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ねこぐらし。~猫耳娘の転生生活~  作者: CANDY VOICE
第一章【ミケ、成長する】
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10 『炸裂!? ミケ式なかよし術!』

 雨が降ったその日、クロちゃんはお姉さまの付き添いに、猫神様は別のお仕事に行ってしまい、私とペルシャちゃんの二人でお稽古を行うことになりました。


「ヨロシク、おねがいシマース」

「こ、こちらこそ……」


 何やら気まずい雰囲気に包まれるお稽古室。

 窓を叩く雨音がやけに大きく聞こえます。


 とりあえず、二人向かい合って座り、手をついて挨拶しました。


「ふ、ふつつかものですが! よろしくおねがいします!」

「フフツツカモノ、言葉のイミ、知らないデス」

「え~っと……いろんなことが下手な人? みたいな意味です」

「ならペルシャ、もっとフフツツカモノデス。ミケちゃんよりオケーコ、いっぱいしてマス、でも、ミケちゃんから教えてもらってマス。オオフフツツカモノデス」


 あいかわらずのペルシャちゃん。


 態度がツンツン。言葉がチクチク。

 視線もあからさまに冷ややかです。


 初対面でのこともありますが……三人で一番成長してない上、最低限のお稽古しかしてない私を快く思っていないのでしょう。


 クロちゃんや猫神様がいる時はこんなのじゃないのに……怖い、怖いよぉ……でも!


「今日は二人でがんばろうね! クロちゃんや猫神様をびっくりさせちゃお!」


 めげないもん。


 ペルシャちゃんとなかよくなるって、クロちゃんと約束しましたから。


 今までの私とは違うってことを、見せつけてやりたくも思っているのですがそんな強く言い切るとちょっと強すぎるかなぁとも思うのでまずは少しずつ一歩ずつが最適な行動なのではないでしょうか?


 弱気が元気! がんばれ強気!


「とりあえず、何から始めよっか?」

「耳かき、オケーコしたいデス」

「うん分かった! 練習台になるね!」


 いつも耳かきの練習をするときは、私とクロちゃん、猫神様とペルシャちゃんの組み合わせ。または私と猫神様、クロちゃんとペルシャちゃんの組み合わせで……


 つまり、私とペルシャちゃんが二人組になることはないのでした。


 でも今日はふたりっきり。

 逃げ場のない危機ピンチにして、好機チャンスです。


 おずおずと、ペルシャちゃんのふとももに、頭をぽてんっ。


 なんと細くて柔らかいお脚……それにとってもあったかいです。


「ペルシャ、ずっと思ってること、ありマス」

「うん、どうしたの?」

「お客様の耳、猫耳ちがいマス。猫耳でのオケーコ、イミナシデス」

「ああ、確かに言われてみれば……」


 盲点でした。


 そういえば、お稽古室の隅にはマネキン(たぶん練習用?)があるのですが、そちらは使ったことがありません。


「ペルシャは、使ったことありマス。お姉さまが、使わせてくれまシタ」

「そ、そうなんだ……さすがだね!」

「アッチ、使うデス。ペルシャとミケちゃんダケ。叱られるは、ナイデス」

「あうっ」


 ペルシャちゃんが急に立ち上がったので、畳に頭をコツンしました。


「待ってペルシャちゃん、あのねあのね!」

「ハイ、ナンデス?」


 ふらりと振り返ったペルシャちゃん。お顔が少し赤いです。


 ひょっとして怒ってる?

 私と触れ合うのが、そんなにイヤだったのでしょうか。


 けれど私の中には、猫神様の言葉が強く強く蘇っていました。


「まずは、まごころを込める練習……なんじゃないかなぁ……って、思う……」


 猫神様は言いました。


 まごころをつくして想い、願い、お祈りすることが、猫娘にとって一番の仕事だと。


 だから人形じゃなくて、お互いを練習台にしていたのだと思うのです。技術じゃなくて、心を込めることが、まず先だと。猫神様はそう考えているはずです。


「二人でしよ? ね?」


 私は膝を畳み、耳かきをかまえて、ポンポンとふとももを叩きました。


 ペルシャちゃんは人形の前で立ったまま、じーっと私を見下ろします。


「マゴコロ、ペルシャ、知らない言葉です」

「うんと、なんだろ……」


 いざ説明するとなると困ったものです。


 まごころって、何だろう?

 相手のことを考えて、どうしてあげたらいいのか考えること?


 猫神様のおもてなしを見た後では、もっと大きな意味と力があるように思えてしまいます。


 う~んと頭を抱え、言葉を探しました。


「…………愛……らぶ?」


 悩み悩んだあげく、手でハートの形を作って言いました。


 顔が熱い。真っ赤になっているのが分かる……。


 ペルシャちゃんの小さくてかわいいお顔もまた、真っ赤になっていました。


「マゴコロは、Love?」

「ちょっと自信ないけど、たぶんきっと、そうなんじゃないかな? と思ったり?」

「Love……マゴコロ……」


 ほっぺに手を当て、斜め下に視線を投げて、ふらり、ふらり。


 身体を揺らして熟考した後、ペルシャちゃんは畳に四つん這いになりました。


 そのまま私の方に這ってきて、ふとももの上にぽてん。

 頭を置いてくれたのでした。


 ペルシャちゃんから! 私に触れてくれた!


 感動で身体が熱くなります。

 それ以上にペルシャちゃんの頭が熱い。


 そこでようやく気付き、お互いのおでこに手を当てました。


 ペルシャちゃん、すごい熱!


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