9話 英知の考察ー04
「よし、ここまでくればいいか。」
頴娃君から10メートル程離れた位置で足を止める英知。
「あまり時間がある訳でもないから、手短に話すぞ。」
「うん。それはいいんだけどさ、さっきから英知ちょっとおかしくない?頑なというか、何というか。」
「ん?そうか?別にそんなに普段と変わらないつもりなんだけどな。俺としては。……………まぁ、お前がそう見えるのならそうなんだろう。鞘香のことが気になって、どうしても、な。」
「ふぅん―――」
それだけだろうか。もっと何かあるように感じたんだけど。
「――それでさ、確かに鞘香さんの事は心配だけど、それなら尚更話しちゃった方がいいんじゃない?その、調べて分かった事を。それで部屋から出た後、手分けして鞘香さんを探せばいいんじゃない?」
「いや―――」
そこで言葉を切り、頴娃君の方を伺いながら続ける。
「―――それはいろいろと不味いな。」
「いろいろと?なんでさ?」
食堂でやったように、人差し指を立てつつ言う英知。
「まず、話したからと言って、頴娃が俺たちをこのまま解放してくれるとは思えない。」
「そんな、でも約束したじゃないか。」
「約束はしてないさ。向こうがそう言ってるだけで。」
「………確かに、そうだけど。……そうだけど!!頴娃君は約束は守るよ!!」
「………本当にそう思うのか?」
どこか冷めた目で覗き込んでくる英知。
やめてくれよ!!何で英知までそんな顔をするんだよ!!
確かに、今の頴娃君はおかしいけど…………いや、本当におかしいのか?自分で言うようにアレが素の………違う!!頴娃君は。頴娃君は!!
英知の目を見て答える。
「…………………そう思う。」
英知は何か言いたげに僕を見ていたが、無言のまま視線を逸らし、
「まぁ、それもいいんじゃないか。」
とつぶやくと、中指を立てて続けた。
「次に、あの骨なんだが―――」
頴娃君の後ろで強い存在感を示す骨を指差して、英知は言った。
「―――あれはおそらく、鞘香の作品だ。」