6話 茉莉と栞ー01
「次は…………………」
「いやちょっと待ってくれ」
思わず僕は止めた。栞―――たぶん、しおりと読むんだろう―――の話は、直ぐわき道に逸れるし、反応も面白いので、そこまで退屈ではないのだが、いかんせん長すぎる。きっと放っておいたらこのままずっと喋っているだろう。
「むぅ。何だい?せっかくノって来た所だったのにさ。」
むぅ、とか素で言うところが面白い。今まで周りにはいなかったタイプの人間だ。
「君の話は面白いんだけどね、ちょっと休憩しようよ。」
「ふん、軟弱だな。まぁいい。ココの説明もしないといけないしな。続きは歩きながら話そうか。」
どちらにしろ話すのか。本当に話すのが好きなんだな。
「分かった、じゃあ行こうか、栞」
すると彼女は一瞬ムッとした顔をしたが、直ぐに気を取り直して歩き出した。
「あのねぇ、茉莉君、ナチュラルに呼びつけにしないで欲しいなぁ。
その前に、名前で呼ぶ事を許可した覚えも無いよ。」
ううん。そうか。そういうの意外と気にするタイプなんだな。覚えておこう。
「あぁ、ごめんごめん、じゃあなんて呼べばいいかな。」
「栞様と呼びたまえ。」
「え、いや、それは」
「ふふふ、冗談だよ。栞でいいよ。」
あ、そう。栞でいいんだ。なかなかユニークな子だな。
「じゃあ、行きましょうか、栞様」
「君ねえ、しまいには怒るよ。」
彼女はちょっと本気で怒ったように見える。うーん
、加減がまだよく分からないな。
「ごめんごめん。じゃあ、そろそろ本当に行こう。案内してくれるんでしょ?」