家族崩壊
かくして 翌日から魔力循環をする事となった。
「カイト君、私の魔力が何処かに行ってしまったわ。どうしよう」
そこから始めないといけないのか。
「イーナスお姉さま、オヘソの下あたりに魔力が集まる部分があるみたいなのです。探してみてください」
少し時間が掛かったが
「あ・あったわ。私の魔力がここに集まっている」
「それを手で掬い上げるみたいに丸くできますか」
カイトには、イーナスの魔力も見えていたので説明も簡単に済んでいた。1日を費やして魔力を維持する事が出来るようになった。これが早いのか、遅いのかを解るようになるのは、随分と先の事であった。
カイトとイーナスが部屋の中で遊んでいる最中、ペドロ兄さんは街に繰り出して地元の貴族の子供達と共に勇者の遊びをしているのであった。いつしか、自分もそうなりたいと思い描きながら
その日の夕飯の時もまた ペドロ兄さんが1人で話をしている最中もイーナスとカイトは大人しく食事を済ませて部屋に引き込むのであった。その様な仕草も・・・
何度かの街に遊びに連れ出されるも 何も見向きもしないで両親の後ろを歩いて付いて行くだけで無言を貫き通していた。ペドロのみが駄々を捏ねるのであった。兄弟の中にも格差が生まれてしまうのであった。両親が知らない内に
4年の月日が流れて ペドロとイーナスが学園に行く事が決まる。ペドロは、魔法の才能が無いと判断されて地元の学園に入学をするのだが イーナスには、魔法の才能が開花しており、王都の海王学園に入学が決まるのであった。それも特待生としてすべての学費が免除でお小遣い迄、支給するとの事であった。
それに対して猛反発が起きるのは当たり前だが両親から見たら当たり前の事であった。努力も何もしていないものと毎日の努力を積み重ねてきたものの違いを見せつけられてしまっていた。
「カイト君も王都に来てね。待っているから」
「僕は無理です。学園に行かないで冒険者に成ります。3男を学園に入れるほど生活が豊かでありません」
「私のお小遣いを溜めておくわ」
「せっかく、自由になる御金があるのです。自分の為に使ってください。イーナスお姉さま」
「カイト君は、私よりも魔法の才能が有るのよ」
「そうだぞ。お前も・・・」
「無理に話の中に入って来なくても お父様も分かっていると思います。僕とイーナスお姉さまは、家の中で日陰です。存在も消えておりますので忘れて貰って構いません」
「この家でお荷物の2人が居無くなれば、俺達が自由に成れる」
「ペドロ、貴様の妹と弟だろうが」
殴り飛ばされる。
「こいつ等は、殴っても 蹴り飛ばしても何も言わない。その辺にいる奴隷と同じだ。俺でなくても兄も姉も同じ事をしてきたぞ。どうして俺だけが怒られないといけない。可笑しいだろう。
全てこいつ等が悪いからだろうが」
少し、頭がよくて 魔法が使えるからって俺達よりも優れているだと許される事で無いのは兄さんも姉さんも分かっているのに どうして何も言わない。俺だけが悪者か、
「そうなのか、フィーナ、ディアポロ」
「その様な家系図にしたのは、お母様です。幼少時代から この2人のみを虐めていましたわ」
「俺もそれを見て育ったから この2人が必要が無いと判断しました」
今更、何を言っても無理よ。悪役母を演じるしかないみたい。
「わかった。俺の代で男爵の任を降りる事にする。お前達が貴族に成る事もない。そして カイトが学園を卒業する事となったら パルムーナ、俺と別れてくれ お前達と同じ屋根の下で住みたくもない。
最低でも兄弟も大事に出来ない連中と一つ屋根の下に住みたいなどと思わないだろう。お前達との縁も切る。フィーナにディアポロの婚約者の方には俺が説明する。判断は、相手の両親に任せる事とする」
「お父様、僕とイーナスお姉さまを見捨てても構いませんよ。それだけで家族円満です」
「それでは、俺の気持ちが済まない」
「それでしたら フレイヤ伯爵領の自宅に住まわせたらよろしいかと思います。仕事でも何度も行っているのですから 自宅に泊まるのを嫌がるのであれば、宿屋と言う事も可能かと思います」
「カイト、イーナス、お前達は、それでいいのか」
「僕は構いません」
「私もそれでいいわ」
その後も両親に兄弟達まで巻き込んで話し合いが続くのであった。そんな時でもカイトとイーナスは、自分達の部屋に戻って魔力循環を行ってから睡眠となった。彼等の話し合いが朝方まで続いたのは言うまでも無かった。
3年の歳月があっという間に流れて カイトが8歳にイーナスが12歳になった。イーナスお姉さまとペドロ兄さんがフレイヤ伯爵領の学園に入学試験を受けに行って1週間の時間が流れた。両親も兄弟達もフレイヤ伯爵領に向かった事をいい事に屋敷を抜け出して村人に会う事もなく、転移して森の中に移動するのであった。
久し振りの魔獣狩りも行い。薬草採取も行い。1週間もの間、毎日行うのであった。カイトの分身を水で作って庭で遊ばせていた。為に誰も疑う事もなかった。いつも通りに水魔法で行いながら 遠隔操作を行うのであった。