プロジェクト 2
もう一つの問題、それは、ロイヤリティ、つまり本を出版した際に受け取る手数料の振込先の登録であった。
そんなもんすぐにできるじゃねーか、何で時間かかってるんだよ~!!! と、思った方々。
私もそう思った。
だがですね、入力しようと思っても出来なかった。
何故なら、使用できる金融機関が限られていたんである。
利用できるのはみずほ銀行や三井東京UFJ銀行、三井住友銀行など12行ほどで、地銀はおろかゆうちょ銀行も含まれておらず、そういった銀行の口座をどれも所有していなかった私は、銀行口座の開設からしなければならなかったのだ。
結局、私はその銀行の中でセブン銀行をチョイスし、インターネットで口座開設を申し込んだのだった。
それから数日後、完全に油断しきっていたある日の深夜、突然電話が鳴った。
当然ながらぐっすりと眠っていた私は驚いて飛び起きた。
だいたい深夜の電話なんて縁起のいいものではないはずだからだ。
まだはっきりと目覚めていなかったが、深夜の騒音にあわてて受話器を取った私が聴いたのは、おなじみのピィヒョロロロ~と、FAXの送信音である。
あ! 来た!!!
2週間ほどかかると聞いていたのに、まさかの1週間後の返信である。
早くてありがたいのだが、予測していない時にやってくるほど心臓に悪いものはない。
ともかくFAXへと切り替え、受信を待つ。
って、私が送った用紙まんまじゃん、何か不備があったのか? って慌てたけど、よく見たら、右上の隅に送ったときにはなかった数字が書かれているじゃないか!!!!
こ、これが、TINか……。
深夜のFAX、しょうがないけどビックリしたなぁ……。
残念ながらまだセブン銀行のカードは届いてないけど、これでやっと、税の情報が入力できるぞ!
何か成し遂げたような気持ちになり嬉しかったが、深夜ということもあり、その日はそのまま眠った。
翌日、ドキドキしながらAmazonKDPにサインイン。
よし、やっと入力だぞ?
早速、税に関する情報を入力し始めた。
ん?
あれ???
TINを入力できない……。
なんでや……。
そしていろいろな試行錯誤を繰り返し、私はあることに気付いた。
番号の種類が違ったせいで、入力ができなかったのだ。
そもそも、納税者番号、実は種類があった。
SSN(社会保障番号)、ITIN(社会保障番号が取得できない人の納税者番号)、EIN(連邦雇用主番号)。
SSNはアメリカ市民、永住権保持者、もしくは特定のビザをもった人のみ取得が可能な番号で、EINは事業としての番号で個人の確定申告に使うことはできないとくれば、私が申請しなければならないのは、ITINという納税者番号である。
なのに自分で送ったSSー4の申請書を確認してみると、しっかりはっきりEINの文字が……。
全く覚えてない。
覚えてないけど多分、こういうことなんだろう。
英語が不得意な私は、記入のために、詳細な説明のあるサイトを参考に記入していった。
たぶんそれが、法人用の申請だった……。
イヤイヤイヤイヤ。
ってことは何?
また全部やり直し???
まじで??
私は慌てて何か情報はないかとアメリカの納税者番号について再び調べはじめた。
しかしろくな説明はなく……結局力尽きた私は、KDPの問い合わせ先に恥を忍んでITINを取得しなおす必要があるかメールを送ったのであった。
翌日には早速お返事。
なになに?
KDPの源泉徴収の対象となるのは、アメリカで売り上げた場合のみ……。
日本で売れても源泉徴収されない………。
って!!!!
アメリカで売上げ上がるわけないやんか!!!!!
ほわぁぁぁぁぁぁ。
じゃぁ、じゃぁ、もしや。
しなくていいことを、一生懸命してたってこと?
…………これまでの苦労は何だったんだ……。
がっくりと肩を落とした私。
一生懸命調べたりFAXしたりの作業が走馬灯のように脳裏に浮かんでは消えた……。
うん。
漫画だったら私、確実に砂になってバラバラになってたよ………!!!!!
※補足1
この出来事からだいぶ後になるけど、実はその後、245円ほどアメリカでの売上があった。
びっくり!!!
※補足2
その後、税に関するインタビューで、他国の納税者番号を持っているにチェック、納税者番号はマイナンバーを入力、すれば事足りたことに気付いた。IRSにFAXしたことは、いたずらにアメリカに個人情報を流しただけの結果となった。