ⅩⅨ 卍 前回つづき 卍
われわれは社会契約という「お約束」に従って生きているけれど――たとえば赤信号は渡らない、とかゴミはゴミ箱に、とか――けど、前述の「漫画村」の件の危険なところは、そういったモンなんていざとなりゃ簡単に踏み越えられる、と自己学習しているようなものだから。
大げさ過ぎると思うかもしれないが、この世の諸々は関連しあっている。まだ日本には騒がず列に並ぼう、というような美徳が生きているが、ズルをする人間が100人中ひとりから5人に増えれば、その危うい表面張力は破れかねない。
われわれはすでに音楽を失っている。
音楽アーティストは漫画家より前からコピー侵害に苦しんでて、モチベーションが持続しなくてろくなヒット曲も生まれなくなった。
実際ラジオを聞けば、流れるのは10年~30年前のヒット曲ばかりになってますし。(「JASRACが……」と言いかけたそこのあなた、あいつらがそこらじゅうで暴れてるのは、本来業務であるソフトが売れなくなったんで別の収入源を漁ってる結果だと思う)
おおくの人間が徳を積むより安易な方に逃げてゆく。ドロボーでありながら「ぼくはぜんぜん悪くないもん!」と開き直り、存在してるのかどうかもわからないどこかの誰かがちゃんと対策してないのが悪い、と言い切ってしまう。
この開き直りメンタルは別の形でも現れてる。
最近高齢の親を殺す30~40代の息子、という事件が異様に多くないか?
これが現実に向き合えないおたニートが癇癪を起こした結果、と見るのはそれほど無理がないと思う。 なにもしたくないしコミュ力ゼロのおたくが、就活より楽な方法を選んだのだ。
ゴキブリじゃないけど、そういう露出の背景には犯罪者になりきれない潜在要員が千倍いると考えるべきでしょう。
そうやって大事なものが何もない人間が増えて行くとどうなるか。
掲示板にもそんな徴候は垣間見えるでしょう。
「なに熱く語っちゃってんの?」
「いい年して漫画見るヤツはバカ」
「音楽なんか無くてもこまらねーし」
「どうせどんな作品だってなにかしらパクリだし」
人生全般をマウンティングに費やし、他者にアカンベーするだけが生き甲斐のカラッポ人間。イノベーションをバカにして、一生懸命な人に「恥ずかしいからやめなよ」という言葉を投げつける冷笑家。レアグッズを買い占めるテンバイヤー的人種。
繰り返すが、大事なものがない人間は破壊者だ。できることはせいぜい他人を不快にさせることだけ。
そしてそういう人間はしばしば批評家である。ケチなアイデンティティーを護るためがっちり理論武装しているからだ。そしてなにもしないのに「そんなに偉そうに言うならお前がやってみろよ」と言い返したくなるような高いところからの意見をしばしば開陳するはず。攻撃は最大の防御だから。
おたく趣味なひとなら身近にもいたことでしょう。
この話題に結論は無いです。自分はこう思う程度の話なので対処法うんぬんなど提示できません。でも世の事柄について「どうなってんの?」と考えてみるのは悪いことではないでしょう。