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ねこぐらし。~猫耳娘の転生生活~  作者: CANDY VOICE
第一章【ミケ、成長する】
13/39

13 『ねこぐらし』

 数日後、私たち三人いっしょにお休みの日がやってきました。


 お稽古もなし。付き添いもなし。見習い未満のお仕事もなし。なんにもしなくて良い日です。


 ちょっと前の私は毎日がそうでしたが、今となっては貴重な休日。今日ばかりは好きな場所で好きなことをしようと決めていました。


 訪れたのは猫鳴神社。以前と変わらず誰もいません。


 チラリと井戸を覗くと、今日は普通の水鏡になっていました。

 ニヤケ顔の私が、井戸の底から私を見上げています。


「ミケちゃん……ミぃ~ケちゃ~ん!」


 一緒に来たクロちゃんが、後ろからガバーっと抱き付いて来ました。


「ま~た覗き見してる。今日は何が見えるの?」

「私とクロちゃんと……ペルシャちゃん!」


 クロちゃんの背中に、ペルシャちゃんがガバーっ。

 流石に二人は重たいです。

 ぶんぶん身体をよじって逃げました。


「ジャパニーズ、ジンジャー! ペルシャ、ここ知らなかったデス!」


 あっちこっちにぴょんぴょん飛び跳ね、指を四角に構えて鳥居や本殿を見るペルシャちゃん。


 カメラでパシャパシャやるテンションでしょうか。誰も持ってないのが悔やまれます。


「ペルシャちゃん、病み上がりなんだから、あんまり動いちゃダメだよ?」

「ハーイ、でも、わびさび? ウツクシ、デス!」


 心配するクロちゃんに、えせカタコトで返すペルシャちゃん。

 どうやら、「キャラ」は続けるようです。


 これもペルシャちゃんなりの努力。

 否定したり茶々を入れたりするつもりはありません。


 でも、私だけが知ってることがある……この状況はちょっと優越感アリで、悪戯心がウズウズしてしまうのでした。


「ミケちゃん、ドーしたデスカ?」

「う~ん? なんでもないデース」


 ニヤニヤ見てたのを気付かれたのでしょう、ペルシャちゃんがズイズイ近寄ってきます。


 すかさずクロちゃんの後ろに退避!


「なに? 二人とも」

「なんでもないよ? ね? ね?」

「むぅっ! むぅっ!」


 クロちゃんを挟んで右へ左へ追いかけっこ。


 こっそり人差し指を唇に当て、ペルシャちゃんだけに見せました。

 眉を寄せ、ぷっくり顔を返してくるペルシャちゃん。かわいい。


「まあ、仲良くなってくれたなら、ひと安心だよ」

「わきゃぁっ!」


 クロちゃんがひょいと身をかわし、私の背中をぽんっと押します。


 よろめいた勢いで、ペルシャちゃんに抱擁ハグ

 せっかくなので、そのままぎゅぅぅ~~っと抱きしめました。


「ペルシャちゃんだ~い好き!」

「Oh……それはLove? 「まごころ」デス?」

「その通りぃぃ~~」


 ちょっと語弊があるかもしれませんが、今はもうそれでいいです。


 スベスベのほっぺに頬擦り(スリスリ)すると、落ち付けと言わんばかりに背中をぽんぽんされました。


 さらに猫耳をふぅ~され、「あひゃん」とその場に膝をつきます。


「ミケちゃんはチョロいなぁ」


 くすくす笑ったのはクロちゃん。ふぅ~の方はこっちが犯人っぽいです。


「チョロい、ペルシャ知らないデス」

「う~ん……ま、かわいいって意味かな?」

「ミケちゃん、チョロ~い」


 ペルシャちゃんもくすくす笑いながら、ほっぺをむにぃとしてきます。


 これは審議……意味が分かっててやっているのでは?

 あと、私ってそんなにチョロい?


「ほら、早く立たないと、着物汚れるよ?」

「分かってるぅ……ペルシャちゃんやめてよぉ……あぅぅ……」

「チョロいチョロいデース」


 意味深な笑顔のまま、ほっぺむにむにを続けるペルシャちゃん。


 これはおそらく、秘密を守れという無言の圧力でしょう。

 ヒシヒシと感じたので、「んっ! んっ!」と首を縦に降りました。

 伝わったのか、私のほっぺは解放されました。


 ようやく立ち上がり、桜の花びらを払い落とします。


 見上げると大きな桜の木。

 屋根のように広がる枝には、花びらがまだら模様のように残っていました。


「この前の雨で、けっこー散っちゃったね」

「でも、まだ残ってる。それにほら、地面もキレイ」


 桜の花びらと白詰草クローバーの絨毯に、私たちは立っていました。


 今日はちょっと遅めのお花見。


 厨房から拝借して来たお弁当が、井戸の側に置かれています。


「まだお昼には早いし……何する?」

「カードゲーム、談話室から持ってきまシタ。頭使うゲーム、好きデス」

「ペルシャちゃん、それはメンコっていうの……残念だけど、頭は使わないよ?」

「この足元じゃ、遊べそうにないな……」

「ザンネン、持ってきた、まちがいデシタ」

「あ、でも被ってる札多いし、裏面一緒だし、ババ抜きとかできるかも?」

「ミケちゃん、これ猫鳴館のお姉さまたちが映ってるメンコだよ?」

「しまった! ババにするお姉さまに失礼な感じに!」

「ババ、知ってます。(Horse)デス。お顔が似てるお姉さま、ババにシマス」

「似てるけどちょっと違うし選んじゃダメぇー!」


 とりあえず、井戸の側に御座を広げて、三人座ってきゃっきゃっとおしゃべりしました。


 女の子が三人寄らば、それはもう止まりません。

 そのうちお腹が空いたので、お弁当をつつきながらまたおしゃべり。


 ひらひらと控えめに桜が舞う中、おしゃべりの花は日が暮れるまで咲き乱れました。


 しゃべり続けて疲れてきたので、クロちゃんのふとももに頭をぽてん。

 すると、クロちゃんがペルシャちゃんのふとももに頭をぽてん。

 最後にペルシャちゃんがくすりと笑い、私のふとももに頭をぽてん。


 三人で円を描いて寝転んだまま、大笑いました。

 それはそれは思いっきり。


 生まれてからも、死んでからも、初めてと言い切れるくらい。

 ケラケラ。カラカラ。

 お腹の底から笑いました。


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