11話 壊れてしまったその部屋でー04
「………こうなってしまっては、隠しておく意味もないので、話しておきますが、僕の【人の心を視る】という【能力】は、【能力】であると同時に、【代償】でもあります。」
唐突に言われて、反応に困った。
【能力】が同時に【代償】?どういう事だ?
……………そういえば、ずっと前に栞に、そういう珍しいケースもあるという様な話を、聞いたような気もする。
「…確かに僕みたいな人は、レアなケースみたいですね。」
また僕の思った事に反応した。
なるほど。視るのではなく、視えてしまうのか。
「そうです。人の心が視えるのは確かに便利ですが、出来る事なら僕はそんなもの視たくはない。」
分かる気がする。
知りたくない事も、隠しておきたい事も、人それぞれあるだろうから。
頴娃君は、何故か少し躊躇ったが、結局続きを話し始めた。
「……僕は、人と付き合うのが怖いんです。」
「………。」
「笑顔で接して来る人も、心の裏では酷い事を考えていたり、他の人がついた嘘を、そうと分かってて受け止めたり。……正直もう疲れました。僕はこんな【能力】、欲しくなかった。」
気持ちは分かると、口で言うのは簡単だけど、そんな薄っぺらい事を言っても、意味はないだろう。
…………………あ、そうか。コレも視えてるって事か。てことは言ったのとほぼ同じなんじゃ…………どうしよう。
…………どうしようもない。なるほど、確かにつらそうだ。
「そういう意味では、茉莉さん。貴方と話すのは楽しかったです。貴方ほどに裏表が無い人には、始めて会いました。…………………もっと早くに、会っておきたかった。」
気のせいか?
楽しかった、とか、会っておきたかった、とか。
さっきから語尾が過去形になっている。
「…………頴娃君?」
「自業自得とはいえ、あんな事をしてしまった以上、もはや【此処】にも僕の居場所はありません。」
悲しそうな顔で、少年は続けた。
「………僕は、【此処】から脱出します。」