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はしゃぐ妹、落ち込む俺


 そこから俺は呆然としていた。

 まさに脱け殻状態……。

 

 いや、勿論旅行はなんとか続けた。

 

 妹に感付かれ無いように、俺はいつもの自分を演じた。

 

 初日一緒に風呂には入った……が、当たり前だが何事もなく風呂から出て、これまた当たり前なんだが、俺達は別々のベットで就寝した。


 そして翌日は、定番の箱根観光コース、大涌谷で黒玉子食べ、芦ノ湖へ行き、海賊船に乗り、箱根の関所見物をし、旧街道を歩いた。


 妹は終始はしゃぎ回り、俺はそれをじっと見つめ、妹の姿を両目に焼き付けていた。


 これが最後になるかも知れない……から。


 その後、昨日とはまた違う洋風な高級ホテルに泊まる。


 綺麗な部屋、綺麗なベット、昨日と同様にホテルでも妹は、はしゃぎ回る。

 まるで子供の時の様に、そう演じているかの様に……。


 そう……妹もわかっているのかも知れない。

 これが最初で最後の二人きりの家族旅行だと言う事を……。


 妹は、もう高校生、自分の事は自分でやりますと昨日宣言した。つまりそれは親離れならぬ兄離れすると言っている事と同意。


 いつかはそうなるって……思っていたけど、こんなに早くその時が来るとは思っていなかった。


 俺達は少し部屋で休み、夕方ホテルのレストランで二人きりのディナー、今日はフレンチのフルコースで妹のお祝いをする。


 昨日は卒業祝い、今日は高校合格祝い。


 妹は県内トップの公立に合格していた。

 頭の出来も、顔の造りも、スタイルも何もかも完璧な妹……俺とは違い、人付き合いも良く友達もかなり多くいる様だ。


 完璧な妹から兄離れを宣言され、本来なら……ホッとする瞬間なのではないか?

 

 あの親父が死んだ直後……こいつを、妹を育てる不安、未成年の状態で兄妹二人取り残されたあの恐怖。

 ニートで不登校でコミュ症で引きこもりの俺……。

 親父はそんな俺に、俺と妹に、家と保険金、そこそこの蓄え、そして……俺を、俺達を陰で見守ってくれた親父の親友を……残してくれた。

 

 女にだらしなく、ネグレクト寸前の子育て……毎晩飲み歩き、ろくに家にも帰って来なかった親父。

 

 その親父が俺に一つだけ宝物をくれた。


 それが雪、それが俺の妹……。


 その宝物を……俺は手離さなくてはいけない……ずっと一緒にはいられないのだから……。

 ずっと一緒には……。


「お兄ちゃん? どうかした?」


「え? いや、ちょっと……酔ったみたい」


「あーー、そうだね、ちょっと飲みすぎてるよ」

 料理と一緒にワインを頼み、ボトルを、ほぼ1本開けてしまった。

 昨日はビール2杯で結構回ったのに、今は全然酔っていない。

 いや、酔っているのかも知れないが、そんな感覚が麻痺してしまう程、俺は落ち込んでいた。


「後デザートで終わりだから、お水一杯飲んでね~~」


「ああ……」

 終わり……そう……もう終わってしまう……楽しい旅が、妹との最初で最後の家族旅行が……終わってしまう。

 美味しそうにケーキを頬張る妹を見て……俺は……。


「! お、お兄ちゃん! どうしたの?!」


「え? あ、いや……これは……」

 俺は……遂に泣いてしまった……。

 酔いのせいなのか? 妹の成長した姿を見てなのか? それとも昨日言われたあのセリフを思い出したからか、いや、多分全部だ。

 俺の目からポロポロと涙が溢れ出す。


 俺は周囲に気付かれ無いように、俺は飲みすぎて気分が悪くなった様に、お手拭きを顔に当てながら席を立つ。

 妹も最後の一口を急いで口に放り込み、そのままケーキを頬張りながら俺に付き添う……いや、残さないのね……。


 部屋に戻ると俺はそのままベットに倒れ込んだ。


「──雪……ごめん」

 仰向けで寝転んだまま、天井を見上げ、溢れる涙をこらえつつ、妹を見ずにそう言った。


「ううん、いいよ」

 妹はそう言うと俺の寝ているベットに乗り、俺を上から見下ろした。

 そして……そのままガシッと俺の頭を掴むと、自分の膝の上に置く。


「えええ!」


「へへへ」

 妹は俺の頭を膝に乗せ、髪を、頭をゆっくりと撫でてくれる。

 妹に膝枕され、妹に髪を触られ、頭を撫でられている。


「お兄ちゃんがあんなに飲むなんて珍しいねえ」


「……ごめん、雪のお祝いなのに」


「ううん……」

 そう言って雪はそのまま何も言わずに微笑みかけてくれた。

 そして俺の頭をゆっくりと撫で続ける。

 

 なにも言わずに、俺の泣いた理由も聞かずに……ただただ、俺の頭を微笑みながら、ずっと……俺の涙が止まる迄、ずっとずっと……撫で続けてくれていた。



 こうして俺達の初めての家族旅行は、最後に俺の醜態を晒す形で終わった……。

少し暗い展開ですけど、まあ、一応ラブコメなので~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾ココカラココカラ

一応ランキングに載りましたありがとうございます。

引き続き応援の程宜しくお願いいたします。m(__)m


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ぽちっとすると、作者のやる気が上がります('ω')ノ

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     新作!         
  妹と離婚するにはどうすれば良いのだろうか?          
  宜しくお願いします。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
― 新着の感想 ―
[良い点] 妹視点とかする予定とかありませんか?
[良い点] 親父さん最初は良い人だと思ってたけど今回の話でうんこ野郎だなと思いました(小並感) 賢作が涙するのも分かります……。愛情注いで大切に守り育ててきた雪ちゃんから、あんなことを言われてしまっ…
[良い点] これからどうなるか楽しみです(≧∇≦)b
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