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血の涙


「ゆっきー……どうしたの? 何があったの? そういえば悟のメッセージで失恋って」


「……ううん、失恋……してない、失ってなんていない」


「ゆっきー」


「なんか……ごめんね……偉そうな事言って……」

 言えた立場でない事は重々承知、でもこんな思いは……自分だけにして欲しい。

 大好きな桜ちゃんに、友達にそんな思いは、こんな思いはして欲しくない。

 

「ううん、そんな事……」


「ずっと一緒にいればいるほどわからなくなっちゃう、空気のような存在、でもなくなって初めて気が付くの……空気がどれだけ大切で必要かって事が」


「……うん」


「だから桜ちゃんも考えてみて……悟君が自分にとって本当に弟なのかって……」

 

「…………うん……わかった」


「うん……じゃあ私帰るね」


「え? あ、うん……もう遅いし悟に送らせるよ」


「ううん、大丈夫、人通りの多い所通るから、だから桜ちゃんは悟君とちゃんと話して、ね?」


「……うん……そうだね……うん」

 桜ちゃんは一度目を閉じ考えてから私を見て笑った。その可愛らしい笑顔を見て悟君も彼女の事を好きになったのだろうか? 普段見せた事の無い彼女の満面の笑みを見て私も彼女の事が益々好きになった。


 頑張って……桜ちゃん……そしていつか私のお兄ちゃんと4人でどこかに遊びに行きたいね、行けたらいいねって心の中でそう呟いて……悟君の家を後にした。


 夕方前フラフラと家を飛び出した時はまだ日が高かったが、今辺りはすっかり暗くなっていた。

 繁華街、大通りと少し遠回りをして、家にたどり着いた時にはだいぶ遅い時間。

 あれからお兄ちゃんと星空さんは一体どうなったのだろうか……そんな不安と共に私はこれからどうすれば良いのか、そんな事を考えながら歩いていた。

 

 思えば自分の事は自分でやるってお兄ちゃんに宣言したあの時から、こうなる事は予想していたのかも知れない。


 自分の事だけ考える……私はそう決めた。

 もちろん恋、恋愛に関してだけど。

 好きになって貰えそうだからその人を好きになるわけじゃない……そういう意味として桜ちゃんに……そして自分自身にそう言い聞かせた。

 仮に……もし仮に……お兄ちゃんが誰かを好きになって、そして誰かと結婚したとしても……私は諦めないって……ずっと好きでいるって……そう決めた。

 それがお兄ちゃんにとって幸せなのか……それはわからないけど……。

 でも私にとっては……幸せな事……好きな人をずっと思い続けられる……好きな人の側にいられる……それは最高に幸せな事。


 それは……たとえお兄ちゃんと誰かが仲睦まじくしていたとしても……だ。


 自分の家の玄関の前。

 外から家の中を伺うも明かりは点いていない。

 静まりかえった家……人の気配を感じない……そういえば私……鍵を持っていなかった。

 覚悟は決めたのだと……私は恐る恐る呼び鈴を鳴らす──も反応がない。

 もしかしたら……寝ている? まさか星空さんの家に? ううん、そんな事する筈ない……じゃあ……私を探している?


 とりあえずどこからか入れないか考えるも、お兄ちゃんは私がいるからと、昔から防犯意識が高く窓なんか開いてる筈も無い。


「困ったな、スマホさえあれば」

 そう言いつつ何気なく玄関の扉に手をかけた……。


「え? 開いてる?」

 鍵がかかっていなかった……中にいる? でも……お兄ちゃんはいつも家にいる時でも必ず施錠している。

 掛け忘れなんて考えられない。

 何かあったのか?! 私は慌てて家の中に入った。


「え?」

 玄関の明かりを点けた私はあまりの驚きに悲鳴をあげる事さえ出来なかった。


 廊下から玄関には……赤い液体が……恐らく人の血液らしい物がポタポタと落ちていた。

 

