1日目(2)
開いていただき、誠にありがとうございます。
「………は?」
心の底から出たような低いトーンが香織の口から飛び出たけど、きっとこの考えは私にしか分からないのだからしょうがない。
もうダメだ、という声が聞こえたような気がしたけど、そんなことは他所に、計画を立てよう。
先ほども言ったが、基本的に干渉しないことが大切だ。
優くん自身の良さを最大限活かすことがこの計画の肝なのだ。
人の個性はそれぞれ違う。
それを活かしてこそ、いいキャラが生まれるってもんだ。個性切ってしまっては、元の子もない。
だから、干渉はしない、『導く』のだ。
彼の路線がブレそうな時、私が正しい方へ導く。
計画を立てると言っておいて、正直、どのような時に、どのように導けばいいのか分からない。
しかし、私には経験がある。
今まで、何作品ものアニメ、漫画、小説、etc…を見てきた。
そして、もっとこうすればいいのに、という案もいくつも持っている。
そうだ。
私はこれで、優くんを正しく導いてみせる。
〜 〜 〜
なんとなく今日は、いつにも増して僕の名前を聞く気がする。
それも、菜緒さんから。
席が離れていて会話の内容はよく分からないけど、少しソワソワする。
香織さんが呆れた顔をしているけど、僕の悪口ではないよね。
菜緒さんと初めて会ったのは小学一年生の時。街に住んでいた僕は、父親の転勤でこの地に引っ越してきた。
十六人という少ない人数に僕を入れて十七人。他のみんなは幼稚園からの友達らしくて、僕だけが孤立しているように感じていた。
そんな時、この十六人のみんなは僕にとても話しかけてくれた。
菜緒さんも例外ではなく、休み時間に一緒に遊んでくれた。
たまたま、菜緒さんやあと何人かは高校まで一緒になった。
この人たちがいるだけで、本当に心強い。
だから今、嫌われたくない。
何か嫌なことをしてしまっただろうか。
僕は、朝のホームルームが始まるまで、今までの、そして最近の自分の行動についてよく振り返った。