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第八話 元・最高軍行政官最終奥儀。敗者は勝者の糧と成れ―――『氣刃投射』

第八話 元・最高軍行政官最終奥儀。敗者は勝者の糧と成れ―――『氣刃投射(サイコバリスタ)


・・・・・・

・・・

「―――ということだ。そんなことも知らねぇのか、日之民は蛮族だな、おいっ」


///


 つらつらつら・・・

「・・・」

 つまりルメリア人は名前の接尾の慣習だよ。


///


「ラルグス=オヴァティオス、潔く縛につくことだ・・・!!」

「俺を捕えるだと? 俺だって『イデアル』に入ってただ遊んでたわけじゃねぇぞッケントゥスッ!! よくも、よくも・・・俺の弟分のカイトゥスをッ!!」

 俺のことを『ケントゥス』!? 魁斗のことを『カイトゥス』だと!?

「・・・・・・・・」


「捕えられるもんなら捕えてみろよッ!! 見せてやるっケントゥス・・・俺の必殺技を、な・・・!!」

 フシュっ―――、っとその直後、ラルグスの全身から淡く輝くアニムスが噴き出す。その淡いアニムスは霧・・・いや光輝く光の靄のように視える、そのようなアニムスだ。それがラルグスの頭上高くに、漂うように光の雲のように立ち込めていく―――

「ほう―――」

「いいぜっ♪ てめぇがそこまで俺に言うのなら見せてやるぜっ!!はははっ♪」


「っつ」

 ラルグスの台詞、行動―――その全ての言動が。俺が地球に逆転移させた魁斗とダブって見えたのだ。つまり、それほどまでに魁斗に影響を与えた存在なのだな、ラルグスという男は・・・!!幼き日の、まだ子どもだった魁斗に、このラルグスは絶対的な、おそろく『カッコイイ』存在だったのだろうな。

 だが、俺はそれすらも超越()えてやろう・・・!!


「!!」

 このラルグスが全身から放出した光の雲のような不定形のアニムスの中で、まるで雲の中で氷の粒ができるのと同じように、アニムスが凝縮していき―――ラルグス貴公よ、お主はなんというものを造り出すのだッ!!

「はははははっ!!これでも余裕でいられるか?なぁケントゥス」

 ぴしっ、っとゆらゆらと滞空する淡く輝く氣刃の群れ―――

「淡く輝く刃の集合体だと・・・ッ!?」

 ラルグスの頭上に拡がるのは、ラルグスの淡く光る氣で形成された氣刃の群れだ。そのどれもが、剣の鋩や鎗の鋩、または鏃のような形状をしている。そのような氣の刃達だ。その全ての淡く光る氣の刃の鋩が向いているのは俺だ。

「だが―――」

 にやりっ、っと俺は口角を吊り上げたのだ。それは、そのラルグスの放とうとしている技は、俺が魁斗との戦いの中で見たものと同じなのだ・・・―――。



「いくぜッ―――氣刃投射(サイコバリスタ)Psӯcho ballista)ッ!!」

「・・・・・・・・・」

 様々な武器の形状を模した混合刃といったところだろうか。あの氣刃はまるで直剣の鋩を、あちらは鎗の鋩を、ふむ、あちらが斧であるな―――。

「死ねッケントゥスッ!!」

「・・・・・・」

 淡く光る武器達が俺を目がけて飛んでくる。しかし、俺には―――それらはただの自身刀の的にしか思えぬのだよ、ラルグス・・・!!


