初陣
「だったら ここに住んだらいいじゃない。この人達も助かるし、部屋なら十分に余っているから好きな場所で暮らしたらいい。
師匠のガードさんも仕事場に近いから問題が無いでしょう。どうですか。必要な物などは、彼女達に伝えてあげれば買ってきてくれますよ」
「カイトさんが それを決めてしまってもいいのですか」
「僕も イーナスお姉さまも この屋敷に戻って来る事もありません。今日、出て行ったら2度と戻って来ないと思います」
「どうして そんな事をおっしゃるのですか」
「それが イーナスお姉さまの定めです。その時に僕も側に入れればいいのですが 無理かもしれません。
刻が許してくれない。それまでに できる事をしておかないと」
「どういうことなのですか。カイトさん」
「忘れてください。今が幸せな時間です。永遠に続く事を願いたいものです」
どうして ・・・
カイトとは、その後 会う事も無く、人生を終える事ができた。何も知らされないで
何事も無く、無事に王都に向かう事ができた。伯爵が移動する事となってか、多くの騎士と冒険者を使っての移動となる。その為に多くの資金も冒険者ギルドに流れるのだが ・・・
何も起きる事も無く、旅を続けていたのだが魔物の襲撃は毎度の事である。突然に 木が倒れる衝撃を受けるのであった。その為に警戒態勢を取る。
「カイト、何事だ」
「カイト君、何が起きているの 私の範囲外の事を教えて」
距離にして500メートルって処かな 数も50名を超えている。監視者も2人,違う。大分離れているけど もう1人いる。3人態勢で監視を行っているみたいだ。
狙いは伯爵の命って 処か、それにしても周りに魔物の数も多いな! 誘い水でもあるのか。魔草を旨く使っているみたいだ。
「結論から言います。と この先に盗賊が待ち伏せしております。数は50名弱、それ以外に監視者が3名と魔物まで誘導していると思われます。
多分ですが 50名の内、半数以上が奴隷盗賊だと思われます。そんな事ができるのは、貴族が絡んでいるとしか言えません。以上です」
「カイト、どういう事か 説明しろ、推測でも構わん」
「まず、魔物の誘導ですが魔草を使っているのでしょう。考えられる事と言ったらそんな処です。次に監視者ですが森の中に2人が潜んでおります。指示役といった感じです。距離にして100メートルほど離れた位置に もう1人が監視をしております。
伯爵さまの命が無くなれば出て来ると思われますが 相当な手練れだと推測できます。レベルも100を超えておりますので それ以外は、30~50弱って行った処です。以上が推測した感じです」
「鑑定持ちがいるってだけでも有難いのに魔法まで使えると ここまで状況が分かるものなのか、それなりに死者も出るのかもしれない。
クララ、お前の光魔法でケガ人も治して貰う積りだ。心して掛かれよ」
震えながらも貴族の娘らしく、振舞うのであった。
「だ・頑張ります。お父様」
そんな震えている手をカイトの手が添える。
「大丈夫です。クララお嬢様、そんな事になる事も無いでしょう。伯爵さま、1つ 提案があるのですがよろしいですか」
「何だ!」
「新しい魔法の練習台にしても よろしいでしょうか。彼等で」
イーナスの顔が突然、青白くなり
「カイト君、ここで “ エクセレント ボム ” を 撃つなんて言わないわよね」
エクセレント ボム、広範囲の風魔法攻撃
「違いますよ、イーナスお姉さま。それの小型版です。威力も人の頭が吹き飛ばさない程度まで魔力調整をしながらの調整をしたいのです。
これからの学園生活を有効打にでもなってくれれば、何もしないでも勝手に彼等が倒れてしまいますので 僕も楽ができます」
「本当よね。危ない事だけはしないでよ。カイト君は、まだ 子供なのだから」
イーナスの心配をよそに フレイア伯爵が聞いてくる。
「エクセレント ボムとは何だ? それに新しい魔法だと誰が考え出した」
「僕が答えてもいいかな イーナスお姉さま」
「ええ!」
「エクセレント ボムですが 風魔法の広範囲魔法です。お父様から話を聞いていると思いますが 僕の村の敷地が2倍にまで拡がるほどの魔法だったみたいです。
物は試しに撃ってみても構いませよ。僕の実験の後でいいのであれば、それの小型版です。1メートルほどの空気の玉を20センチほどまで小さくさせて 人の目の前で爆発をさせる魔法です。
魔力量を間違えると簡単に人間の頭程度なら吹き飛んでしまうでしょう。さすがに生徒にそんな魔法を撃ちこんでしまうのも考え物です。即退学か、もしくは奴隷落ちにまでなってしまいますので把握しておきたいのです」
「敷地の件なら聞いている。カイトが魔法の練習で敷地が拡がったと 今度、時間を見計らって視察にでも行かせてもらう積りだったが見てみたくなったわ。
色々と聞いておきたいが 今は、そんな事も言っていられないか、カイトに任せる。補佐にイーナスとパトリットを付ければ問題が無いな」
「僕からすれば、護衛対象のクララお嬢様でも十分です。が 遠くに隠れている人を捕まえる事が大事なのでパトリットお嬢様とイーナスお姉さまをお借りいたします。
終りましたら音で知らせますので お越しください。その時に僕達の姿が無いと思いますが心配しないでください。遠くに隠れている奴を連れて来るだけです」
「わかった」
「カイト、お前の初陣だな」
「カイトさん、ケガだけはしないでください。その時は、私が治療を致します」