生活魔法
「カイトよ、フレイヤ伯爵領が見えて来たぞ」
俺の家族構成は、
父親 トリノクライム・ゴアボイア 38歳
母親 パルムーナ・ゴアボイア 32歳
長女 フィーナ 14歳
長男 ディアポロ 12歳
次男 ペドロ 9歳 双子の兄
次女 イーナス 9歳 双子の妹
3男 カイト 5歳
一夫多妻制なのだが俺の父親は、1人の女性だけみたいだ。特に女性に興味が無いとも言えないのだが特定の女性を作る事を嫌っているみたいだ。1人を除いて
そんな俺も薬草の本を読みながら 周りを見ずに
「その様です。お父様」
「本当に この子は、何も気にしないのよ。2年の月日が流れても口数が少なくて心配だわ」
父親もまた 俺やイーナスには、興味が無いみたいで何も自分から話をしてこない。当然、家の中ですれ違っても会話をする事もなく、挨拶をするのみであった。この日は、珍しく話を振ってきた。
「カイトは、何か 興味を引く物があるか」
無言で返答をしないでいると母親に怒られてしまった。
「カイト、お父様が聞いて来ているでしょ。答えなさい」
「どうか、されたのですか。お父様、僕に会話を振って来る事など 今迄に1度も無かった事ですが」
この子は、本当に何を考えている。家の中でも本しか読んでいないし、庭に出れば、草木としか遊んでいない。たまにイーナスと会話をしているみたいだが兄弟とも話をする事が少ないみたいだ。本当に俺の子供なのか?
「たまには、会話をしないか」
「僕に興味が無い事は知っております。無理をせず、お母様を喜ばせてください。大人しく座っておきます」
行商の数も少なく、商人の数もそれ程に存在を感じられない。それよりも冒険者や騎士の数が多い気がする。その様な世界なのだろう。俺には関係が無い。
何事も起きる事もなく、無事にフレイヤ伯爵領に到着して 我が家に着いた。俺の部屋がある訳も無く、イーナスと同室と言われた。当然、俺が床で姉がベットだと思いきや2人仲良く、ベットで寝ると姉が言ってきたのだが断った。せっかく女から離れて1人の時間も考えていたのだ。今更、女と同じベットに寝る積りもない。
元が倉庫として使われていた部屋だったお陰か、窓も存在していない薄暗い部屋で寝泊りをする事となるとは、思いもしなかったが それもまた新鮮で面白い。
「カイト君、灯りを付けて」
イーナスお姉さまに言われるがまま、魔法であかりを灯す。
「やはり、カイト君は魔法を使えるのね。どうやって使えるようになったの」
「何を言っているのですか。イーナスお姉さま、父の部屋の書斎に生活魔法の本があります。それを覚えれば誰でも簡単な魔法なら覚え
られます。ただし、灯火とコップ1杯の水とそよ風程度です。
イーナスお姉さまも読んだ事が無いのですか」
「お父様も お母様も そんな事は教えてもらっていないわよ。私は」
「僕が勝手にお父様の部屋の書斎から本を借りて読んでいるだけです」
「いつの間に字が読めるようになっていたの?」
「お姉さまが僕の為に絵本や物語を読んでくれましたので自然と覚えました。今は、薬草関連の本を読んでおります。
この屋敷にも有ると思いますから 探してみますか」
「もしかして 司祭様がお話しするみたいな分厚い本を読んだの」
「分厚い本かどうかは、分かりませんが読みました。自分を磨くために 生き抜くために
それに一部分だけを読んでも使えるようになると思います」
「本当に私にも使えるようになるかしら」
「問題が無いかと思います。如何いたしますか」
「直ぐ行きましょう。今すぐ行きましょう」
イーナスお姉さまは、魔法に興味があったが使い方を解らないでいたみたいだ。そして お父様の部屋の前までやってくると緊張をしているのか、中々 扉を叩かないでいると勝手に扉が開いてお母様が驚かせてしまった。
「うわっ! 驚いた。何か、御用でも」
「お母様、本を1冊 お借りしてもよろしいですか。イーナスお姉さまに教えて差し上げたい事がありまして」
「それは構わないけど ここにあなた方が読める本などなくてよ」
「無ければ出て行きます。確認だけでも指せて貰えませんか」
父親が心配になり、近寄ってくる。
「どうした。何かあったか。どうして ここにカイトとイーナスがいる。何か用か」
他人を見るような目でカイトを見詰めて
「本を1冊、お借りできませんか。無いようでしたら家に帰ってからに致します」
「カイトは本を読めるのか」
「イーナスお姉さまに教わりました。少し探させて下さい」
「あっ~あ~ それは構わないが 出来たらここで読んでいる処を見ていても構わないか。2人とも少し話をしてみたい」
「お忙しい、お父様の時間を僕達などに使う暇が無いかと思います。僕達などに使わなくてお母様の為に使ってやってください。
本を探させてもらいます」
「ちょ・ちょっと待て 今、蝋燭に火を付けてやる」
「問題ありません。自分で出来ます。いつもやっておりますので」
カイトが周りをキョロキョロしてから 扉の中に入ると自然と蝋燭に灯火が付いて部屋を明るくするのであった。カイトの行動に両親が驚いていると1冊の本を抱えて持ってきた。カイトが部屋を出ると風が吹き抜けて 部屋の明かりが消えるのであった。
「待て待て待て 今、何をした」
「生活魔法の灯火とそよ風です。不思議そうな顔をしておりますが どうかされましたか」
「カイトは、魔法を使えるのか。誰に教わった」
「僕は本を読んでいて 勝手に覚えましたがそれが 何か」
カイトとイーナスがソファーの椅子に腰かけるとテーブルに抱えている本を拡げるとページを捲って行く、そこでも
「カイト、何かを探しているのか」
「今の僕に2つの事をする能力を持ち合わせておりません。話しかけないでください」
面倒だと思って話を切り上げるのであった。実際は可能だ。
「カイト君、もしかして覚えているの 何処にあるかを」
「何度か、読み直しておりますので勝手に覚えてしまいました」
カイトの発言に両親が驚くのであった。そんな素振りも見せなかった為
私のカイトって もしかして天才かも
俺の息子は優秀かもしれないぞ。親バカぶりが爆発寸前の処で
「ここの文章です。
“ 転生神 ティラミスに願う。我に生活魔法を伝授させまとう。我が名は、イーナス・ゴアボイア ” と 言って見てください。多分、大丈夫かと思います。
ダメだったら 仕方がありません。全部読みましょう」
「えっえ~~ この本を1冊も~」
「大丈夫です。10数ページです」
それでも イーナスの頭がふら付く。が カイトに言われて
「 “ 転生神 ティラミスに願う。我に生活魔法を伝授させまとう。我が名は、イーナス・ゴアボイア ” 」
を 読み上げるとイーナス自身が光り輝き、生活魔法を覚えるのであった。その後、両親までもが生活魔法を覚える羽目になるとは思いも知れなかった。