異世界転生3
気がつくとそこは無の世界とでもいうのだろうか?何も無い。いや、正しくいえば正面に椅子がありまた、俺自身も椅子に座っている。
「俺はどうしてここに...?あ!そうか、俺はあいつに刺されて気を失ったのか!」
「それは少し違います」
不意に後から透き通った綺麗な声が聞こえた。だか、声の方を振り返っても誰もいない。
「...おかしいな...たしかに声が聞こえたような...って!?おぉ!?」
正面を向き直るとそこにはこの世のものとは思えないくらい綺麗な少女が座っていた。微笑んでこちらを見ているが少し悲しい顔をした気がした。
「はじめまして。桐崎 涼二さん」
「ッ!?なぜ俺の名前を?君は誰?てか、ここはどこだ?俺は、あいつは、あの子は?」
「落ち着いてください。ちゃんと答えます。まず、ここは死後の世界です。私はこの世界の女神です。あなたはあの男に刺されて死にました。だからこの世界に来たわけです。次にあの男はあなたを殺したあとすぐに警察に取り押さえられ逮捕されました。あなたが守ったあの少女は無事です。」
「やっぱり俺は死んだんだな...でも、あの子だけでも助かったならよかった...」
「はい。あなたのおかげです。私からも感謝します。ですが、彼女も心の傷を負ってしまったようです...」
「それもそうだよな。自分が殺されるかもしれなかったんだから怖いに決まってる...」
考えれば当たり前だ俺だって死ぬのは怖かったし死にたくないとも思った。あの子も同じだったんだろう。
「いいえ。理由は少し違います!」
「え?じゃあなんで心に傷を?」
恐怖でないなら検討もつかない。
「それは、彼女はあなた、桐崎さんに好意を持っていたからです」
「...は?...」
「彼女は高校に入ってからずっとあなたに好意を持っていましたよ。一目惚れだったようです」
「ッッ!!!!」
体温がはっきりと上がっていくのがわかる。
「それで、桐崎さんのことを少しでも知りたくてあとを付けていたようです。そこで桐崎さんが刺される所を目撃してしまったということです。だから、彼女は何も出来なかった自分と二度と想いを伝えることが出来ない桐崎さんのことを想い心を痛めているのです」
「そうだったのか...全然気づかなかった...」
当たり前だ。他人に興味がなく意欲もなく学校でも上辺だけの関係を築き上げて来たのだから。
「彼女はこのままだと一生心に傷を負うことになるでしょう」
それはダメだ!そんなのは認められない!なぜならそれは彼女をバッドエンドの道に進ませることになるから!
「桐崎さんの考えていることは何となく分かります。あなたは彼女の命を救った事もあるのでチャンスを上げましょう。あなたの望みをなんでも2つだけ叶えてあげます」
「女神様こういうのは普通は1つじゃないんですか?」
戸惑いながら聞くと女神様は微笑んで言った。
「いつもは、1つなのですがあなたは彼女を救ってくれたのでそのお礼も兼ねて2つです」
今までの印象とは違い悪戯っぽい無邪気な笑顔に変わり鼓動が早くなる。
「そういう事ですか。では1つ目のお願いをいいですか?」
「どうぞ」
「彼女の記憶から僕の存在していた時間を消してください」