涎が出るほど
「クララ、それって もう5枚目よね。明日、胃がもたれるわよ」
「ごめん。教えてなかったわね。3枚目以降からソースが掛かっているでしょう。ソースの中に胃もたれしない成分が入っているから 幾ら食べても明日も朝から万全に食べる事ができるのよ。
それに カイトさんの愛情も含まれているから 私達、女子寮の女達はムキになってカイトさんにアピールしているわ」
食事の時間が終わろうとするとカイトが厨房から出て来ると汗が流れておらず、それどころか 爽やかな振る舞いで見た事も無い料理を持って イーナスとパトリットの席に向かった。
「お姉さま、お酒に合う。料理をお持ちいたしました。
伯爵様、此方の御仁2人なのですが毎回来られて困ります。この前など 女風呂を覗いて何食わぬ顔で出て行かれて 嫁入り前だと言うのに毎回のように金貨を支払って困っております。
この方々の女子寮に入らせないようにしてもらえませんか」
国王自らが食事を堪能している最中にカイトの発言を聞いた途端に俯き、何も言わなくなる。それを聞いていた、女子寮の女性達は、カイトの発言にドギマギしはじめる。国王陛下にとんでもない事を言いだしてしまったからである。当然、クララもその中の1人である。
脇でパトリットがクスクスと笑いながら イーナスが冷たい目で国王を見る。
「わかった。この2人の出入りを禁止にする。それと2種類の肉を我が屋敷に届けてくれ、子供達にも食べさせたい」
「わかりました。明日、お届けしておきます。料理長と相談して降ろさせてもらいます。
明日か、明後日頃には、魚も食べたいとクララお嬢様がおっしゃっておりましたので取りに行ってまいります。海の漁場に変化が訪れる前に」
「時期的にそんな時期になるのか。その件は任せる」
パトリットが もったいぶって話す。
「さぞや美味しいのだろうな! 脂がのっていて口の中でとろける様に消えて無くなる魚の旨味も味わえないなんて 何て可哀そうな連中だ」
目の前に赤きドラゴンの肉があるにも関わらず、口から涎が零れ落ちそうになっていた。宰相など涙目になりながらカイトを見上げている。食通の彼からすると滅多に食す事ができない。海王生物の料理を食べたくて何度もパトリットからの差し入れを楽しみにしていたからである。
「諦めろ、街の魚屋から仕入れたらいいだろう。今回の霜降り牛だって 街の肉屋に卸すのだろう。カイト」
「そうですね。貴族に食べさせるくらいなら庶民の口に入れたいと思っております。今回は、さすがに多く狩り取り過ぎました。当分は、肉にも困らないでしょう」
パトリットが話の中に入っている最中、イーナスが1人でカイトが持ってきた料理を堪能していると 赤きドラゴンの肝が半分以上が終わっており、それに気が付いた。パトリットが
「イーナス、てめぇ~1人で肝を食べ過ぎだぁ~私の分も取って置けよ」
「早い者勝ちよ」
「パトリット、それは何ぞや? 見た感じ、生に見えるのだが」
「これか、レットドラゴンの生肝も本来なら皿の上に乗っているだけでも この場にいる連中程度ならその場で即死するほどの猛毒なのだが カイトが予め、毒抜きをしてあるから生で食べれる状態にもなる。私達は、若いから生命力が伸びるが 親父たちからすれば、明日の朝日が黄色くなるまで貫く事ができるぞ」
“ 生肝 ” と言う言葉を聞きつけて 宰相がこれも食してみたいと思いだしていた。
「フレイアお嬢様、この肝は、アースドラゴンやグリーンドラゴンなどと同じに思ってはいけないわ。数十倍の美味しさが在るわ。私の手が止まらなくなってきているのだから」
イーナスの口の周りに 油が付き始めるとカイトが口の周りを拭き始めた。
「ありがとう。カイト君、明日は期待しておいてね」
「今回は、いい素材が手に入りました。宝石も使って細工もしてみたいと思っております。よろしくお願いします。イーナスお姉さま」
「それが終われば、1週間ほど 世話になるからよろしくな! カイト」
カイト達の話を聞いていた。女性達の顔も笑顔になる。また 冒険談や勉強を教えてもらえると期待もするのであった。
この日からカイトの眠れない日々が始まるのであった。アイテムボックスからラボと言う。大きな扉を取り出すと部屋の中の壁に取り付ける。カイトの魔力で扉が開くと そこは、異空間が広がる世界が出来上がっており、多くの機材が作られてしまわれていた。
赤きドラゴンの素材をなめし皮に特にその生物の脳ミソを使ってなめすと皮素材の本来の姿のまま、残ってくれるのでその方法を使用していた。カイトは
鱗などは、棍棒で叩いて素材を軟らかくして使用したり。ドラゴンなどの皮などは、皮素材が何重にもなっているので使える場所を選んで使用するのであった。本来、皮鎧であっても金具とかで固定をするのだがカイトの場合は、魔法陣とスライムノリを使用して 何重にも重ねては叩いての繰り返しをしていく。それが尋常でないほどのスピードで行われるので 羽田から見たら コマ送りの様に見えてしまうのであった。
この日は、皮に脳ミソから取れた油を塗るだけで終わりが見えた。朝日が昇る時間となって朝食の準備の時間となるのであった。因みに鱗の数が3万8239枚もあった。十分に素材と使用する事ができると