠さなくなっていた。
「パトリットさま、この魔王って “ 魔王 ” なのですか。“ 最弱の魔王 ” と成っておりますが」
「まぁ~成り行きで討伐してしまっただけだ。気にするな! そんな大層な魔王でも無かった、しな」
大体、カイトの剣の試し切り程度で倒されてしまう魔王など 魔王と呼べないだろうに何を考えている。こいつ等は、
パトリットが思っている以上に 事の大きさが大きすぎて この日の内に王都中に拡がってしまうのであった。魔王を討伐した。噂が拡がるには十分だったみたいで
魔物の討伐した、買取には少し時間が掛かると言われて 冒険者ギルドを後にしたのだが街中に噂が拡がっており、野次馬達で冒険者ギルドの前が凄い事になっていた。仕方が無く、転移でカイトが教わっている。鍛冶師職人の店に移動をした頃には、店の従業員も噂を聞きつけており、2人が顔を出しただけでも顔が引き攣るのであった。
ガンツ親方の前に突然にカイト達が現れると いつもみたいな顔をして驚くのであった。
「いつも言っているだろうに 俺の前に突然に現れるな! 今日は、何だ! カイト」
ガンツ親方は、噂を聞いておらず 2人に対して無関心だった。それでもイーナスの肩に白いドラゴンが乗って事には、目を見開いて驚くのであった。そんなミルクも鍛冶屋の匂いに引きつられて長い首を上にあげて周りをキョロキョロと眺め出した。
「女将さんに街中で遭遇した時には、伝えてあると思いますが 肉と酒の差し入れです。
霜降り牛の霜降り部分と太ももの骨付きです。それと赤きドラゴンの肉も置いて行きます。今回、洞窟内から取れた。龍泉酒も手に入りましたので置いて行きたいのですが カメも持ち合わせがありません。1つ、貸してもらえませんか」
太ももといっても5メートルを超す、大型の魔獣なだけに太ももも大きくて1メートルを超えていた。それも2本も地面に置いてあり、霜降り部分も半身を地面に置いた。頃には、カメが独りでに歩いて来ていた。店の方から
女将さんが抱えて持ってくるのであった。親父さんと女将さんは、ドワーフなので身長が小さく力持ちなのだ。身長も150センチほどしかなくても十分に大人だと言われている。その息子たちも成人しているが皆も同じくらいの身長だった。
「これが家で1番大きなカメだよ。本当に来てくれたのだね。忙しいのに悪いわね」
地面に置かれただけであったが地面が揺れたかと思うほどに大きなカメを持ってきた。そのカメに生活魔法のクリーン魔法をかけて綺麗にしてから カイトのアイテムボックスから流し込むのであった。並々になるまで
「パトリットお嬢様、噂を聞いたよ。魔王を討伐したんだってね。街中の噂になっているよ。カイトのお姉さんも白いドラゴンを肩に乗せて街中を歩いただけで 人々が拝みだすし、この店もこれから忙しくなりそうだ」
2人がこの店に顔を出している事は、街人も知っている事なので十分に宣伝効果抜群であった。
「あんな魔王など 魔王と呼べるか。カイトの試作段階の武器で討伐をしたのだぞ。
魔王だったら もっと魔物や魔獣の群れを引き連れてバッタバッタと倒して行ってだな その挙句に魔王を倒したのであれば、いいものを
封印が解除されたばかりの魔王を倒しても嬉しくも無いと言うものだ。まぁ~私が勇者でもない限り、魔王と遭遇する事も無いだろう。あんなものは、タマタマの出来事と考えてくれ、それに倒してから分かった事だしな」
「そうなのか、カイト」
「パトリットお嬢様だけが魔人だとでも思っていたみたいですが 僕とお姉さまには、自覚しておりました。目の前の魔人が魔王だったと それに討伐をしたのもパトリットお嬢様、御1人で倒してしまわれましたしね。
僕もお姉さんも手だししておりません」
「はぁ~あなた達は、知っていて何もしなかった訳。私1人に全てを押し付けたのでしょう。今回の一連を」
パトリットも初めて理解ができた。2人に仕組まれた。と
「カイト、あの聖剣を渡しなさい。私が折って無かった事にしてやる」
「それは辞めておいた方がいいと思います。聖剣の名も “ パトリット ” に成っておりますし、剣が折れれば自然とパトリットお嬢様の命も消えて死んでしまいます。
それに聖剣と契約を結んだ時点で パトリットお嬢様の称号に英雄の名が刻まれております。諦めるしかありません。それに英雄でも魔王を討伐する事も可能だと書かれていたと思いますが」
崩れるように地面に両手を付けるとガンツ親方がカイトに
「カイト、聖剣を見せてくれ頼む」
「まだ 粗削りですよ。剣の形をしているだけなので簡単に折れてしまいます。ので 慎重に扱ってください」
カイトがアイテムボックスから聖剣を取り出すと そこには、ダイアモンドで作られた剣が浮遊しているのであった。
「これから魔力で磨き上げて 魔力浸透を向上させて鍛え上げないと武器としても脆く 加工もしておかないと後々の事も踏まえるとやる事が多すぎると思います。それと見栄えですね」
カイトの話など聞いておらず、剣を見て目を子供みたいに綺羅美かせて手に触って剣筋を眺め出していた。剣を握っただけでも魔力を吸われて立っていられなくなるのであった。ガンツ親方に息子に息子に弟子にと続いた。
「これが現実です。契約者が持てば、魔力を与えて戦闘も可能ですが そうで無い者が持てば、魔力を奪われて立っていられなくなります。場合によっては、その場で死んでしまう者まで現れるかもしれませんが まだ そこまで仕上がっていない為に残念です」
イーナスがパトリットを慰めているとお腹が空いたのか。霜降り牛の骨付き肉に骨まで砕きながら食べ始めてしまった。ミルクが その光景を見た、カイトが
「ミルクもお腹が空いたのでしょう。ソロソロ帰りませんか。お姉さま、それとパトリットお嬢様も」
何もそこまで落ち込まなくてもいいと思うのだが