表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/200

17話 駆け引きー05



英知の能力を考えるに当たって、まず先程のドアの開閉は外せないだろう。頴娃君の反応からして、あの事象に英知が関係している可能性はかなり高い。そしてもう一つ忘れてはならないのは体に開いた穴。英知の【代償】。そんなに詳しく見ていないので、確実な事は言えないが、何かの模様のように見える黒色の穴。あとは―――それだけか。やれやれ、前途多難だな。


【代償】。【代償】は、【能力】と少なからず関係がある。という事を栞から聞いた。自分で文献を調べたわけではないが、この発言を疑う必要は無いだろう。


亜空の【能力】は、【空間を創る】事で、そして【代償】が【把握できない空間がある】事。


鞘香さんは、【能力】は……【何かを作る】事かな?正確にはちょっと分からないけど。そして【代償】が【存在感が薄くなる】事。これは多分、自分の存在を使って何かを作っているんだろう。


後の人は、どちらか片方しか分かってない人―――千鶴子さんの【人に少しの間乗りうつる能力】?、千寿さんの【雨を降らせる能力】?、木霊さんの【言葉が伝えられなくなる代償】、そして頴娃君の【人の心を見る能力】―――と、両方とも分からない人―――栞、フォリス、それから僕―――に分かれるが、この法則には従っている筈だ。



そして英知の腹に開いた【穴という代償】。これらの事から考えると、英知の【能力】も【代償】と関係している筈だ。筈なんだけど。

…………………穴?体に?どういう事だろう。それとドアが勝手に開いた事の間にある関係?


…さっきは、【見えない手を動かす能力】とか考えたりもしたが、それは頴娃君の【能力】の、視線の秘密に気付いてなかったからだ。今となっては、それは考え難いかもしれない。穴と、見えない手では、関係が無さ過ぎる。


そもそも、ドアを開けたのは本当に英知か?他の誰かが開けたんじゃないのか?

例えば、外でドアを押して直ぐに隠れ、見えないくらい細い紐で、思い切り引けば、あの状況は再現できる。


いや、それはないだろう。再現できたとしても、理由が希薄すぎるな。あまりにも。


とすればやはり英知が?

いや、でも………分からない。


逆に。そう、逆に頴娃君の【代償】を考えてみようか。分からない事をいつまでも考えていても仕方ない。


思考を止めてはいけない。考え続ける事が大事なのだから、今は―――


―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――


「違います。」

否定した。あっさりと。これ以上ないくらいに。


あれだけ自信満々に言っておいて、これは相当恥ずかしいのではないかと、そぉっと英知の顔を伺い見る。

が、まったく何ともないようだ。少なくとも外見上は。顔も赤くなってないし。

それどころか、その顔には、薄く笑みを浮かべてさえいる。

「そうか。違うのか。安心したよ。」


「負け惜しみにしか聞こえませんね。もっとも、本の題名が分かった所で、何も変わらないと思いますが。」


「何かは変わると思うぜ?」


「そうですね。何かは変わるのかもしれません。くだらない何かが。」


「【アル・アジフ】。」

ぽつり、と英知はつぶやく様に言った。

悠然としていた頴娃君が、少し驚いたような表情をしていた。

英知はそんな頴娃君には構わず、よく分からない言葉を繰り返す。


「【アル・アジフ】だろ、それ。【ネクロノミコン】じゃ無いのなら。」


「………違います。」

紡ぐ言葉は先程と変わらないが、

僕が見て明らかな程に、頴娃君は動揺していた。


アル……なんだ?


英知は今なんて言った?

それに、頴娃君は、何であんなに動揺しているんだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