表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/200

16話 駆け引きー04


それで、だ。

水を千寿さんから得られるとしても、まだ問題がいくつもあるな。


1、千寿さんが水を用意したとして、それをどう掛けるか。

雨を降らせる事が出来るなら、これはさほど問題ではないように思える。その雨が掛かる位置に骨を誘導してやればいいんだから。


2、骨をどうその場所まで誘導するか。

1にも関係してくるけど、これは千寿さんの【能力】によるな。室内でも降らせる事が出来るのなら、この問題は有って無いようなものだけど…………いや、あまり楽観視はしない方がいいだろう。かといって、室外にあの骨を連れ出すとなると、これはかなりやっかいな話になってくるな。あのサイズのドアを、骨が通れる筈もないし。それに動きもめちゃくちゃ俊敏だから、誘導なんてものが成立するものなのか?第一、【此処】で屋外なんていったら、屋上しかないんだぞ?僕が知る限りでは。もしかしたら、英知の【能力】で何とか出来るのかもしれないし。…………………いったん、保留にしておこう。


3、英知の【能力】が何なのか?

今更言ってもしょうがないが、さっきこれだけでも聞いておくべきだった。作戦を考えるに当たって、この情報はかなり欲しい所だ。それによって、出来ることと出来ないことにかなりの差が出てくる。………どうする?英知の【能力】も勝手に想像して作戦を立てるか?………いや、それは違った時のリスクがあまりに大きい。が、英知は【代償】を持っているんだから、何らかの【能力】は持っている筈だ。それを生かさない手はない。生かさない手はないんだけど…………………くそっ!!コレも保留だ。


4、そもそも千寿さんとどうやって連絡を取るか

コレはなにげに一番難しい問題じゃないのか?この問題がクリアできないと、そもそも作戦も何もない。にも関わらず、外に出る方法が思いつかない。僕か英知が一度部屋を出るのが一番現実的なのだが、2でも少し触れた通り、あの骨の素早さは異常だ。あの大きさであの速さ、っておかしいだろ明らかに。まぁぼやいてても仕方ないんだけど。あの骨がある限りそれはほぼ不可能と言えるだろう。かといって他に方法があるかと言われると………ないんだよなぁ、残念ながら。


5、ドアの開閉の謎。

アレにどんな意味があるのか、結局やったのは英知なのか。その辺を考える必要があるな。



………英知の【能力】を予測する所から始めた方がよさそうだ。直接聞けたら一番楽なんだけど、今この状況で、それは出来ない相談だろう。


――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――


「質問は以上ですか?では、調べて分かった事を伺いましょう。」

少年は緩やかに切り出した。

先程までの沈黙など、まるでなかったかのように平素な声で。


「おいおい、自分で話を切っておいてよく言うぜ。」


「答える必要がないからです。」


「それはお前が決める事じゃないな。」


「いいえ。僕が決める事です。繰り返す事になりますが、貴方は自分の立場というものをもっと理解するべきです。」

頴娃君の背後に佇む骨が、存在を誇示するかのように大きく震える。


それを見ても英知は動じず―――内心どうかは知らないが、僕からはそう見える―――あくまで純粋な話し合いに持ち込もうとする。

「なら俺も話さないまでだな。」


「っ!!ですから!!ああ!!何故貴方はそんなに!!」

英知を睨み付けるその目には、明らかな苛立ちが見える。


…………というか、本当に、英知は骨が怖くないのか?いくらなんでも挑発し過ぎだと思うんだけど。


「………………」

「………………」


またも暫しの沈黙が流れた後、結局折れたのは頴娃君の方だった。

「…………………仕方ありませんね。答えましょう。」


話すことに問題が無いと考えたのか。英知の頑固さに辟易したのか。それとも―――。

何にしろ一安心だ。頴娃君が力に頼る事を危惧していたが。

少々痛め付けた所で、口を割らないと判断してくれたのかもしれない。


「確かにこの本は、昨日千鶴子さんが見つけてくれた物です。」


「本当か?」


「嘘をつく事にどれだけの意味が?」


「ありすぎて困るくらいさ。」


「そこは信用して頂くしかありませんね。」

少し笑いを含んだ声。


「始めから信用してるとも。一応聞き返しただけだ。」


「そうですか、それは光栄です。―――それで、何か分かりましたか?」


英知は、ああ、と小さく頷いて、言う。

「その本の題名は―――」


またも、間。


「―――【ネクロノミコン】じゃないか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