2日目(2)
開いていただき、心から感謝いたします。
香織に取られていた視線をまた優くんに戻すと、眉間に皺を寄せてとても暑そうにしている。
そんな時優くんは、さっきの人と同様に下敷きを取り出したりなんかしなかった。
手で仰ぎ、それでは足りないと思ったのか襟部分を軽く掴みゆすった。
そして一言。
「…あっつ。」
「あぁ…」
クリティカルヒット。 やられた。
つい吐息が漏れたのを香織は聞き逃さなかった。
「どうした。ついに夏バテか?」
「いや…そうじゃなくて。」
否定して先程起きたことの一部始終を話す。
「暑い時って仰ぐじゃん。私たちってよく下敷きとかで仰いだり、服をバサバサやって仰ぐじゃん。でも優くんはね
さっき、手で仰いで、それでも無理だと思ったんだろうねきっとね、襟を持ってパタパタって。バサバサじゃない
の。パタパタなの。で、それで小さい声で一言。『あっつ』って!」
息を吸う間も惜しいほど早口で訴える私。
香織ならわかってくれる。
「さっき、少しでも菜緒に共感した私が馬鹿だったわ。」
冷めた口調でそう告げた香織。
もう姿が見えたくなってしまった優くん。
お昼時だからだろうか。より一層、暑さが厳しくなった気がした。