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7人の魔女  作者: みぎきき
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1人目の魔女

「あの…もしかして狼血の狩人様ですか?」


狼血の狩人

名乗らずにいたら周りにそう呼ばれるようになった。

声をかけられて後ろを振り向くと少女がおり、

私が黙って狩人証を見せると少女の表情が明るくなる。


「お願いします‼︎村の近くに出る狼を狩ってください‼︎」


少女は私のローブを掴む。

その顔は今にも泣きそうだった。


「どこ…」

「?」

「私が狩る。案内して」




_________




村に向かうため、村の近くまで行くと言う馬車に少女と共に乗せてもらった。


「あの…本当にありがとうございます」


この子の村から私がいた町までは歩いて3日ほどかかる。

狼や盗賊に襲われる可能性があるのに、1人で来るなんて余程危険な状態なのだろうか?


「依頼は出したの?」

「え…は、はい。村長が3ヶ月程前に出しました。…すぐに狩人様は来てくださいました。でも…」

「死んだ?」

「…いえ、分かりません。でも戻って来ないんです」


死んだか逃げたか…どちらもあり得るな。


「その後にちょうど村を訪れた狩人様にお願いしたんですがその方も…

私達も色々考えて、村で討伐隊遠組み狩に行きましたが誰一人戻って来ませんでした」

「それであの町に?」

「はい。あの町には教会があるので、狩人様を探して直接お願いしていました。

でも、その…どの狩人様も報酬がとても払える額では無くて…今回は私個人でお願いしているので、今更ですが払える額は少ないです」


狩人への依頼は基本教会を通す。

だから余程の事が無ければ依頼金もそこまで高く無いが、個人に直接依頼するなら話は別だ。

中には物凄い額を請求する狩人もいると言う。

まぁ命をかけているのだから誰も文句は言えないだろう。


「お金は別にいい。でも…よく3ヶ月もその村耐えてる」


町ならともかく村で狼が出て数ヶ月も耐えている所は滅多にない。

大体は一度狼が出ると次の夜には村を襲われ一晩で食い荒らされるが、稀にこの少女の村のような事が起きる時がある。


「わざと人を喰わせているでしょ?」


私がそう言うと少女は手を硬く握り、微かに震える。


前もそうやって狼から村を守っていた所があった。

だが、狼は人を喰らった分だけ強くなる。

そして喰う量も増えて、最後は村を襲う。

最初の狩人2人が死んだか逃げたかどちらにせよ元々それなりに強い狼なのだろう。

村の討伐隊と生贄の分を考えれば相当人を喰っている。

今回の狩は簡単にはいかないだろう。


「…だって、だって村長がそうするしか無いって‼︎だからおばあちゃんも狼に…

人も少なくなって、でも狼は求める量が増えて次は弟が選ばれたの。弟は足が不自由だけど、これでみんなのためになるって‼︎

お父さんも帰って来なくて…おばあちゃんもいなくなって、弟までいなくなったら私一人になっちゃう」


少女はボロボロと涙を零す。


いっそのこと村を捨てて逃げたら良いと感じるが、それが安全かと問われたらそうとも言えない。


村から町に移り住むのはお金がかかるし、他の村に移り住むにしても受け入れてくれる所は少ない。誰しも皆自分の事で精一杯だ。

最近は貧困層が増えて盗賊になるものが多く、危険なものは狼だけでは無い。

本当に生きにくい世の中だ。




__________




村に着くと村人達に歓迎された。


年寄りはほとんどいなくなっており、女子供がどちらかと言えば多い。

この村も限界が近いようだ。


空見上げると日は傾いており、あと1時間ほどで日は沈むだろう。


「日が沈むまでお休みになりますか?」

「いい。森へ入る」

「まだ日は沈んでいませんよ?」


狼は日があるうちは絶対に姿を見せない。

太陽の光を浴びると燃えて死んでしまうからだ。


それなら昼間のうちに狼を狩った方が良いのでは?と思われがちだがそれは違う。

狼は昼間は洞窟などに隠れているため戦う場所が狭くなる。猟銃で戦う狩人はすぐに距離を詰められ殺されるだろう。

それに加えて入口から中へと入っていけば狩人が狼を見つけるより早く、狼に存在がバレてしまう。

他にも理由があるが、つまり狩人にとっては不利しか無い。


まぁ私は近接戦が主流だから関係ないのだが。



「狩人様‼︎」


振り返ると少女が私の元まで走ってきてハンカチを差し出した。


「どうかお気をつけて」


受け取った白いハンカチには少し不恰好な百合が刺繍されていた。

少女を見ると少女は申し訳なさそうに俯く。


「見た目は良くないけどちゃんと教会で祈りを捧げてきました。…だから、その…無事に帰って来てください」


この国では白百合は月の女神の加護を持っているとされており、この少女のようにハンカチなどに刺繍してお守りにする習慣がある。


「ありがとう」


私は少女の頭を軽く撫でて貰ったハンカチをしまい、森へ向かった。





__________





少女side


狼血の狩人


赤いローブに狼の頭蓋骨の面をつけた狩人様。

近接戦を主とするその戦い方はまるで血に濡れた狼のようだと言われているらしい。


名乗らず顔を見せず言葉も少ない。

謎が多い事からとても不気味がられているけど、狼を狩らせたら右に出る者はいないと言われるほど強い狩人みたい。


あの町で強い狩人様を尋ねていた時に教えてもらった。まさか実際に目の前に現れるとは思ってなかったけど。


第一印象はとても怖かった。


狼の頭蓋骨のお面が不気味だし、最低限の事しか話さない。

でもあの狩人様はとても優しい。

だってお金がない私の依頼を受けてくれた。

それにハンカチを渡した時の"ありがとう"と言った声と私の頭を撫でた手がとても優しくて、お母さんやおばあちゃんを思い出す。


だからどうかお願いします。

月の女神様。

狩人様が無事に帰れるようにお護りください。


読んでくださりありがとうございます。

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