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対人恐怖症が作る治安の良い国


 日本は世界の中でも治安の良い国と言われている。

 この社会を作る根底にあるものが日本独自の刑事裁判のシステムとそれを支える日本人の犯罪に対する認識だ。


 ひとりの大学教授の例を紹介しよう。


 この大学教授は学者としていくつかの本を出版している。その中には特定の宗教団体を擁護するようなものがあった。

 後にその宗教団体が問題を起こし社会的に信用を失うこととなる。


 大学側としてはその宗教団体と関わりがあり、その宗教団体を擁護するような解釈のできる書籍の著者が教授を勤めるというのは、大学のイメージを損う恐れがあり早期に退職させたかったのだろう。


 このとき大学側はひとりの女学生を利用した。

 女学生に金を渡し、件の大学教授に研究室で猥褻なことを強要された、という嘘の証言をさせたのだ。

 これにより大学教授は猥褻事件の容疑者となり大学を追われることとなる。


 日本では痴漢等は被害者の証言があれば起訴ができる。

 また日本の刑事裁判の有罪率はあり得ないことに99、98%と異常に高い。

 アメリカでは約70%であり他の国と比較してもこの異常さが解る。

 日本では容疑者として逮捕されることはそのまま犯罪者として扱われることと同義なのだ。

 それが無実の罪であったとしても。


 議員や警察官などの公務員、いわゆるお堅い職業の人物がたまに痴漢や盗撮の犯人として逮捕されるニュースは、日本ではたまにある。

 しかしここで逮捕された容疑者は裁判前の有罪か無罪か、真犯人か冤罪か、その審議が出る前に実名で報道され仕事を辞職、または懲戒免職になる。

 この日本では職場において、政治団体などにおいて、都合の悪い人物を痴漢冤罪や盗撮冤罪で追放する手法は半ば公然のものとして存在する。


 日本においては犯罪者が逮捕され裁きを受けるだけでは無く、犯罪者と疑われることにも犯罪者と等しい扱いを受ける文化がある。

 そのため容疑者の段階でも実名で報道され冤罪であっても犯罪者の如く罰を受けることになる。

 冤罪大国日本と呼ばれる由縁である。


 そのため日本人は犯罪者と疑われることにも怯えるようになる。この恐怖政治のような社会が治安の良さの実態だ。

 このような冤罪であっても疑われることすら犯罪者扱いされる社会で暮らすことが、他人の視線と評価に怯える対人恐怖症を作り育てている。


 国連の拷問禁止委員会が再三に渡る警告を日本に行っている。

 日本では留置所と呼ばれる代用監獄の撤廃。

 だが日本の警察、裁判所にとってはこの使い慣れた留置所を撤廃する気は無いようだ。


 日本の裁判では犯人の自白が何よりも重要視される。この留置所とは容疑者から自白を引き出すための代用監獄である。

 容疑者の段階で留置所に拘束。さらには取り調べ中の録音も録画も禁止される。

 そのためにどのような取り調べが行われているかは外部には不明となる。

 この留置所の中で恐喝、恫喝を行い容疑者に自白を強要するのだ。

 取り調べ中の録音も録画も禁止される国は、自称先進国の中では日本だけである。

 この代用監獄で強制的に自白させることで、無実の人物が犯人となる。

 過去には真犯人でも無いのに容疑者として逮捕され、この留置所の取り調べの過酷さに耐えられず自殺した者もいる。

 これが日本の刑事裁判の有罪率の高さを支え、冤罪事件の発生率を上げている。


 しかしこれは社会の治安を良くするためには都合が良い。

 犯罪を起こした者が罰則を受ける、それを見せしめとするには、真犯人が捕まらないよりも、冤罪でも何人か犯人が捕まった方が都合が良いからだ。


 日本ではこの、疑わしき者は罰せよ、という警察の在り方、裁判所の在り方が当然のものとして国民に受け入れられている。

 マスコミもまた同じ姿勢での報道に疑問を感じていない。

 

 対人恐怖症をその精神の根底に持つ日本人ならではの犯罪に対するものの見方。

 これが日本の治安の良さと冤罪率の高さを支えている。


 日本に置いて刑事ドラマや推理小説が一定の人気を持ち、逆転を訴える弁護士のゲームがヒットし、身体は子供で頭脳は大人な少年探偵が活躍するアニメが人気があるのも。

 真犯人がちゃんと捕まり裁きを受け、無実の人物の疑いが晴れるという、日本の社会ではまず有り得ないファンタジーに期待する心理からのものではないだろうか。



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