7話 収縮、そして崩壊
え?栞?今まで何処に?というか、え?
栞は、頴娃君の手から魔道書を払い退けようとした。
が、どれほど強い力で握っているのか、まったく取り落とす様子が無い。
まるで、魔道書の方が、頴娃君の手にへばりついているかのように見えた。
「………やはり、駄目か。亜空君!!!」
大声で亜空を呼ぶ。
「あぁ!?その声は栞か!?いったいぜんたい、どうなってやがる!?」
「詳しい説明は後だ!!取りあえず、【縮めて】くれ!!今なら大丈夫な筈だ!!」
「…………あとから絶対説明してもらうからなっ!!」
亜空が空間を【縮める】。
広大な空間が、収縮する。
あの無数にある本と本棚はどうなるんだろうと思ったが、空間が縮む時に、近づき、ぶれて、重なった。
あの二つってでも、別々の本だよな。
と思って見ていると、その本に、次々と本が重なって行く。
タイトルまでは読み取れなかったが、表紙を見た限り、全て違う本のようだった。
………どういう理屈なんだろう。
一つの本から、さまざまな本が生まれる?枝分かれでもするというのか?
でもその場合作者はどうなる?
誰が書いたどういう本が、どういう理由で存在する事になるんだ?
考えれば考える程、意味が分からなくなる。
それとも、【能力】について考えるときに、理屈なんか考える方が野暮なんだろうか。
自分の体も、ぶれているみたいで気持ち悪かった。
実際、軽いめまいと、吐き気を覚えた。
みるみる部屋は【縮んで】行く。
…………おいおい、どこまで小さくなるんだ?
いい加減に止まらないと……骨が……天井に………
何事もなかったように、骨は、天井まで達し、そして亀裂が入るのが見えた。
…………………マジで?
ばりばりと嫌な音を立てて、天井が崩れる。
降って来る瓦礫から、必死に身を隠しながら、
―――この部屋って、元はこんなに小さかったのか。
と、取りようによっては、現実逃避とも取れるような事を考えていた。