LXXIX 卍 ターニングポイント 卍
四月からNHKで『銀英伝ノイエテーゼ』を全話放送するらしい。
これは第二期の布石か?
いちおう一期ラストで地球教登場してたから予算付けば続きやる気はあったらしいし、NHKなら予算はガッポリでしょうが。
VODでの配信が終わってしまうので慌てて『プラネテス』全話視聴(DVD持ってるけどディスクをトレイに載せんのめんどいねん )。
やっぱよくできてる。サンライズのオーパーツと言って良いくらいよくできてる。ジブリやガイナックスに比べていまいち垢抜けないけど、『プラネテス』と『イデオン』を作った会社、ということで称えられるべき。
NHK教育……いまのEテレで2003年から放送……再放送でブレイクして、その年の紅白歌合戦の裏番に傑作選をぶち込んできたくらいだった。
ゼロ年代でDVDまで買うたのはこれと『ストラトス4』と『マリ見て』と『青い花』だけよ(←それって……)
ただ、『プラネテス』は日本で宇宙SFが廃れる、まさにターニングポイント的作品でもあった。
だって同じ監督&脚本家の次作が『コードギアス』ですからね。
これの大ブレイクによって『プラネテス』の輝きは隅に追いやられてしまったようなもの。あまりに理不尽なので『プラネテス』はNHKか講談社側のプロデューサーがよほどしっかりしてたんだろな、としか思えんかった。まあそもそも原作が優れてたってのはあるけれど、26話保たせるに当たっての脚色が素晴らしかったのだ(なんせ全四巻中三巻しか使ってない)。原作もアニメもそれぞれに良い、ってのは希であろう。
とは言えサンライズはそれ以前も、宇宙ものを定期的に送り出す会社であった。『アウトロースター』とか『星界の紋章』とかね。ガンダム以外のSFものを積極的に展開しよう、と言う意気込みは『クラッシャージョウ』から綿々とあった。
『プラネテス』で画期的だったのは「宇宙は音が無い」という当たり前の事実を盛り込んだこと。アニメでこれをやったのはわたしの知る限りあとひとつ、『おいら宇宙の炭鉱夫』だけだ。洋画まで広げても【2001年宇宙の旅】と【ゼログラビティ】【インターステラー】ぐらい……あとなんか忘れてるかもだけどだいたいそれくらいなんで、いかに画期的か分かりますね?
で、『プラネテス』以降宇宙ものはぱったり息を引き取った。
『アイマス』とか『舞-乙HiME』とか作り始めて女の子書きたいんです路線に行ってしまった。で今じゃサンライズって『銀魂』と『ラブライブ!』の会社だもんね……ガンダムは嫌々作ってるから入れてあげない。
この流れは致し方なしなんだけれども……だって宇宙SFが廃れたのはサンライズのせいじゃないし。
『プラネテス』が未来における底辺生活者の苦悩を扱ったように、宇宙が身近になって呑気な想像力の遊び場ではなくなった、それに量子宇宙論に至って欧米SF作家でさえネタとして転がすのが困難になってきた……それではっきりとSFの「位相」が起こったのだ(でも位相先の着地点がまだ見えてない様子)
不幸にもそんなタイミングが重なった。それで後続が出ずに終わった。
アニメのほうの『プラネテス』が木星に着いたあとの話をバッサリ切ったのもそのへんを象徴していた。月より遠くに行くリアリティーが、作り手も受け取り側にもどうしても沸かないのよ。
『銀英伝』で『ヤマト2199』でも駄目だった宇宙SFの復興がなされますかどうか……




