3話 命懸けの特殊撮影ー 03
……また、栞か。
………………栞は、敵、じゃ、ないと、思うんだけどな。
「おーい?せっかく思い出してやったってのに、何でそんな反応なんだ?ぼーっとして。」
「………いや、うん。それで、どういう風に言われたの?撮影の事は全然言ってなかった?」
「あぁ、撮影のさの字も出なかったぞ。」
「おかしいな……。」
首を横に捻り、悩むようなジェスチャーをしながら、僕は別の事を考える。
栞が仕組んだという事は………………どちらとも取れる、な。
さっきまで疑っていたように、僕らを陥れる為の罠である可能性と、
僕たちを助ける為に、適切と思われる人物を、さりげなく送り込んできた可能性と。
………あと、全く偶然に、栞と亜空がそういう話をした、という可能性も一応ある。
ただ、最後の場合以外は、栞が【図書館】の内部がどうなっているか、という事を、ある程度正確に把握している必要がある。
そして、最後の可能性はこの場合考える必要はないだろう。
偶然を疑って、亜空がここへ来た理由に至ったのに、その理由の方を今度は偶然にしてしまったら、堂々巡りになってしまう。
という事は、やっぱり、栞は知っていたのか。
どこからどこまで?
魔道書の事は?鞘香さんの事は?骨の事は?
………………疑問は尽きないが、考え始めたらキリがなさそうだ。
あんまり考えている時間も、余裕もないし。
僕が顔を上げると同時に、亜空が聞いてきた。
「何をそんなに考え込んでたんだよ?今俺そんなに複雑怪奇な言葉を言った覚えはねぇんだけど。」
「僕にとっては複雑怪奇だったんだよ。」
「はぁ?」
「それより、そろそろ5分になるんじゃないかな?」
「いや、あと1分ほどある。そして茉莉―――」
あんまり大した事でもなさそうに、とんでもない事を、亜空は言った。
「さっき言おうと思ったんだけど―――最後に一気に【縮める】分も考えると―――そろそろ【広げる】のも限界だ。」
「…………………」
―――今までずっと余裕そうだったのに、急にそんな事を言わないで欲しい。