・・・・・・


「け、健太・・・ッ逃げろ健太ッ!!」

「健太くんが・・・敦司・・・―――」

「健太が串刺しに・・・敦司どうしようッ!! と、とにかく逃げて健太―――え?」

「お、おい。天音、美咲・・・見てみろよ、・・・健太を」

「う、うそ・・・、健太ってば・・・ほんとに―――」

・・・・・・


 風に乗って流れてくるように、俺の友らの激しく、ときに静かなその声が俺の耳に聴こえてくるのだ。敦司殿、天音殿、美咲殿―――俺は、敗けはせぬよ。


 飛来する全ての氣刃を、俺は身を捻り、避け―――、躱し―――

「・・・・・・」

 そして、俺は終始無言でラルグスを見つめる。

「・・・・・・・・・」


「バ、バカな・・・!! なんで・・・なんでそんな掠り傷一つ・・・服にすら付いてねぇなんて・・・っ!! そ、そんなことありえるかよ!!」

「覚悟せよ、ラルグス」

 左手は鞘、右手は柄に、腰を落として俺は抜刀式で刀を構え―――

「うわぁあああああッ嘘だッ!! これはまやかしだッまぼろしだッ!! 敗者は勝者の糧となれッ・・・氣舞刃Psӯcho mūcrōnis ballātiōッ!!」

フシュっ―――、

「・・・」

 ラルグスの身体からフシュっとその氣が放出される。それはやがて、俺を覆うように―――見上げれば俺の頭上に、まるで全天を覆うような半球形となっていく。オーロラのようにときに淡い光を放ちながら、それはそのラルグスの淡く輝く靄のような氣は―――、

「なるほど―――・・・」

 頭上から俺を覆うようにゆらゆらと漂い―――、ぴしっ―――びききっ―――、という不協和音を立てて、まるで水溶液の中に溶けている、なにがしかの塩の結晶が形成されていくのを、早回しで見ているかのように―――、ラルグス自身がその心身から放出した淡く輝く氣の『雲』の中で氣刃が次々と形成―――成長していく―――。

「全方位からの舞う氣刃だッてめぇに避けられるかよっ!! さっさと死ねよッケントゥスッ!!」

 ごわっ、っとその直後だ。俺に死ねだと?ラルグスがそう叫んだ瞬間に、

「―――」

 地に立つ俺を目がけて、前から後ろから左から右から空から、半球状に氣刃が迫り、また降ってくる。しかし、その発射速度は遅い。そして・・・おそらくその氣刃の強度は脆い。これであるならば、刀の鋩を用いた一点集中で容易くこの氣刃の包囲から逃れられる。

 ざっ―――っと俺は抜刀式の構えを解き、次なる小剱流の構えをとる。

「小剱流霞ノ構真刃牙撃(しんじんがげき)・・・!!」

 ダッっと俺は地を蹴り、目指すは視線の先―――その氣刃の弾幕の先に立っているであろうラルグスだ。バババババッガガガガガガっと俺は、己が進むべき道の先に邪魔な、迫りくる氣刃の群れに対してその刀を持つ手、腕を縦横無尽に動かす。刀の斬と刺だけでラルグスの氣刃を切り、薙ぎ払い、壊しながら、苦もなくその武氣の弾幕を蹴散らしてその武氣が覆う球の外へと抜け出すのだ。



「健太・・・やっぱお前凄ぇよ」


「―――」

 ラルグスの氣刃の弾幕の中―――その外から敦司殿の声が俺の耳に風に乗るかのように届く。だが俺は決して凄いなどと呼ばれる人間ではない。・・・俺はまだまだ修行の身なのだ―――。バババババッガガガガガガッ―――俺は縦横無尽に刀を揮い―――、

 ピキ―――バギ―――ッ、バンッ!!っと俺は刀の鋩を以て、閉塞する氣刃の箱庭から抜け出し―――ダダダっ―――すたっ、と・・・。


「う・・・ウソだろ・・・?てめぇ―――・・・」


 俺は眼前のラルグスを見つめた。きんっ―――、俺は刀を鞘に納め、そのあとは斜に構え・・・すぅ――っ、っと俺は小剱流剣術、抜刀式の構えを取る。

「小剱流抜刀式眉間崩し―――」

 そう言って、俺は相対するラルグスに聞かせるべく、敢えてそれを口に出すのだ。

「ヒィッ眉間だと!? お、お願いだ!! こ、殺さないでくれッケントゥスッ!!」

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