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わたしの家族は魔王でした  作者: 兎羽
プロローグ
3/3

第2話・人間の赤子を拾った。2

どうもこんにちは。

魔王と人間の娘のアットホーム(?)コメディになるといいなって思いながら書いてます。

誤字脱字があればすみません。

楽しんで頂ければ幸いです。


フェアラと呼ばれる者を呼び出すために、サノアが鼻歌を奏でながら魔力を編む。

その間、ディザイアは人間の赤子をただ無言で眺めていた。

しばし赤子のふっくらとした真っ白な頬を見てると、先程のサノアの奇行を思い出した。


(サノアがやたらとこの赤子の頬をつついていたが……そんなにいいものなのか、これは)


長い爪で赤子を傷つけない為に、指を曲げて関節の部分でその白い頬を押してみた。

真っ白でサラサラとした肌に綿毛のようにふわふわとしていて弾力もあった。

その行為には圧倒的な中毒性があり、ディザイアですらハマってしまうほどだった。


(なっ………なんだこれ…?!!今まで触れたどの人間よりも柔らかいんだが…下手に触ると壊してしまいそうだ)


ディザイアはとても強かった。絶大な魔力を持ち才能に溢れ人智を超越した身体能力をも持ち合わせる。それは、災厄の王と呼ばれているのも頷ける程のものだ。

だからこそ、そんな悪魔である自分が触れてしまえば他の人間と同じようにすぐに死んでしまうと思ったのだ。


「……人間は、弱く脆い生き物だからな」


その白い肌から指を離して、寝息を立てる赤子を見下ろす。

その様子を見たサノアが笑い声を漏らして、


「ははっ、そりゃそうだよ。ディザイアからすれば大抵の人間は弱いしあっという間に壊れちゃうでしょ?だからこそ壊さないように特訓するチャンスだと思うぜ、僕は」


と言った。

そして、サノアが指をパチンッと鳴らしたら、目の前の空間が歪み始めた。空間と空間を強制的に繋げるゲートを作り出しているらしい。


「特訓など面倒だ。それはともかく…フェアラの奴はもう来るのか」

ディザイアが大きくため息をつく。

「この事話したらめちゃくちゃ面白がって、すぐ行くわ!!って言われたよ」

「好奇心の塊め……」


先程作られた空間の歪み──ゲートは例のフェアラをここに連れてくるための一種の転移魔法だった。


「うーん、そろそろ向こうにもゲート開いてると思うから多分もう来ると思うんだけどー…あ、来た来た」


サノアが言う通り、ゲートから少しづつ人の手や足が出て来る。

ひらひらとしら服と白銀の長髪を揺らしながらその者は現れた。


「──ふぅ。やっぱりこの転移魔法便利だけどちょっと酔っちゃうのよねぇ…あ、久しぶり〜!サノア、ディザイア!」


白銀の長髪の隙間から覗く美しい顔。その翠の瞳は神々しさだけでなく幻想的なものまで感じさせる。

そう、フェアラは人智を超えた上位の存在である妖精に生まれたのだ。

自然を司る精霊とは別の奇跡を司るもの、それが妖精。

人々の住む世界でのみ生きる精霊とは違い、世界の裏側にあると言われている妖精鄉と、この世界を行き来して人々の隣でひっそりと生きているという。

そんな妖精の中でもフェアラはかなり特殊な例で、わざわざ人間体を作り出して、人間の良き隣人なんてレベルではなく思いっきり共存してしまっている。

さすがに正体は隠しているらしいが。


そんな妖精族のフェアラだが、実はこう見えて魔王の1人でもある。

妖精の王フェアラクル・アル・エラ・フェアリアルと呼ばれており、奇跡を自らのものとするその脅威性から魔王と呼ばれる事になった。

本人は至って陽気そのもので、人間と可愛いものが大好きないたずらっ子なので、人間を襲うだとか滅ぼすだとかは全く考えていない。

しかし強力な力を持っているという情報だけで、大好きな人間達に魔王とされてしまった無辜の存在。

さほど当人が気にしていないから問題は無いのかもしれないが。


「久しぶり、フェアラ。相変わらず元気だねー」

サノアは、ゲートを通りやって来た友人に手を振る。

「ふふ。サノアこそ相変わらず不健康そうな顔してるけれど?」

「まぁそこはお互い変わんないねって事で」

「そうね、それがいいわ」


久しぶりに会った友人との会話が弾む。

しかしそこでフェアラは当初の目的を思い出して。


「それで、例の人間の赤子ってどんな子なの?可愛い?私にも見せてちょうだい」


ディザイアが地面に置いていた木籠バスケットを拾いフェアラの前に差し出す。


「これだ」


ぶっきらぼうに言う。

その木籠バスケットを受け取り、フェアラは中の人間の赤子に視線を落とす。


「………っか…」

「ん?どしたんフェアラ?」


フェアラが小さく唸りながら体を震わせる。

そんなフェアラを心配に思ったのかサノアが尋ねる。

すると。


「かっ、可愛いすぎないかしら?!!この赤子!!!

何この白くてふわふわな体!それに髪の毛は凄く綺麗な金色をしていて寝顔だってとても、いいえ凄く可愛いわ!!確かに人間の子供って可愛いけれど、ここまで可愛いものだったの……?でかしたわ、ディザイアよくやった!」


まくしたてるように目を爛々と輝かせながら叫ぶ。

可愛いものと人間が好きなフェアラにとって、可愛いくてなおかつ人間のその赤子は性癖にクリティカルヒットするような存在だったのだ。




フェアラさんは人間オタクな所があると思います

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