12話 頴娃の能力(改々)
「ま、要約してしまえば、頴娃とは視線を合わせるな、って事だな。」
英知は、さっきは2分くらいかけた話を、ものの5秒で終わらせた。
……………。
【話が長くなる原因の半分以上は僕にある】、という今さっきの認識を、【少なくとも半分は英知のせい】に、心の中でそっと訂正した。
英知はこういう時、話が相当回りくどくなる。推理小説の読み過ぎで、どこぞの探偵みたいな話し方をするからだ。
答えに至るまでに、余計な道を回って回って、結論には最後の最後に辿り着く。
…………………さっきだって、始めからそう言ってくれれば良かったのに。
「…つまり、視線が合った時だけ、心を【見】られるって事だね。」
「そういう事だな。さらに付け加えるなら、【その時に考えている事ほど読まれ易い】んだろう。さっき俺に「そういう訓練でもしたのか?」とか言ってたのは、おそらくカモフラージュだ。」
「………でも、僕が頴娃君の後ろに回りこんでる時にも気付いたよね。アレは?」
「あーあれか。アレは………」
少し言いよどむ英知。
「俺のミスだ。あの時は鞘香の事でカッとなってたからな。ついイライラして目を合わせちまった。まぁ、そのお蔭でヤツの【能力】についてある程度の確信を得られたんだが。」
それはつまり、先程の作戦が失敗したのは、半分は英知のせいで、だから先程も別に怒った風もなくという……………いや、考えないでおこう。英知はそんな奴じゃない。
「で、あの骨に雨を当てる方法だけど―――」
うん、一番大事な所だ。それによって今後の行動が決まる。僕は思わず前のめりになり、
「―――すまん、思いついてない。」
そのまま前に倒れそうになった。
「いやさ、それを二人で相談しようと思ってたんだが、どうやら時間が足りなかったみたいだ。…………あと一分ぐらいか。」
「………ほとんど何も決まってない気がするのは気のせいかな?」
「気のせいだ、多分。………そうだな。どうにかしてもう少し時間を稼いでみるから、何か作戦を考えてくれよ、茉莉。」
え、僕が!?
いやそりゃ頼りっぱなしにするつもりは無かったけど、それにしてももう少し情報が欲しい所だ。
「とりあえず千寿さんの【能力】だけでも―――」
「時間です。」
聞こうと思ったら、頴娃君の静かな声に遮られた。
えー?どうすんの。
目で英知に問いかけるが、英知は
「期待してるぜ、相棒。」
と言って、先に頴娃君の方へ戻って行ってしまった。
…………………いや、期待されてもさぁ。