未知数
「やぁ~ お嬢さん方、こんな森の中で何をしているのですか」
「薬草採取よ。どちら様かしら 見た処、冒険者にも見えるのだけど もしかして盗賊だったりして」
パトリットが周りを見渡す。
「それは、申し遅れました。俺は、ラクガイのリーダーを務めている。ガンザと言います。お見知りおきを」
「そう言えば、そんな名の冒険者が この街にもいたわね。お父様から聞いた事がありますわ。
それで何か用でもあるのかしら 森にも多くの者を潜ませているみたいだけど」
「パトリットお嬢様に任せて 僕達は退散しませんか。イーナスお姉さま」
「それもそうね。逃げ出した方がいいわね。お互いの為に」
「ちょっと後ろで言いたい放題な事を言っていないでよ。私も帰ればいいのでしょう」
「カイト君、火を消して帰りましょう。彼等の邪魔になるわ」
「はい。イーナスお姉さま」
焚火の真上に水が浮かび上がると自然と落ちて全ての火が消えてしまう。
「すいません。名を教えて貰えませんか」
「私は、パトリット・フレイアで彼女がイーナス・ゴアボイアよ。彼は、イーナスの弟。それでいいかしら」
パトリットとイーナスの名を聞いた途端に 冒険者達の顔付きが変わりだした。イーナスが杖を取り出して杖に座ると宙に浮き始めて カイトとパトリットも丸い球体の中に入る。と 2人もまた。浮かび上がってしまう。それを見ていた。冒険者に動揺が走る。この世界でも空を飛ぶという行為は、神話に近い物があった。その様な事が目の前で起これば、誰しもが恐怖を覚えだす。
パトリット達が空を飛んで姿が見えなくなると
「あれが賢者 イーナス様の御力か、あんなにも凄いのか。賢者とは」
あれで14歳なのだろう。その先、どうなってしまうのだ。彼女は、仲間内の魔法使いを見る。
「私とでは、次元が違いすぎるわよ。どの様な魔法を使っているのかもしれないわ。2人も浮かせて 空を飛ぶなんて聞いた事も無いわ」
「俺も文献とかで読んだ事があるが 未知数の魔力を使用するとなっていた筈だ。彼女達が味方なら最強でも 敵に成ったら最悪な場面になるだろうよ」
「戦乙女のパトリット様からも静けさの中に目を見ただけで恐怖を覚えたくらいだ。未だに手の震えが収まらない」
イーナス様の弟も魔法使いだと思うのだが 詠唱が何も聞こえなかった。無詠唱って 奴なのか。あれが こちらもバケモノに育っているみたいだな
冒険者にでも成って貰えれば、見方が増えて俺達も助かる。
その後も冒険者達の話が終わる事も無く、陸ガニの事など忘れて街に戻るや否や賢者と戦乙女の話だけで盛り上がるのであった。
彼等から離れた。カイト達は、
「カイト、これも錬成空間って 奴なのか。どうやって飛ばしている」
「簡単な仕組みです。イーナスお姉さまの杖に魔法糸を縛り付けて その先端部分を僕が持っているだけです。パトリットお嬢様は、何もしなくても僕を中心に3メートル以内なら自由に空を飛ぶ事も可能だと思います」
前にカイトが言っていた奴か、イーナスのローブにも使われている。魔法糸を簡単に作れるものなのか? これでは、冒険者達もたまらないだろうな! 目の前で人が浮かび上がって 空を飛ぶなどと思ったら私でも驚くぞ。
カイトだけは、底が見えない。どんな大人に育つのかも考えつかない。存在だ。
空の遊覧飛行の最中でも 多くの鳥達から襲撃を受けるもカイトの魔法で難を逃れて全てがアイテムバックに収納されるのであった。王都までの食材として
「イーナスお姉さま、お願いしたい事があります」
「カイト君の頼みなら 何でも聞くわよ」
「街に戻ったら 冒険者ギルドに行きたいです。不要在庫を売って貰いたいのです。さすがに要らない物が増えすぎてしまって困っていた処です」
「カイト、量が多いいなら 私の家で買い取ってもいいぞ。珍しい魔獣の素材や魔石なら十分に価値も上がる」
「序に解体場もお借りできませんか。解体も済ませておきたい物で」
「そんなにも在るのであれば、屋敷の使用人を使っても構わないぞ。どうする」
「それは、辞めておきましょう。驚かれると思います」
色々な意味で その後もまた パトリットの悲鳴が木霊して 街の上空から急降下で屋敷に戻るのであった。
解体現場で錬成空間も併用して解体をしていくと人間業に見えないほどの速さで解体がされて行き、多くの血が流れ出すのであった。その血の匂いを感じ取った。騎士が警戒態勢で近付くもパトリットがいる為に近づく事も出来無し、中を見せて貰うと目を疑うのであった。
凄まじい速さで解体を行っている少年を見て 更に驚くのであった。
この世界でもバットスライムが存在しているか、心配であったが召喚魔法陣を展開して召喚を行うと多くのバットスライムが召喚されてきて血を飲み始めるのであった。下水の中まで入り込み全ての血を揉みほしてくると部屋に戻って来て 更にカイトの手伝いで無いが魔物や魔獣の体内に入って血のみを吸い尽くすのであった。
それを見ていた。イーナスとパトリットが今更驚く事を諦めたみたいで 深い溜息の後に笑うしか出来ないのであった。