7章 一人目、二人目 1話 命懸けの特殊撮影ー 01
「………………少し腑に落ちない部分もあるが、こうなったら乗らない手はない、亜空!!」
「何だ?俺も特撮に混ぜてくれるのか?」
「……。……。…………………ああそうだ。」
「え、ちょ、英知?」
焦る僕を視線で制してくる。
いや、でも、コレを特撮で通すのはさすがにキツくないか?
いろいろと。そう、いろいろと。
「それでな、今からきっかり五分後、この部屋を元の大きさに戻してくれ。出来るだろ?」
「ああ、もちろん出来るぜ!!………でもそんな事したらせっかくの骨が壊れちまわないか?」
「そのくらいでは壊れないから大丈夫だ。頼んだぞ!!」
そう言って、英知は出口の方へ走って行った。
最後の頼んだぞ、は、僕に対して言ったように見えた。
というか多分そうなんだろう。
…………………いくらなんでも無茶振りすぎるよ、英知。
「いや、それはいいけど、っておい!!…………行っちまった。何だよ。もうちょっと説明してくれないとよく分かんないだろうが。なぁ茉莉、つい興奮しちまって考えてなかったけど、コレってどういう撮影なんだ?ビデオカメラも近くに見えないし。」
それは僕が聞きたいよ。
「ん!?ん、と、アレ、だよ、ほら、千鶴子さんに頼まれたんだ。特撮を撮ってみたいんだって。ビデオは遠隔操作らしいよ。それも実験したいらしい。」
「ふーん、【映写室】から?フォリスのヤツ、随分上達したんだな。という事はこれ今写ってるのか?」
フォリスの何がどういう風に上達したというんだろうか。
適当に口から出任せを言っただけだから、苦しい、苦しい。
「えー、どうだろうね、今はほら、休憩中だから。」
「ふーん………とうぉ!!危ねぇ!!」
いつの間にか骨が接近し、僕らに向かって足を振り下ろしていた。
亜空が咄嗟に【広げた】からよかったものの、
あんなのに潰されたら死ニマスヨ?本当に。
頴娃君の本心を確認したい。切実に。
「おい茉莉!!休憩中じゃなかったのかよ!!」
「えーどうだろう、ごめん僕の思い違いだったかもしれない。それよりも、あの骨の動きを警戒してて欲しいんだけど。」
「警戒っておまえ、まるで当たったら怪我するみたいな言い方だな。撮影だったら安全な素材使ってるもんなんじゃねぇの?知らんけど。」
「念の為だよ。予行演習も兼ねてるんだ。………一応安全な素材だけど、まともに当たったら怪我くらいはすると思うから。」
当たったらきっと死んじゃうから。もっと真面目に警戒して下さい、お願いします。
「………今お前、予行演習って言わなかった?」
しまったな。失言だ。
本当に、この亜空という人間は、鋭いのか、鈍いのか、よく分からない。
「………言ったよ。」
「それってさ、まるで俺が来るの分かってたみたいな言い方じゃねぇ?」
どうする?
ここは相当大事な所だぞ。
言い間違える事は許されない。
…………………いや、まてよ。
コレは、逆に、チャンスかもしれない。
でも、賭けである事には違いないな。
それも相当危険な。
まぁ、最初から選択肢なんて無いけどね。
やるしかないよな。
「あれ?伝えてくれなかったのかな?………てっきり亜空は、この撮影のために【図書館】まで来たんだと思ってた。」