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元厨二病が異世界転移したらカッコよく二つ名叫べると思うじゃん?そんな事はない。普通に恥ずかしい。  作者: 結城平次
元厨二病が異世界転移したらカッコよく二つ名叫べると思うじゃん?そんな事はない。普通に恥ずかしい。
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元厨二病と無理難題2

コミュニケーション能力。


この言葉を今まで幾度となく苦しめられてきた。

変な事を言ってないか、相手を不快にしてないか、色々な事が怖くて、寝る前に瞼の裏でいつも要らぬ事を想像しては悲しんでいた。


そもそも、なぜこの世界はコミュ力がこうも幅を利かせているのか。


真面目に研究に没頭する研究者よりも特に能力がないのにコミュ力だけはある奴が成り上がる。


どんなに優しい人よりも少し暴力っ気のある話が面白い奴の方がモテる。


「っはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


驚くほど重たいため息が出た。


視線の先、ギルド受付横のバーカウンターでは今も冒険者と思しき格好の人達が楽しそうに談笑している。ミカさん曰く、バーカウンターと、その近くのテーブル席に座ってちびちび酒を飲んでる奴らは大抵スカウト待ちなのだという。


「......なんて話しかけようか」


色々とキモくない話しかけ方を考える。ただしまったく自信がないので、そのどれもがキモく感じてしまった。


「うじうじしてても仕方ないか......よし!」


一念発起し歩き始める。いつまでもダメダメなままじゃこの世界で生きていけない。とにかく頑張ってみよう......!




20分経過した。


「やっぱりダメか......」


そもそもこんな全く強そうじゃない奴をどうしてパーティに加えようというのか。


上下制服て。武器が木刀だけて。


「荷物持ちでもいいですから、とか言ってみるかなぁ......」


そう口にしたものの人に声をかけることに慣れてない俺はこの20分間でかなり疲労していた。なんならこのまま帰って寝たいくらいだ。


ちらりと時計の方を見やるとまだ16時くらいだった。


「......とりあえずここから出るか」


ミカさんには悪いが割ともう今日は諦めたい。成果が無しで教会に戻るのは忍びないけど、初日でこれならまぁ良い方だろう。


少しこの辺りをぶらついてこの世界の事を見て回りたくもあるし、ちょうどいい機会だとも思う。


さっき食べたグラタンも変わった味付けだったなとか考えながら出口に向かう。


「きゃっ」


「あっ、すいません! 少し考え事してて......」

考え事をしていたからか目の前にいた人に気がつかずにぶつかってしまった。


ぶつかった相手はフードで顔を隠していたが体つきから女性、もっと言うと15〜18歳くらいの女の子だった。


尻餅をついてしまった少女に手を差し出す。少女はその手を取り立ち上がる。


柔らかい手の感触に、そういえば自分にしてはらしくない紳士的な対応をできたことに微かな喜びを感じると共にこんながっつり女の子の手を握ったのはいつぶりだったかと思案を巡らせた。


身長は156センチくらいだろうか、俺の肩あたりまでの身長の少女に俺は見覚えがあった。


確か、俺と同じく仲間を募集していたようなーーー


バサバサッ


少女の腰にかけられたポーチから何かの紙が落ちていく。


「あわわっ」


少女は慌ててそれを拾うが、紙がうまい具合に床に密着してしまい、微妙に取れないようだった。


「パーティ加入希望......」


やはりそうだった。少女の拾おうとしてる紙はパーティ募集の紙だった。自分のステータス?やら何やらが記載されているようだ。


「あ、す、すいませんっ」


俺もしゃがんで紙を拾うと少女はそう礼を述べた。


全ての紙を拾い上げ、少女に渡した。


窓から差し込んでくる夕陽が少女のフードの奥を照らし出す。少女は薄くウェーブのかかった栗毛色の髪の端正な顔立ちだった。いやマジで可愛いな。


胸のあたりを渦巻くほんのりと暖かい高揚感、この感じは覚えがある。そう、中学の時にクラスの人気者の女の子が深夜アニメを見てると話していたのを聞いた時に感じたようなアレだ。


「......君さ、パーティ募集してるの?」


心臓がバクバク暴れまわる。気づかれはしないだろうが背筋を冷たい汗が伝っていく。


「は、はい」


本当にどうしたんだろうか、前までは考えられないくらい今日は人に対して積極的だ。不思議と簡単に一歩を踏み出すことができる。


「君が良ければなんだけど、俺とパーティ組まない?」


......言った。


他の冒険者達軒並み逞しかったからあんまり照れなかったけどこういうガチ美少女を誘ってしまった。


そして気づく。


(あれ......けどこれ俺がOKされる可能性皆無なのでは?)


冷たい汗が額を横切る。


(そういえば中学の時にクラスの女子にアニメの話題振った時も結局その子の観てた深夜アニメが某有名漫画原作のやつで本人は全くオタクじゃなかったってオチだったし......)


襲いくる後悔。


しかもこれ元の世界じゃ割とナンパの部類に入る話しかけ方なのでは?


考えれば考えるほど自分の浅はかさが浮き彫りになってくる。ちょっと人に話しかけるのに慣れたからといって調子に乗った罰だろうか。


「......あ、いや、君が嫌なら別にーーー」


「パ、パーティ組んでくれるんですか⁉︎」





ーーーーーーあれぇ?


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