レットボア
「伯爵さま、10歳の子供に護衛など不可能かと思われますが 如何いたす積りなのですか」
「プリノ男爵、10歳と言えども盾の役割ぐらいは務まると言う物だ」
貴族連中が何も知らないでカイトを弱いと判断して 言いたい放題でしゃべりだした。
「して カイトよ。この街に来る際に狩りはしたのか」
「鳥を1羽、狩りました。今晩のメインにしようかと思っております。昨日までは、イーナスお姉さまの持ってきた物を美味しく頂きました。屋敷の執事さんにメイドさん達も喜んで食べておりました」
「イーナスは、何を狩ったのだ。俺も食べてみたかったな」
「小ぶりのレットボアです。少々、炎を吐きましたが問題なく狩り取りました。カイト君の料理スキルも上がってきているので街で食べるよりも家で食べた方が美味しく頂けます」
レットボアと聞いた途端に貴族連中が青白い顔になるも ゴアボイア男爵の方を見る。苦笑いで答えていた。
羨ましい一言である。滅多に回って来ない食材を簡単に手に入れる事こそが貴族という者だと思っていたからである。
「レットボアか、久方ぶりに食してみたいな。使いの者を回すからワシにも少し分けて貰えないか」
「いかほど用意したらよろしいですか」
「半身と言いたいほどだが 小ぶりと言っていたので今晩の食材に回せるほどで構わない」
「カイト君、残りの食材をフレイア伯爵さまにお渡しして 今夜から鳥が食べられるのでしょう」
「カイト、待て ここでだすな! 皆が驚く」
「ゴアボイア男爵、どういう意味だ。先程は、イーナスも小ぶりと言っていたぞ」
「この2人にとっては、小ぶりでも我々からすれば、大物だと言う事です」
ドラゴンの事は伏せて置こう。カイトもあえて名を出さなかったので
「今持っているのか。持っているのであれば、ここにだせ」
貴族連中が不思議に思うのであった。どうやったら この場に肉を出せるのかをカイトとイーナスは、アイテムバックを所有していた為に何処でも無造作に出し入れが可能であった。最近では、父親も欲しいと言われて作って差し上げている。
当然、伯爵も知っている。欲しいとも思っているみたいだ。
「カイト君、大きな調理台を出してから肉を出してね。床に敷き詰められている絨毯が汚れてしまうわ」
「わかりました。イーナスお姉さま」
何処からともなく大きなテーブルが出てきただけでも驚いていたのだが そのテーブルの上に山盛りになった肉が出てきただけで更に驚くのであった。
「して 肉が真新しいのだが もしかして それも機能とやらの違いか」
伯爵さまが言っている意味を理解できないのであった。1人を除いて
「僕とイーナスお姉さまのアイテムバックは、時間無効に仕上げてあります。中に入っている時間が止まってしまうのです。ですが自分自身の魔力を使わないといけません。アイテムバックの中に入っている魔石だけでは、魔力が足りないのです。もう少し勉強をして その辺りの事も学びたいとも思っておりました。
イーナスお姉さま、これを伯爵さまに」
「ちゃっかりしているわね。カイト君も」
鑑定眼鏡で中に何が入っているかを確認が出来た処でカイトから受け取って 執事に来てもらい、手渡した。
「して これは何だ」
「フレイア伯爵さまの家紋が入っている。バックルです。それがアイテムバックに成っております。容量は」
カイトが会見の場を見渡す。
「この部屋の広さぐらいは、入ると思います」
貴族にフレイア伯爵までもが部屋を見渡すのであった。
「伯爵さまの魔力量を僕が知らなかったので勝手に広さを計算してしまいました。中に入っている。魔石は、ワイバーンを使用しておりますので 多分、10年ぐらいは持つかと思いますが念のため、ゴブリンやオークの魔石を入れて置いた方がよろしいと思われます。小さい魔石から消えて無くなりますので
当然、知っていると思いますが魔石が無くなれば、ただの皮に戻ってしまいますのでくれぐれもお忘れなく」
カイトは、人の心が読めるのか。それとも この前、顔を出した時にでも顔に出ていたか。
「ありがたく使わさせてもらう。して これは何の皮だ」
「アースドラゴンの腹回りの皮を使用しております。肉は、もうありませんからね。村の皆さんに渡してしまいました。美味しく頂きました」
村の周りを徘徊していたから被害が出ても大変なので狩り取っただけだけどね。
アースドラゴンと聞いただけでも青白い顔をする貴族がいる最中、ここでも苦笑いで受け答えをする者が1人いた。
「ちょっと待て 街に持ってくれば高値で売れるだろう。どうして それをしない」
「父に頼んで良心的な商人を紹介してもらいました。その方が村に買取に来ております。村としても大助かりです」
「そんな事は、聞いていないぞ。俺は」
はっ・・と 思い出す。何か、訳も分からない事を執事が言っていた事を そして ゴアボイア男爵を見る。