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ⅩLⅣ 卍 ものがたり 卍


 「ドラマ」とはある人物について山あり谷ありの人生を切り取ったものである。人物が実在か創作か、人間か犬猫、はたまた無機物かに関わらず、である。

 そもそも「ドラマチック」とは日本語に訳すと「劇的」なのだから、観客たる第三者に提示すべき波のようななにかを含んでしかるべき。


 してみると、この「小説家になろう」のメインストリームを成す、山なし谷なしストレスフリーな物語とはいったい何なのだろう。


 ああもちろん、10年くらい前から「日常系」なる、平穏平坦他愛のない日々を連ねる「ドラマ」もひとつのジャンルを築きつつあるのは、知ってます。読んだことないけどたぶん【よつばと】みたいなの?それに8年くらい前、【けいおん】一期で主人公ふたりがちょっと険悪になっただけで、世のおたくが「こんなもん見せんじゃねえええ!!脚本家はクソッ!!!」と発狂したのは覚えてる。あと【みなみけ】とか。

 広義には【源氏物語】や【吾輩は猫である】も日常系かな?知らんけど。


 だが、それらとなろう系の圧倒的な違いは、その含蓄の無さと言えよう。

 つまり読んでもなんの滋養にならない。考えさせられることもなし。

 むしろそういうのはいっさい拒否!という感さえある。

 これでは異世界でメシ食ってるばっかりの話にもなろう。


 いまはそういうのが流行なんだよ、あんた古いんだよ!


 という意見もあろうが、やや短絡的でしょう。だってそういうのの消費者ってたぶん半分くらいアラウンドサーティかそれ以上だと思うし。つまりガンダムやエヴァ世代も少なからず混じってる。


 となれば、あとは一種の「物語疲れ」か。

 これは自分もけっこう感じてる。

 マーベル映画が日本で受けないのもたぶんこれだよね……実直な脚本に方程式でも用意してるような演出……物語を追うのがだるく感じてしまうのだ。

 海外作品の単純明快な娯楽作にそう感じるのは、まあ分かる。日本人てもっとウェットでひねてるの好むもんね(そのわりにはキャラに闇のない【バーフバリ】がなぜか受けてるけど……)


 ところが一転国内作品も、逆に捻り過ぎな作品が多すぎてある種の飽和状態になってしまっている。

 スカした俺やっちゃいました?野郎とかエキセントリックな女の子とかそんなキャラばっかで。

 物語の3/4が経過したあたりで明かされる仰天の事実!で「ああまたこのパターン」てゲンナリした人もおられよう。

 キッチュが当たりまえ。

 あるいは「エヴァ系」の考察ごっこはもう結構、とか。


 こんな風潮ゆえか、ぼんやりしてても観れる夜中アニメでさえ、とっかかるのが面倒臭くて、視聴すればそれなりに面白い作品さえ評価されなくなってしまった。【宇宙より遠い場所】とか。

 だから趣向を凝らしたオリジナル脚本はなりを潜め、原作付き、しかも消費者がすでに内容を承知してる作品のリメイクがアニメ、漫画、映画で蔓延するようになってしまった。

 それでなろうではご存じの通り「テンプレ」の嵐である。それも山なし谷なし。

 「現実が辛いんだからフィクションくらいまったり萌えさせてよ」と人は言う。


 実際みんな「物語」なんて漠然としか追ってないんじゃなかろうか?映画で「四回泣ける!!」なんてキャッチがまかり通っちゃってるし。

 これおたく諸氏はバカにしてるだろうけど、【コードギアスR2】の結末で起こったことも同質ですからね。さんざん叩きまくってたのに、ルルーシュが死んだとたん「あれ?なんか眼から水が」とか(一回怒られたのにまたディスっちゃったけどアレは【かんなぎ】騒動と並んで俺にとっちゃ衝撃だったんだよ!)

 明らかに物語の前後関係無視で、センシティブな演出だけに釣られてるでしょ。


 それで思いだすのは昨今ありがちな、「なんかよく分からないけど感動した」というコメント。


 感動というのは本来、なにがしかを理解したうえに訪れるものであるはず。それも前衛的な実験映画ならまだしも、アニメの感想だし。

 これなぞ、物語の文脈はおざなりでも情緒過多シーンを配置しとけばオッケー、という証左ではなかろうか。【リゼロ】の主人公が泣きながらレムに長舌振るうシーンなんて、セリフ長すぎて1分前になに言ってたかも忘れそうだけど、なんとなく情緒揺すぶられるっぽいでしょ。

 涙ダダ漏れ(クライマックス)で音楽盛り上がり~な、花火か桜の舞い散るバックで女の子が泣きながら笑顔、なんてのは掃いて捨てるほどあるけれど、やっぱアレが良いんですかね~。

 なんだか物語をシコシコ錬る意義について考え込んじゃう孤独な冬でした。


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