ⅩⅤ 卍 女性専用車両の例のアレ 卍
民放を観てるとたまにとてもうんざりさせられ、そのたびに後悔する。
ワイドショーからゴールデンタイムは、人間の後ろ暗い好奇心を煽るために存在している。嘲笑や不快感、そういうのを溜めないと生きていけないのか、と思われるくらい。オリンピックメダリストなど「健全な」話題もあるが根っこはおなじ、情緒的に上下させてくれるネタが欲しいだけ。そして多くの人間は下げられるのが大好きなのだ。
それであの、女性専用車両にわざわざ乗り込んで騒ぎを起こしたあの野郎だ!
わざわざ早起きして動画を撮影するために都内の電車に乗り込んで、なにを達成したかったのか。
問題提議?
馬鹿言っちゃいけないよ。
あいつはたぶんネットの掲示板読み過ぎたニートで(通勤時間にあんなコトしてるんだから無職かフリーターだろう)おのれの独善的正義を実践すべく果敢にアタックしたつもりなのだろう。
おなじ男としてあれほどぶざまでみっともない事例は……アイスケースに寝たりとかバカなお兄ちゃんがやらかした事件は数あれど、あれほど情緒を傷つけられたケースは無い。 とくにあの事例のなにがいたたまれないかって言うと、精神的に中性化したいまどきのあんちゃんたちの多くが、あの馬鹿野郎にシンパシーを感じるだろうと直感できるからだ。
権利とか自由という言葉を履き違え、罪もないひとに迷惑をかけているだけなのに、なにか正義を振りかざした気でいて、その実、真面目に社会正義を追求している人の足を引っ張っているだけの迷惑者。SF的に自己の正義を拡大解釈して暴れるモンスター。でもその実体はおのれの思考や言葉に弄ばれてるだけのちっぼけで混乱した人格。
と、いろいろ並べてみたが自分は社会正義なんたらには関心はなく、あの馬鹿の内面に大いに興味があるだけなんですが。
あいつを主人公にして短い物語を書いてみたい……
あいつは普段どんな生活をしてるんだ?
女性専用車両に突貫しようと決意した瞬間、鏡に映ってる自分の顔は獣じみたしたり顔じゃなかった?
それで、やってみたらスッキリできたの?
怒った女性と対峙した瞬間なにを感じてたの?根拠不明な万能感?間接的にレイプしてやった!という感じ?頭ん中にドロドロした怒りが渦巻いてた?アドレナリン全開?
面倒くさいお友達が増えましたか?これからずっとその人たちとあの『武勇伝』を糧にして、自己正当化しながら生きてゆくの?
夜中にふっと素に戻った時、なにも満たされないことに気付いてむなしくて泣いたの?
50歳になったらアレが黒歴史になると思わなかったの?
そのグロテスクな内面に踏み込んで解剖したい……
けどこういうのでブンガク的好奇心を刺激されるのって週刊誌記者なみに下劣なことだから、さっさと頭から追い出して【真三國無双Ⅱ】に戻るのが吉だけど、深淵はふとした日常にぽっかり現れるのです。ホラー映画なんて必要ありませんね。