「な、何? なにこれ……」

 何があったのか……これは誰の物なのか? まさか中で……。

 廊下の明かりを点け私はその血と思われる物を追った。


「コップ……が」

 リビングの前に割れたコップが散乱していた……そしてその血はそこから始まっている。

 一体何があったのか? 血の気が引くとはこのこととばかりに私は逆に冷静になって考える……。


 星空さんがコップで? いや……違う……これは私が今日用意したコップ……そしてあの時落として……割れた……つまり、誰かがこれで怪我を……。


「お兄ちゃんが……ああああ」

 お兄ちゃんが私を追って来なかった理由がわかった……つまりは……。


 とりあえずスマホを、私は自分の部屋に戻ろうと一度玄関に戻り2階に上がろうとしたその時外から騒がしい声が聞こえた。


「……いかなきゃ、……ゆきが…………なせ……」


「……ちゃん……そんな足…………大丈夫…………から」


「……お兄ちゃん?」

 私はその声を聞いて裸足で外に飛び出すと、家の前にタクシーが停車していて、その前で恵さんとお兄ちゃんが言い争いをしていた。


「そんな足で探しに行けるわけないって何度言ったら!」

「雪がいなくなったんだぞ! 足の一本や二本どうって事ない!」

「入院しなくちゃいけない状態なのに出来るわけないじゃない!」 

「う、うるさいそんな事知るか!」

 目の前にお兄ちゃんが……恵さんに抑えられ、もがくお兄ちゃんが、片足を引きずってるお兄ちゃんが……。


「お、お兄……ちゃん……」


「…………ゆ、雪」


「……雪ちゃん! あ、あんたは!」

 お兄ちゃんは私を見てびっくりしていた……恵さんは私を見て怒っていた。

 私は……どんな顔をしていたのだろうか?


「ゆ、ゆきいいいいいいい!」

 恵さんの腕が緩む、それと同時にお兄ちゃんが私に向かって突進してくる。


 叩かれるのかな、初めてだなあ……痛いかな? でも仕方ないよね、私……悪い子だもんね……覚悟は決めていると、私は冷静に……目を閉じた。


「ゆき、ゆきいいいいいいい」

 顔の辺りに衝撃が走るが……あれ? 痛くない……私はそっと目を開けた……。


「ゆき、ごめん、ごめん」

 お兄ちゃんは私の頭を泣きながら優しく抱き締めていた……。

 何で謝るの? 悪いのは私なのに……何で?

 

 そう思うもお兄ちゃんはただただ私の名前を叫びながら、泣きながら私を抱き締めていた。


 だから泣かないで……怒って……お願い……怒ってくれないと……叱ってくれないと……わ、わたし……わたしも……。


「う、うぐ、うえええええ、うえええええええん、ごめんなざああい、おにいじゃん、ごべ、ごべんなざああああいいい」

 お兄ちゃんに優しく抱き締められ、私もわんわんと泣き出してしまう。

 怒って貰いたかった、今回ばかりは優しくして欲しくなかった。


 これじゃ私……子供になっちゃう……またお兄ちゃんの子供になっちゃう、これじゃいつまで経っても大人になれない……。

 ちゃんと覚悟を決めたのに……また振り出しに戻っちゃう。


「ごべんなざああああいいいぃぃ」

 これじゃ……子供の頃に……もっと小さな泣き虫だった子供の頃に……また……お兄ちゃんの子供に……戻っちゃうよおぉぉぉぉ……。




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     新作!         
  妹と離婚するにはどうすれば良いのだろうか?          
  宜しくお願いします。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
― 新着の感想 ―
[良い点] この場ではこれが良いと思いました。大事なものが無事に帰ってきたらこうなるよ(T . T) この後が大事!アホなことした娘(話も聞かず誤解して、ほとんど知らない男の家に上がり込んで貞操の危機…
[一言] まあ、兄からすると、自分が怒るというのも筋違いだろうしなあ。恵さんぐらいしか、怒ってくれる人いないわなあ。
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