新たなる
「僕の番号は、172番と書かれております」
本来ならば、錬成空間を覚えると多くの薬草の知識や調合方法を覚える事が出来るのだが カイトは既に世界の理を覚えているために何も頭の中に入って来なかった。
「それは凄い。私も触らせてもらえませんか。もしかして ・・・」
ガードがカイトの錬成空間を触れると そのもの自体を触る事が出来るし、空間の厚みまで感じ取れるのであった。
「因みにカイトさんの魔力量は、」
「教えられません」
「当たり前の事を聞いてしまってすいません。あなた様は、これから何を致すのですか。薬師を志すのであれば、協力を惜しみません。その時には、いつでもお声を掛けてください」
「薬師ですか。薬草採取の冒険者もいいのかもしれませんね。森から多くの事を教わる事が出来そうで」
方向性が決まったな! 薬草採取で世界を回るのもおもしろい。
そこでイーナスがカイトの顔を見た途端に
「カイト君、ダメだからね。薬草採取の冒険者なんて」
そんな物になってしまったら カイト君が私から離れてどこかに行ってしまう。
「いいではないか。イーナス、カイトの好きにさせてやれば それに薬草採取など誰にでもできる簡単な仕事だろう」
「フレイアお嬢様は、何ヶ月も森で生活が出来ますか。私には無理です。カイト君は、当たり前のようにできるのです。まだ 10歳の子供がですよ。それが大人になったら 何年も帰って来ないなんて考えたくもありません」
「薬草採取で何ヶ月は、無理があるだろう」
「カイト君にとっては、薬草も鉱石も同じ考えなんですよ。おおかた、家に戻ったのも鉱石集めで3~4日も家を離れていたのでしょう」
イーナスが父親の顔を見ると何も言ってこない処を見受けられた。その後、カイトを見る
「イーナスお姉さまは、何でもお見通しですね。材料が不足しましたので探しに行っておりました」
「それで 今度は、何を作ろうとしているの? カイト君」
浮遊の腕輪なんて そんな素朴な事を考えていない筈。
「馬車を作ろうかと思いまして」
「どうせ、普通の馬車で無いのでしょう。カイト君の考えの中では」
「そうですね。お母さんが馬車に乗ると馬車の揺れでお尻が痛いとか、腰が痛いと言っておりましたので揺れない馬車を作ってみようかと 未だに思い悩んでおります。
魔力量の計算が未だに完成いたしかねます」
「って! 事は、既に完成しているのね。この場に出せる」
カイトとイーナスの会話を聞いていた。この場にいるみんなが驚きの顔をする。
「それは構いませんが まだ 土台が出来上がっただけですよ。何も出来上がっておりません」
カイトが自分自身のアイテムバックからミスリルの板を取り出すと床に付かないで浮遊するのであった。
それを見た。イーナスも驚きを隠せない。鑑定眼鏡で大体事が分かってしまっていたので何が足りないのかも分からないのである。
「私が見た感じ、完成していると思うのだけど」
「多機能を取り付けて行くと色々と無理がありまして それに魔力量も足りなくなってきます」
「おおかた、家に備わっている物を全て、取り入れようなんて考えていない」
何で分かった。俺の思考も分かるのか。
「どういうことだ、イーナス。家に備わっている物って」
「簡単な事よ。壁や屋根、椅子は無理でも机は可能ね。それにお風呂に調理台、言い出したらキリが無いわ。それらをこの1台で済ませようと考えているの カイト君は」
「カイトなら この街に来る時もそれに乗って来ていたぞ」
父親の発言に イーナスが
「って 事は、冷暖房完備 何でしょう。既に」
「冷暖房完備って 何だ」
「フレイアお嬢様、それに乗ってみてください。板の上が温かいです。夜など布を掛ければ寝る事も可能です。朝まで温かい状態で寝る事も可能です」
カイトがそこで止める。
「この流れで行くと強度が足りません。それに錬成空間も覚えましたので試したい事もあります」
「強度って 何だ」
「簡単に言いますとみんなが乗っても壊れ無くする事です。フレイアお嬢様」
カイトがミスリルの板を錬成空間の中に入れる。光りが治まると完成の1歩手前まで出来上がるのであった。
「どうぞ、乗ってみても大丈夫です。何も付いておりません」
「カイトは何をした。今までの薄汚れていた。板が 綺麗になっただけか」
「そんな処です」
強度や純度を説明しても分かって貰えないだろう。何も言わない方がいい。イーナスお姉さまの顔にも書いてある。
パトリットが馬車に乗り出すと興味本位でその場にいる者達まで 乗り出しても馬車が床に付く事も無く、揺れる事も無かった。それどころか、乗っただけで生活魔法のクリーンが掛かって汗臭さや服の汚れまでもが綺麗になってしまっただけでも驚きを隠さないのであった。
「まさか、ここまでやると思わなかったわ。さすがね。カイト君」
当然、馬車に乗っている者達までもが驚くのであった。皆が感激をしている最中、フレイア伯爵が深い溜息を吐くのであった。
「カイトよ。これを売り出すなどと言わないよな」
「無理ですね。価格が付けられませんし、魔力量が半端ないです。
最低限度の馬車の機能として考えるのであれば、乗っている方の魔力を使えば、浮かす事くらいが可能だと思います。それに自走も無理になってきますので 馬の力を使うしかありません」
「ちょっと待て もしかして このままでも進む事が可能なのか。この馬車は」
フレイア伯爵の言葉に更に驚きを隠せないでいると
「可能です。速さに関しては、まだ 体験しておりませんがそれなりの速さが可能かと思われます」
また ここでも頭を抱えだした。