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仮面ロウニンダー  作者: 秋和翔
2/5

仮面を手に

 彼は彼なりに受験勉強に取り組んだ。センター試験に向けた勉強を中心に取り組んでいた。勉強が嫌いだった彼も少しずつ勉強することが苦にならなくなった。

 彼は今まで前向きに物事に取り組んだことがなかった。何かをするにしてもしなければいけないからする。あっちの道を進むのは嫌だからこっちの道を進む。彼はそんな生き方をしていた。何かに一生懸命に、ひたすら頑張るというようなことはしたことはなかった。だから何かにひたむきになれることが素敵で、それがたとえ受験の勉強であっても居心地がよかったのだと思う。

 しかし彼は頑張ったということを認めない。彼に言わせれば頑張ったとか努力は結果が出てこそ言っていいものらしい。結果が出なかった頑張りは努力は自己満足であって、本当に結果を残す努力した人達に失礼だと。それに頑張ってなかったから結果が出なかったと言い訳できると。だから結果残すまで何かをし続けなかればいけない。

 彼が勉強することが苦ではなくなったもう1つの理由は自分から目を背けることができるからだった。彼が勉強を始めるまで、彼の心の中は死にたいとか苦しいとかそんな感情で溢れてしまうことが多かった。勉強はそんな気持ちに気付かないようにしてくれる。彼にとったら一種の薬のようなものになった。その副作用として彼は今学歴コンプに陥ってしまっているわけだけど。


 そんな彼は訪問販売の教材に引っかかってしまいながらも、塾には通わず、学校の補習と先生達の好意を受けながら、教室で問題と向き合い続けた。

 学校のカリキュラムにも問題はあった。でも受験で一番大事なのは自分の頑張りだ。彼に言わせると、彼にはそれがなかったのだろう。数Bと倫理政経はほとんど独学で勉強をしながら3年の1月を迎えた。


 センター試験はほんと目もあてらない結果だった。自分の志望校にはどうあがいても届かない点数だった。そして彼はそれを引きずってしまった。第一志望校には入れないのだからもう勉強しても意味はないと。そんな考えの彼は私立大学の前期を全落ちした。

 彼の目の前は真っ暗だ。今までしてきたことが何の意味を持たない。そんな虚無感。彼は焦った。せめてどこかに受かりたい。浪人なんか出来ない。そんな元気は残っていない。そうなって彼はあがき始めた。

 国立の夜間主を受け、中堅の私立大学を受け、その下の大学も受けた。結果は国立の夜間主と中堅私大には受かったが、その下はなぜか落ちた。運。きっと彼は実力ではなく運で大学に受かった。

 国立の夜間主と中堅私大のどちらかに進学するか迷った挙句、彼は中堅私大に入学することを決めた。僕に言わせればどうしてと聞きたくなるのだが、彼なりの理由がそこにはあるらしい。でも彼はその理由をまだ教えてはくれない。だけどこのことに関して彼はいつもこう言う。

「どうせどっちの道に進んだって上手くいかなきゃ後悔するんだ。あっちの道に進んだほうが良かったんじゃないかって希望的観測をしながら後悔するんだ。だからどっちの道に進もうがどんな道であろうが、後悔するのは仕方ないって割り切って、俺なりに良い道にしようともがくだけだ」


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