エリ(19)
「靴下落としましたよ」
その声に振り返った私はその“靴下”を見て絶句した。
なぜなら彼が持っていたのが靴下なんかではなく、私のお気に入りのピンクの水玉パンツだったから。
「…?…あっ、す、すいません」
彼はなぜ受け取らないのかと言わんばかりの怪訝な顔で私を見つめ、視線を落とす。
その瞬間、彼は自分が手にしているものの正体に気づき、慌てて手を離した。顔は真っ赤。
こっちも恥ずかしくなって、でもお礼は言わなきゃいけないやら、とりあえず、パンツを拾いながらしどろもどろになってお礼を言った。
「うーん…」
自分の部屋に帰って考える。私と同い年くらいだったな。ちょっとかっこよかったな。
ぽん。
彼の耳まで真っ赤になった顔を思い出した。
なんだかまたこっちまで恥ずかしくなって頭をぶんぶん振って布団をかぶった。
「あ。」
彼に再びあったのはその5日後。
乾燥機の扉越しに目があった。
「あ、あの」
狭いコインランドリーに2人きりということに居たたまれなくなって声をかけたものの、次の言葉が浮かばない。
「この間はすいませんでし、た」
何を言ってるんだ、私
「こちらこそ」
あ、思ったよりくちゃっと笑うんだな、と1人心でつぶやく。
「もしかして、そこの大学に通ってるんですか?」
この一言から始まり私達は色々な話をした。
やっぱり同じ大学に通っていること、好きな食べ物、最近の政治。
その日の夜はもうひとつ
ぽん、
が増えた。
彼のくしゃっ、と笑う顔。
最近よく雨降るし、またあのコインランドリーにしよ。
あそこの自販機ナタデココドリンク入ってるし。