パッピーエンドへ
薄暗い部屋の真ん中に大きな長テーブルが置かれ、上座に座る金髪の少女は本を読みながらその長い髪を弄りティーカップを傾けた。
「ねぇ、帽子屋」
少女に帽子屋と呼ばれた男は襟を立てシルクハットを深く被り顔が見えない。
「なんだい?」
口からティーカップを離し机に置くと帽子屋は少女を見た。
「貴方を招待した覚えは無いのだけれど」
「招待はされてないねぇ…フィッシュフットマン紅茶のおかわりもらってもいいかい?」
帽子屋が声をかけると頭が魚で執事の服を着た者が帽子屋のティーカップに紅茶を注いだ。
「…帽子屋」
「だってしょうがないじゃあないか。僕の茶会にはいつも頭のおかしい三月ウサギとずっと寝ている眠りネズミしか来ないんだ。それにキミだっていつも1人だとつまらないだろ?」
すると本を読み一度も帽子屋を見なかった少女は顔を上げ帽子屋を見た。
「そうでもないわ。だってとっても面白い事思いついたんだもの」
「面白い事?それはとても気になるなぁ…もしかしてその本に関係あるのかい?」
帽子屋は少女が読んでいる本を指さした。
「キミそういう本あまり読まないじゃないか」
「そうね。だってこんな物語つまらないもの」
少女は本をパラパラと捲る。
「そうだね。どれも悲しい物語ばかりだ」
蛙の頭で執事の服を着た者が少女の冷めた紅茶を新しいものに変える。
「だから私決めたの」
少女は温かい紅茶を一口飲む。
「こんな物語変えてしまおうって。そうしたらきっと楽しくなる…そう思わない?」
「へぇ…キミが変えるのかい?」
「私じゃないわ。だって私は読むことが好きだから。私は少し手を貸してあげるだけ」
少女は本を帽子屋に渡す。
帽子屋がその本を手に取ると表紙には炎に包まれた狼が描かれていた。
「てことで私少し出かけてくるわ」
少女は立ち上がるとその手にはいつのまにか大きな鎌を持ち、地面を軽く叩いた。
するとそこには穴のようなものが現れる。
「それじゃあ行ってくるわ」
そして少女は底の見えない穴に飛び込んで行った。
帽子屋はあっという間に消えた少女を見送るとまた紅茶を飲み始める。
「気をつけてね僕達の
_______________"アリス"」
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