2話 命懸けの特殊撮影ー 02
亜空がこの場所に来たのが、どういう理由かによって、この、僕達にとって都合の良すぎる登場が、罠か否かが分かる。
……という考えのもとにした質問だったが、亜空の答えは、しごく当然の物だった。
「………え?そんなの聞いてないぞ?」
キョトン、とした顔でそういう亜空からは、芝居をしているような様子は受けなかった。
どういう事だ?あの都合のいい登場は、本当にただの偶然だったのか?
僕が疑り深くなりすぎてるだけなのか?
「……本当に?誰かに呼ばれてここに来たんじゃないのか?」
「ああ、別に。自分の意思で来たけど。」
「何で?」
「そりゃ、借りてた本を返しに………って、何でそんなに俺がここに来た理由なんて気にするんだよ!!」
「………」
「沈黙!?沈黙か!?そこで取るべき選択肢は、決して沈黙ではないと俺は主張したいと思っ!!っと!!うぞ。」
途中で再度空間を【広げる】亜空。
なんだか、早くも少し慣れて来た様に見える。
亜空の【能力】は、本当にとてつもないな。
名前忘れたけど、【アル・】っていう魔道書で、強化されてる筈の骨を、普通にあしらっている。
まぁ、直接触らず、空間を【創って】いるのだから、そんなの関係ないのかもしれないけど。
どちらにしろ、敵には回したくないタイプだ。
骨の方はしばらく心配ないとして、問題は亜空がここに来た理由だな。
当人は自分の意思で来た、と言ってるけど、それはやはり都合が良すぎる気がする。
疑り深過ぎるのも確かに問題だけど、今日のこの場に限っては、そうも言っていられない。
変に気を抜いたら死んじゃいそうだからな。マジで。
だから僕はさらに質問を重ねる。
「………何で、今日借りてた本を返そうと思ったの?」
「そんなのどうでもいいだろ?それよりぼちぼち…………」
「大事な事だから!!ちゃんと考えて答えてくれ!!」
亜空は、そんなのの何が大事なんだよ、と、口ではぶつぶつ言っていたが、真面目に考えてくれているようだった。
考えながらも、骨は裁き続けている。
いや、普通に凄いな。失敗しても死なないと思っているとはいえ、正確な角度で【広げ】続けている。
そして、
「あぁもう、邪魔だな!!!」
と、骨を今までの倍以上の距離まで【広げた】と同時に、あ、思い出した。とつぶやき、続けた。
「栞に言われたんだよ、図書館の本をそろそろ返した方がいいんじゃないか、ってな。」