プロローグ-完全なる黒歴史-
はじめまして、結城平次と申します。
ひょんな事から始める事とした小説です。
拙文甚だしく大変お目汚しかもしれませんが、
何卒お楽しみいただければ幸いです。
「......ちっ、まさかこんなに『侵喰』が早いとは......なっ!」
その部屋に灯りと呼べる物は無かった。窓から差す月明かりのみが俺の手元を照らしてくれる。
力強く包帯を引き、左手に巻きつける。
「これでよし。当分はこれでなんとかなるだろう」
その六畳ほどの部屋の中心に男はいた。男は立ち上がり、ベランダへと出る。そして星ひとつ見えない夜空にぶら下がる月を見上げ、手を伸ばす。
「......あの月が二度満ちる時、我が手にはかがやく黄金が握られる.....ハハハ............ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ‼︎」
「悠太!近所迷惑だからやめなさい!」
「はい」
バタンッ!と勢い良くベランダの戸が閉められる。
……せっかく楽しんでいたのになんと間の悪い母だ。
俺は仕方なく部屋に戻り、包帯を解いた。
「大体年頃の男子の部屋にノックもなしに入ってくるってどういう事だよ......俺にだって自分だけの領域がある筈であって......」
普段からああやって勝手に入ってくる母の不満を呟いていると無性に腹が立ってきた。
「別にいいだろ叫んだって。そうだよ、お母さんが部屋に入ってきたら叫ぶのをやめればいいんだ。フハハハハハハハハ!最早俺を止められるものなど存在し「ドンッ!」すいませんでした」
今のはお隣の部屋からの壁ドンだ。流石に家族以外から苦情を入れられたらやめるしかない。
「けど大声は出したいなぁ......ただ大声を出すだけならサッカー観戦しに渋谷に行けばいいんだろうけど俺あんな陽キャみたいな事できないし.....あっ、河原に行けばいいんだ!河原ならどんなに大声出しても青春してるみたいに見えるじゃないか!ハーッハハハハハハハハ!やはり俺は世紀の天才だ「ドンッ!」ごめんなさい」
大喜びで家を飛び出し、夜更けの河原へ向かう。
俺の名前は黒木悠太。
見ての通りどこにでもいる中学二年生だ。