出迎え
両親達が居ない為に1人、大人しく家でお留守番をしていると村人の子供が不思議そうにカイトを眺めてくる。中には、小石を飛ばしてカイトの付近に投げつける子供もいた。そんな彼等に興味が無いのか、それともペドロからの嫌がらせを命じられたのか、彼等が面白がってカイトに対して小石を投げ出したまでは良かったのだが 次第に当たっても何も言わない事をいい事に本気でぶつけてきて大怪我をするのであった。
本人も転んだだけ、と 言っている事から気にしなかったのだが たまたま、カイトがいる場所を通り過ぎると村人の子供達がカイト坊ちゃんに対して石を投げている場面を見てしまった。メイドが怒ってしまった。
その日の内に村人の子供の家に乗り込み、謝罪と奴隷落ちを言い渡すのであった。貴族の子供と農民の子供とでは、その場で殺されても文句が言えないほどの事であった。それどころか、カイトの顔が黒ずんでおり、子供達から聞いた話では、ペドロからの指示も加わっていたとの事である。
毎月、金貨5枚で裕福な暮らしをしていた。農民たちが農地を没収、奴隷落ちで一生涯、毎月 金貨1枚の暮らしにまで落ちてしまった。死ぬまで奴隷で生まれてくる子供までもが奴隷認定されるのであった。
その事件がフレイヤ伯爵領にまで届くと噂が拡がり、フィーナ、ディアポロ、ペドロの立ち位置が貴族の子供から領民の子供に変わると屋敷内では、貴族でも 街に出れば、領民の子供以下の扱いに変わるようになってしまっていた。当然、母親に夜会やお茶会に呼ばれる事もなくなり、執事にメイドも 1人また1人と辞めてしまう扱いにまで落ち込むのであった。最後に残された、老婆が彼等の面倒を見る事となるのであった。
豪華な食事を作れない彼女は、質素な食事でお腹を膨らます毎日であった。育ち盛りの子供達にとっては苦痛でしかなった。それもこれもカイトとイーナスが元凶だと思い。いつの日か、やり返そうとまで思うのであった。
カイトが10歳になって フレイヤ伯爵領の子供のお披露目会にカイトも呼ばれる事となると イーナスも黙っていられなくなり、学園を休んででも出席したいと申し上げると学園も国からも了解が簡単に出るのであった。それどころか、騎馬隊50名に 冒険者もBランク以上が50名も使わせて魔物や魔獣討伐までもが付いて来てしまったが 彼等の手を煩わす事もなく、イーナス1人で事が済んでしまうのであった。その素材もイーナスのアイテムバックに閉まって大量に冒険者ギルドや商業ギルドに降ろすのであった。
更なる地位も名誉も思いのままの人生を送るのであった。そんな彼女が凱旋するとなると街では、賑いが凄い事となるのであった。国が認めた、賢者を一目見たいと多くの村からも街からも押し寄せてくるのであった。
「何か、凄い事になっておりますね。お父様!
家に帰っても構いませんか。明日のお披露目に出席したくありません」
長蛇の列に並んでいるのであった。貴族と言えども領民よりも先に行く事などしたくなかった。父親は、順番を守って並んでいると街から騎馬隊がやって来て
「こちらは、ゴアボイア男爵の馬車で間違いが無いか」
「そうですが 何か、御用ですか。旦那さまと坊ちゃんが中に居ります」
「そうであったか。早くに見つかって良かった。イーナス様がお待ちだ。我等の後に続け先導する」
「旦那さまの指示です。イーナス様も知っていると思いますよ。
旦那さまに確認を取っても構いませんか」
「さすがは、イーナス様のお父様だ。確認してもらって構わない」
「旦那様、失礼いたします」
トリノクライム・ゴアボイアが姿を現して
「済まないが私は、男爵どまりの冴えない男だ。領民よりも先に行く事が間違えておる。我々は、領民あっての貴族なので順番を守りたい。貴殿たちは、先に言って彼女の護衛を頼めるか」
馬車が揺れる。何事かと 父親が顔を出すも反対側の扉からイーナスがカイトに抱き付いてきた。
「会いたかったわ。カイト君」
「イーナスお姉さま、人前です。はしたないですよ」
「私もカイト君も要らない子でしょう。今更、恥ずかしいなんてないわ。それにカイト君のお陰で私は、賢者になれたのよ。自由を手に入れたわ。
少しの仕事が付いてきたけど あなたを守る為なら何でもして見せるわ。私は」
「僕、家に帰っていいかな! 街中に入りたくないよ。イーナスお姉さま」
「それは無理ね。伯爵さまがお待ちしているし、飛び級で来年から カイト君は私と同じ学園に入学してもらうわ。貴族は、10歳になると学園に入学して5年間の勉学と魔法に訓練も参加してもらう任務よ。
他にも色々と教える事があるけど 今は、辞めておきましょう。あなたとの再会の方が大事だから」
「イーナスお姉さま、性格が変わりましたね」
使命感か、もしくは ・・・ いい方向に向かっているのであればいいけど ・・・